鄙の一日 1
[ 注意 ] カカシが別キャラで出ています
任務を終えて、テンゾウは、林の縁を走り抜ける。
左手に黒々とした森を見て、テンゾウが走る林は、人の手が入って、管理されているものだった。
空を見上げる。
まだ日は高い。テンゾウは、走る足を止めた。
「もういいや。報告書は明日」
意外と、いい加減なテンゾウだ。
「この任務はボク一人だし。ホントは明日の帰還予定だし」
計算の上、だそうです。
林の右手には、広い畑が広がっていた。
「お腹空いたな。ちょっと寄り道していこうか」
寄り道とはいっても、もう安全圏に入っている。居心地のいいところを探して、そこで携帯食を食べるだけだ。
「さ、よっこいしょ」
と、忍者からほど遠いかけ声とともに、畑の隅の大きな石に腰掛けたテンゾウは、近くの草むらから、
「誰だ?」
と声をかけられてぎょっとした。
畑で働く農夫には気づいていたが、問題は・・・・
「!!!」
テンゾウは、思わずマイ箸を取り落とす。
忍者にあってはならない失態だが、無理もない。
『せ・・・先輩・・・』
そう、そこには、野良着を着たカカシがいたのだ・・・
◇
「な・・・なにしてんです?」
言いながら、ああ、任務?とも思ったが、ここはすでに火の国。
意味がわからん。でも、まあ、天才だしこの人、と、思いなおした。
全く無垢な、国の人を演じることで、なにか奥深い任務遂行を目論んでいるってとこだろう。
改めて見る。
・・・・・・・
・・・・・・・
カカシ以外の何者でもない。
綺麗な銀髪。
傷が入って閉じられた左目。
着物の合わせ目から覗く、意外に厚い胸板。
そして・・・・・汚れた野良着・・・?
なんの任務だろう・・・?
テンゾウは、自分の脳みその底をさらって見たが、過去の記録にこのような任務はなかった。
暗部ともなれば、任務のほとんどが、他里の忍者との戦闘と暗殺依頼の遂行である。変装で潜入なんて効率の悪い仕事は、カカシみたいなタイプにはまずない。
速攻でお出かけ、速攻で殺す。終わり。
そんなのだけなんだけどな~。契約先の火の国で、なんの潜入捜査だよ?
「仕事に決まってる。あ、アンタ里の人?」
明らかにカカシだが、そんなことを言ってテンゾウを見る。
他人に対する社交辞令的な優しさは感じるが、その視線は知らない人間を見る色だ。
「え・・ええ、里の・・・人間ですけど」
なにふざけてんだ、この人はぁ!!!と、もちろん思っているが、一応、会話は成立させる。
極秘任務という可能性は・・・捨てきれない。
「ご苦労さん」
にっこり笑って、頭を下げた。
つられてテンゾウも頭を下げる。
そして、カカシはそのまま、小さな家とおぼしき小屋に入ろうとした。
が、テンゾウが憮然として見つめているので、その足を止める。そして、ガン見しているテンゾウを振り返って見た。
その視線が、なんとなく冷たくて。
その冷たさに、『あ、いつもの先輩(喜)』と、思ってしまう自分が悲しい。
「お腹、空いてんのかい?」
そんな事を言う。
ボク、そんな目、してました?
それとも、先輩を見るとき、ボクはいつもそんながっついた目をしているのだろうか・・・?
「なんもねぇけど・・・ご飯食べる?」
なに、さっきからその他人行儀な・・・・・・
やっぱり、潜入かなぁ~?
こんなとこで?
じゃあ、ボクがいたらまずいんじゃないの?
でも・・・
目の前のカカシは、本当に、ただの住人のようで、そんな裏はないような錯覚に陥る。
やっぱり天才だ・・・・
「戴けるんですか?」
「んだ。でも、口にあうかな?」
「戴きます!!」
間違いのないよう、そこは、はっきり言い切った。
カカシは、そのテンゾウの元気さに微笑んで、「どんぞ」と家の入り口を開ける。
『ああ、木遁で建て直してあげたい・・・いやいや、これは任務(多分・・)』
カカシのあまりの名演技ぶりに、思わずほだされかかるテンゾウであった。
◇
家の中は、外観から想像したとおりの様子だった。
「そこに腰掛けて待ってろ」
なんか・・・さっきから田舎っぽいしゃべりだな。っつーか、あきらかに田舎言葉だ。
すばらしい変装だ・・・だよな?
「ちょっと待ってな。握り飯つくってやっから」
「はあ・・・すみません」
「時間はあるのかい?」
「あ、それは大丈夫です。報告書は明日にしたし・・・」
カカシはこちらに背を向けて、湯気の立つ台所に立っている。
テンゾウは、その後ろ姿を見る。
汚れた衣服を身につけてはいるが、後ろ姿はやっぱりカカシ。
かがむたびに、白いうなじがチラチラする。
スッと伸びた脛も見えている。足には草鞋を履いていた。
そんなカカシが、素朴な田舎言葉である。テンゾウは、猛烈に萌えていた。
『なんか・・・ガッツリかわいいんですけど・・・』
やがて、カカシが振り返り、
「ほら。喰え」
と言って、竹の皮に乗せた握り飯を差し出した。
カカシと目が合う。自分の方をジト目でみるテンゾウに、カカシは曖昧に笑いかけた。
が、テンゾウが掴んだのは、袖から伸びたカカシの腕だった。
「あ、なんだべ?」
うわ・・・ぜんぜんチャクラも気の張りも感じない。
カカシさんじゃないのか?
「な・・なに?」
「名は?」
「・・え・・?」
「お名前を教えてください」
「・・ご・・・権蔵・・・」
ご・・ごんぞう???
テンゾウがついにぶち切れる。
「もう、いいですってば、先輩!!」
自称”権蔵”は、怯えたような目でテンゾウを見る。捕まれた腕を引っ張ろうとして、果たせず、テンゾウを見るばかり。
「カカシさんじゃないの?」
「は?畑に立ってる案山子か?おら権蔵だもの、おめ、・・・あ!!」
テンゾウは、思わず権蔵の口を、自分の口で塞いだ。
仕方ないだろう。
あの、いつもは上から目線の先輩が。
テンゾウより早く生まれただけで、なんか偉そうな先輩が。
こんな素朴な様子で、ボクにおにぎり握ってくれるなんて・・・・・
キスするだろう!!
抱きしめちゃうだろう!!
「あ、握り飯!!」
キスを逃れて、権蔵が叫ぶ。テンゾウは、落ちかけた握り飯を竹の皮にうまくキャッチし、台所に戻した。
「権蔵さん」
「アンタ、なんだよ!!俺、男だし!!」
「いいですよ、そんなの」
「よ・・よくねぇ!!なんだ、アンタ!!!」
権蔵は、全身でテンゾウを拒否する。
野良仕事で鍛えたらしい身体は、テンゾウでも抑えるのに苦労したが、そこは素人と忍者。
あっさりと、土間の奥の畳に組み敷いた。
「好きなんです!!」
「え?なんだ、それ?」
混乱に焦燥する権蔵の胸元をこじ開けた。
白い胸が現れる。
薄い色の乳首に、脳髄がしびれるのを感じた。
「畑仕事をして、こんなに白いわけないでしょ」
「おめー、変態か?」
うわ。なんて無垢な瞳だ!!
だめだ。
この人をいただく。
テンゾウは印を組む。
権蔵の抵抗を奪うと、その身体を抱きしめた。
「な・・・なんだ、これっ!!」
権蔵が叫ぶ。
テンゾウはかまわず、その乳首に口付けた。
◇
2008.05.04.
続きます