隣にはいつも




明るい日差しにあふれた坂道を駆け上げる。
身体が軽い。
サクラは高みに立つと、里の方を振り返る。
風が里の空を吹き抜けて、サクラの髪をなびかせた。



サスケがいなくなって、今はナルトも旅に出ている。
7班はバラバラ。
サクラはその場に座る。
下生えは柔らかく成長していて、座ったことで、草の匂いが微かにした。


みんながいなくなって、空疎な感じがするだろうと思っていた。
確かに、サスケの不在は、もの凄くこたえたが、でも、出て行ったのだと、変えがたい事実をはっきり事実と認識してから、意識は、「その後」に向かった。
その点については、ナルトより早く意識を変えられたと思う。
すぐさま、綱手に弟子入りして、体制は整えた。
あとは突き進むだけ。


  「ここにいたの?」
背後からカカシの声がした。
柔らかい草を踏んでサクラに並ぶ。
  「あ、里が見渡せる」
カカシがのんびりとした声を出した。
サクラはカカシを見上げる。
空の青さにまぎれて、カカシの銀髪が輝いていた。


寂しくない

そのことに気づいたのはいつだったろう。
サスケの事ばかりで頭が沸騰していたときも、冷めて修行をはじめた時も、時折、息をついてここにたたずむようになってからも。

気づけば、いつもカカシが側にいた。

  「先生」
声が、風に乗って柔らかく響く。
  「ん?」
カカシは里を見たまま、返事をする。
  「先生はいなくならないですよね」

私の前から

  「俺、まだ里に必要とされてるって自惚れてるから、大丈夫よ」

里じゃなくて

風が里の方から吹き上がり、カカシの次の声がそれにのまれる。
  「サクラこそ」
たぶんそう言った。
サクラが立ち上がる。
カカシがこちらを見て、左手を差し出した。
  「俺より強くなったサクラを見たいな」
サクラがその手を握り、思いっきり微笑んだ。
  「もう強いかも、ね」

先生

サクラは離しがたいその手を離し、里を見下ろす。

先生

ありがとう

大好きよ







2008.04.26./04.29.

拍手お礼小説。お題作品。
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続けるつもりでしたが、頓挫しました・・・