鄙の一日 1




[ 注意 ] カカシが別キャラで出ています




任務を終えて、テンゾウは、林の縁を走り抜ける。
左手に黒々とした森を見て、テンゾウが走る林は、人の手が入って、管理されているものだった。
空を見上げる。
まだ日は高い。テンゾウは、走る足を止めた。
  「もういいや。報告書は明日」
意外と、いい加減なテンゾウだ。
  「この任務はボク一人だし。ホントは明日の帰還予定だし」
計算の上、だそうです。
林の右手には、広い畑が広がっていた。
  「お腹空いたな。ちょっと寄り道していこうか」
寄り道とはいっても、もう安全圏に入っている。居心地のいいところを探して、そこで携帯食を食べるだけだ。
  「さ、よっこいしょ」
と、忍者からほど遠いかけ声とともに、畑の隅の大きな石に腰掛けたテンゾウは、近くの草むらから、
  「誰だ?」
と声をかけられてぎょっとした。
畑で働く農夫には気づいていたが、問題は・・・・
  「!!!」
テンゾウは、思わずマイ箸を取り落とす。
忍者にあってはならない失態だが、無理もない。
  『せ・・・先輩・・・』
そう、そこには、野良着を着たカカシがいたのだ・・・





  「な・・・なにしてんです?」
言いながら、ああ、任務?とも思ったが、ここはすでに火の国。
意味がわからん。でも、まあ、天才だしこの人、と、思いなおした。
全く無垢な、国の人を演じることで、なにか奥深い任務遂行を目論んでいるってとこだろう。
改めて見る。
・・・・・・・
・・・・・・・
カカシ以外の何者でもない。
綺麗な銀髪。
傷が入って閉じられた左目。
着物の合わせ目から覗く、意外に厚い胸板。
そして・・・・・汚れた野良着・・・?
なんの任務だろう・・・?
テンゾウは、自分の脳みその底をさらって見たが、過去の記録にこのような任務はなかった。
暗部ともなれば、任務のほとんどが、他里の忍者との戦闘と暗殺依頼の遂行である。変装で潜入なんて効率の悪い仕事は、カカシみたいなタイプにはまずない。
速攻でお出かけ、速攻で殺す。終わり。
そんなのだけなんだけどな~。契約先の火の国で、なんの潜入捜査だよ?
  「仕事に決まってる。あ、アンタ里の人?」
明らかにカカシだが、そんなことを言ってテンゾウを見る。
他人に対する社交辞令的な優しさは感じるが、その視線は知らない人間を見る色だ。
  「え・・ええ、里の・・・人間ですけど」
なにふざけてんだ、この人はぁ!!!と、もちろん思っているが、一応、会話は成立させる。
極秘任務という可能性は・・・捨てきれない。
  「ご苦労さん」
にっこり笑って、頭を下げた。
つられてテンゾウも頭を下げる。
そして、カカシはそのまま、小さな家とおぼしき小屋に入ろうとした。
が、テンゾウが憮然として見つめているので、その足を止める。そして、ガン見しているテンゾウを振り返って見た。
その視線が、なんとなく冷たくて。
その冷たさに、『あ、いつもの先輩(喜)』と、思ってしまう自分が悲しい。
  「お腹、空いてんのかい?」
そんな事を言う。
ボク、そんな目、してました?
それとも、先輩を見るとき、ボクはいつもそんながっついた目をしているのだろうか・・・?
  「なんもねぇけど・・・ご飯食べる?」
なに、さっきからその他人行儀な・・・・・・
やっぱり、潜入かなぁ~?
こんなとこで?
じゃあ、ボクがいたらまずいんじゃないの?
でも・・・
目の前のカカシは、本当に、ただの住人のようで、そんな裏はないような錯覚に陥る。
やっぱり天才だ・・・・
  「戴けるんですか?」
  「んだ。でも、口にあうかな?」
  「戴きます!!」
間違いのないよう、そこは、はっきり言い切った。
カカシは、そのテンゾウの元気さに微笑んで、「どんぞ」と家の入り口を開ける。
  『ああ、木遁で建て直してあげたい・・・いやいや、これは任務(多分・・)』
カカシのあまりの名演技ぶりに、思わずほだされかかるテンゾウであった。





