困惑 0




子供の頃は、一つずつ世界が理解できていくことが、とても楽しくて刺激的だった。
そしそれらの多くは、少しずつ同心円が広がるような段階的理解だったから、そのたびに私を驚かせ、ちょっと立ち止まらせはしたが、乗り越えられないものではなく、楽しいという表現は決して嘘ではない。

しかし、成長するにつれ、それまでの価値観を思いっきり揺さぶられるような滅茶苦茶なものにも遭遇し、時として私は長い時間もがき続けることもあった。
それでも私の、前に進みたい意志はそがれることはなく、結局、私は問題解決を血肉として成長することができたと、それはある程度の自信を持って言える。
ただ、一つの困惑を除いては。

カカシ先生ーーー

先生の存在だけはいつも私を困惑させる。
そしてなぜか、その、簡単には乗り越えられない関係が、
不快ではない・・・・・





太陽が高い位置で輝き、その直射日光の下、
私の知らない人に、先生が何かを放って渡していた。
子供の私たちにするのとは全く違う態度と勢いで。
そのとき感じた何かは、あとから記憶をたどれる程度には、私の心に刻まれた。

また別な時は、
他の上忍にからかわれて、そのことに言い返している先生を見た。
部下の私たちにするのとは全く違う態度と砕けた口調で。

あ、この感じ・・・・

確かに前にもあった。
今度は何となくわかる。
これは先生という人の別な一面なんだ、と。
先生が私たちに見せているのは”カカシ先生”という彼自身の中の一部でしかない、ということに、私はやっと気づいたのだ。

凄く不思議な感覚だった。

理屈ではもちろんわかっているし、例えばそれは、
お母さんは、私のお母さんだけど同時にお父さんの奥さんでもある、ってことと同じ。
でも、それが先生にもあてはまっているってこと、全然意識していなかった。
  「先生は・・・」
29歳。
そう、29歳の男なんだ。
・・・男。
先生のこと、男の人だなんて意識したことはない、”おっさん”だとは思っていたけど。
でも、他の先生と同年代の人たちに見せたカカシ先生の空気は、”おっさん”なんかじゃなくて・・・・
多分、”29歳のはたけカカシ”そのものだった。

そう理解してしまえば・・・・
いや、そう自分がとっくに理解していることを認識してからは、
先生のことが気になってしかたない。
ハンサムなのは間違いないし、スタイルもいい。
こうなってしまえば、気にならなかった今までが、

不思議。




2011.02.11