そんなに、緊張してんの?
そんなに、恥ずかしいんだ、俺との・・・セックス・・
「先生・・」
「うるさい」
交差させた両腕の奥から、小さい声。
先生の足から着衣を全部取り去る。
時間が、愛しい。
今のこの時間が。
土砂降りの記憶と、先生の肌。
「顔・・・隠さないで・・」
もちろん、それで先生が俺を見てくれるなんて思ってない。
俺は、先生の上に身体を倒して、その両腕をつかんだ。
力は入ってなかった。
俺はそれを解く。
先生は横顔を見せていて、俺の呼びかけに瞳だけを動かした。
「酷いこと、しねぇから」
「わかってるよ、そんなこと」
そう言って、弱弱しく微笑む。その顔色が、あんまり元気がなさそうで、俺はちょっと心配になる。
「すんげ~、ビビッてない?先生」
声を出したくなかったのか、でも、先生は素直にコクッと肯いた。その様に心臓が勝手に拍動して、その勢いは俺の顔をしかめさせるほどだった。
「手配書に載る忍者が、情けねぇってば」
笑って言おうとしたけど、俺の声は硬かった。
「・・そうだな」
先生がそう言って、縁側を見る。
それは、多分緊張を解く、ただの小休止の所作だったと思う。でも、雨で暗い昼間の光が、その表情を俺の目に縫い付けるほどに印象的にトレースした。
唇の血が、俺の呼吸を狂わせる。
ああ・・・せんせい・・・
俺は、もう死んでしまいそうに心で叫ぶ。
愛しい。
愛しすぎて、何もできない。
心が痛いほど大事だ。
他の誰かに殺される前に、俺がこの手で壊してやる。
「ナルト」
呼ばれて、俺は先生を見ていながら、見ていないことに気づいた。
焦点を先生に合わせる。
「なに?」
「すごい怖い顔してるよ」
「あ・・・ごめ・・」
「殺されそうだ(笑)」
また、ズキンと心臓が痛んだ。
この心の痛みは、俺のものなの?
「こんなに大事なのに・・」
先生を壊したい、この凶暴な愛は、俺のものなの?
「殺すわけ無い」
嘘。
俺はいつも自信がない。
四代目が死んだときから、そう、俺の中のもう一つの命のせいで、俺が俺であるという保障は、どこにもないんだ。
でも、先生は、俺の迷いを見透かしたように微笑む。
「いいんだよ、ナルト」
先生が、俺の髪に指を差し込んで、俺の顔を自分の前に固定した。
「言ったろ?」
「先生・・・?」
「サポートするって」
雨。
雨。
「先生・・」
「サポートの意味わかるか?」
俺の喉は渇いて、先生の声が遠くに聞こえるほど、多分動揺していた。
先生は、そのまま俺の頭を、彼自身の胸に引き寄せた。
俺はされるまま、先生の胸に耳をつけた。
先生の、鼓動が、聞こえる。
先生の、鼓動が、俺を、揺さぶる。
「聞こえるか?」
俺は黙って肯く。
そして、先生は穏やかな声でこう言った。
「これ、お前にやるよ」
確かに、そう言った・・・・・・・・
◇
そのあと、俺は自分の行動を、所々失念している。
先生は、もう、上半身も、脱いで横たわっていた。
俺が、乱暴に脱がしたらしく、白い肌に、着衣で引き絞ったような紅い痕がついていた。
左の腕を、自分で噛んでいる。
俺は、そんな先生を上目遣いで見ながら、先生の足の間に身を置いて、そのペニスを口で愛撫していた。
うるさい雨の音に混じって、俺のピチャピチャ舐める音が、聞こえる。
さっきまで柔らかかったそれは、今は硬く立ち上がっている。
「んっ・・・く・・」
先生の声は、腕と共にかみ殺されて、雨にかき消される。
俺は、両手で、先生のモノをつかむと、上体を起こした。
「先生・・・声聞かせて」
先生が俺を見る。
目の縁を紅く染めて、俺を見る。
俺を煽る。
「聞きたい」
俺の唾液で濡れた先生のペニスを、音をさせてこすりあげる。クチュという音がして、先生の身体が震える。
「はっ!!ナルっ・・」
「聞きたい!!」
「あ!・・や・・」
俺は、手をそのままにして、身体を先生の上に移動させた。
「俺の頭・・つかんで」
先生の両手を、その口から離したかった。
先生は、言われるままに、俺の髪をつかんだ。
手を動かす。
「はっ・・・あ・・」
目の前で、先生がその表情を切なげに変える。
見ているだけで、俺の息も上がる。
「はっ、はっ・・先生っ・・」
「あ・・ああ・・」
何度も、その足を持ち上げて、約束を反故にして、先生の身体に押し込みたくなる衝動に駆られた。
俺は、息を深く吸って、我慢する。
「あ・・い・・」
「いきそ?」
「あ・・イク・・」
女の子でもそんな控えめじゃないってくらい小さな声で先生が言った。
俺が先生の腰の動きに合わせて、しごいてやる。先生の身体が硬くなって、ついで、俺の手に吐精した。
俺は、身体を起こすと、先生の足を抱えた。
「ナルトっ!!」
先生が慌てて、俺を制止しようとする。
やらないよ、と俺は目で言って、
「腹、貸して」
と言った。
俺は自分のをしごくと、最後は、先生のペニスの上の陰毛に、自分のペニスを押し付けてこすった。
やがて、先生の腹の上に射精して、俺が果てると先生も上体を起こした。
「どうして、俺にやらせてくれなかった?」
俺は肩で息をして、先生に口づけた。
「違うよ、カカシ先生」
「なに」
「先生の顔だけで、俺もイキそうだったから」
「・・・」
「先生にやってもらう余裕なかったってば」
それだけ言って、俺はまた先生に口づけた。
今度はしっかり抱きしめて。
体液だらけで、でも、先生も、俺を抱きしめてきた。
先生がくれるといった心音が聞こえて、俺は、切なくなる。
◇
気づくと、雨はいつの間にか小降りになっていて、雲間から光が射していた。
「雨・・止んだよ」
俺がその耳にささやくと、先生もうなづく。
俺が噛んだ唇の傷、そのままに、
「晴れたね」
などと言う。
その愛しい表情は、今はもう俺のもので、
でも、幸せというには、やっぱり痛い心を、俺はどうしていいかわからなかった。
2008.02.11.