家の中は、外観から想像したとおりの様子だった。
  「そこに腰掛けて待ってろ」
なんか・・・さっきから田舎っぽいしゃべりだな。っつーか、あきらかに田舎言葉だ。
すばらしい変装だ・・・だよな?
  「ちょっと待ってな。握り飯つくってやっから」
  「はあ・・・すみません」
  「時間はあるのかい?」
  「あ、それは大丈夫です。報告書は明日にしたし・・・」
カカシはこちらに背を向けて、湯気の立つ台所に立っている。
テンゾウは、その後ろ姿を見る。
汚れた衣服を身につけてはいるが、後ろ姿はやっぱりカカシ。
かがむたびに、白いうなじがチラチラする。
スッと伸びた脛も見えている。足には草鞋を履いていた。
そんなカカシが、素朴な田舎言葉である。テンゾウは、猛烈に萌えていた。
  『なんか・・・ガッツリかわいいんですけど・・・』
やがて、カカシが振り返り、
  「ほら。喰え」
と言って、竹の皮に乗せた握り飯を差し出した。
カカシと目が合う。自分の方をジト目でみるテンゾウに、カカシは曖昧に笑いかけた。
が、テンゾウが掴んだのは、袖から伸びたカカシの腕だった。
  「あ、なんだべ?」
うわ・・・ぜんぜんチャクラも気の張りも感じない。
カカシさんじゃないのか?
  「な・・なに?」
  「名は?」
  「・・え・・?」
  「お名前を教えてください」
  「・・ご・・・権蔵・・・」
ご・・ごんぞう???
テンゾウがついにぶち切れる。
  「もう、いいですってば、先輩!!」
自称”権蔵”は、怯えたような目でテンゾウを見る。捕まれた腕を引っ張ろうとして、果たせず、テンゾウを見るばかり。
  「カカシさんじゃないの?」
  「は?畑に立ってる案山子か?おら権蔵だもの、おめ、・・・あ!!」
テンゾウは、思わず権蔵の口を、自分の口で塞いだ。
仕方ないだろう。
あの、いつもは上から目線の先輩が。
テンゾウより早く生まれただけで、なんか偉そうな先輩が。
こんな素朴な様子で、ボクにおにぎり握ってくれるなんて・・・・・
キスするだろう!!
抱きしめちゃうだろう!!
  「あ、握り飯!!」
キスを逃れて、権蔵が叫ぶ。テンゾウは、落ちかけた握り飯を竹の皮にうまくキャッチし、台所に戻した。
  「権蔵さん」
  「アンタ、なんだよ!!俺、男だし!!」
  「いいですよ、そんなの」
  「よ・・よくねぇ!!なんだ、アンタ!!!」
権蔵は、全身でテンゾウを拒否する。
野良仕事で鍛えたらしい身体は、テンゾウでも抑えるのに苦労したが、そこは素人と忍者。
あっさりと、土間の奥の畳に組み敷いた。
  「好きなんです!!」
  「え?なんだ、それ?」
混乱に焦燥する権蔵の胸元をこじ開けた。
白い胸が現れる。
薄い色の乳首に、脳髄がしびれるのを感じた。
  「畑仕事をして、こんなに白いわけないでしょ」
  「おめー、変態か?」
うわ。なんて無垢な瞳だ!!
だめだ。
この人をいただく。
テンゾウは印を組む。
権蔵の抵抗を奪うと、その身体を抱きしめた。
  「な・・・なんだ、これっ!!」
権蔵が叫ぶ。
テンゾウはかまわず、その乳首に口付けた。



2008.05.04.

続きます