美食家 1


いろんなモノを食べてきたけど、ソレは初めてだった。
だって、たいていは、それらしい形をしたものだったから、温度と質感を除けば充分、代りにはなったから。
でも、その日、俺が食べさせられたのは・・・・
ピンクの甘い・・・・





  「アナタがMだなんて思ってませんよ」

言いながら、テンゾウは柔らかくなったペニスを俺から抜く。
残念なことに、その陰性な刺激にすら、身体が反応する。
  「んっ・・・・く・・」
  「まだ、続いてます?」
クソ。
でも、ああ、認めるよ、身体と心が密接に繋がっていることをね。
俺だって、自分で言うのもなんだけど、結構逞しい身体してるのに、こいつの力でグッと抱きしめられると、倒錯しそうになる。
つまり、とっくに射精しちまっていたのに、テンゾウの力をダイレクトに感じて気持ちいい、という精神的快感は、まだ続いていた。
俺が何か言おうとして、でも、呼吸を整えようと言葉を飲み込む。
それはごくありふれた生理的な動きだったのに、テンゾウは、刺激された顔をした。
  「かわいい・・・・」
フン。
もう、何とでも言って。
テンゾウが、俺の首筋を吸って、さらに下の方にも指を這わせてきた。
たった今、抜いた所に。
隠微な感触が、シーツの下で聞こえない音まで再現しそうだった。
  「あ、や、お前・・・・」
  「いいでしょう?」
もちろん、いいに決まっていたが、ジンジンする全身は、これ以上の刺激を持てあましそうだった。
  『やばい・・・・乱れそう・・・』
もう、いい加減、散々色々晒してるんだが、やはり、この予感は怖い。
  「いや・・・もう・・・」
  「疲れました?」
  「いや、べつに疲れては・・・いないけど」
  「ココ、痛いです?」
指にちょっとだけ力を入れてクッと動かす。
ザワと背筋を、何かの波が駆け上がる。
  「!んっ、ふっ・・・やめろよ」
  「痛い?」
ああ、真面目な奴だ。
欲しい答えを聞くまでは問われ続ける・・・
  「い、痛くはない・・・よ」
  「じゃあ、いいでしょう?」
俺は反論できなくて、テンゾウから目を背ける。
は・・・恥ずかしい・・・・
さっきまでだって、客観的に聞いたら発狂しそうな声、出してたのに。
これ以上、「ああ・・・ん」とか「いや」とか、「もっと」とか・・・・言えない、ってか言いたくない。
あああああああ・・・・・
と、テンゾウが俺から身体を離した。
俺の手が磁石みたいに、離れるテンゾウの腕に縋った。
  「ゴム、あっちにあるんで、ちょっと待っててください」
げえええ・・・・
すっげー恥ずかしい・・・・
二回戦黙認の俺と・・・・
この「間」。
ギシッと音をさせてテンゾウがベッドから降りる。
うわ。
素の空気が入り交じる地獄タイム・・・・
が、本当に地獄だったのは、それからだった。





 

続きます[2011/02/27]