鄙の一日 2




胸をはだけさせ、両の乳首を舐める。
  「んっ・・・あっ・・」
権蔵は、テンゾウの舌の愛撫に、うめき声を上げた。
明かりは、壁に開いた、ガラスなんかない開きっぱなし窓から入ってくる自然光のみ。
薄暗い小屋の中で、その明かりが権・・・いや、カカシを照らしていた。
暗い中に浮き上がるカカシの身体は、暖かな質量を持って、そこに存在した。
テンゾウは目を奪われる。
自然光は、柔らかく象牙色の肌を照らし、荘厳な宗教画のようだった。
もちろんプライベートで、そんな事などしたことはない。
しかも、目の前のカカシが、リアルカカシだったら、こんなこと、できなかったろう。
権蔵だから・・・・
権蔵と言う名のカカシだから、こんな事ができている。
  『卑怯なボク・・・』
唾液に濡れたピンクの乳首は、今は吸われて赤く色づき、柔らかな陰影をまとっている。
  「気持ち・・悪い・・って・」
  「嘘だ」
指で、乳首を軽く押しつぶす。ぷっくり立ち上がっているそれは、柔らかくテンゾウの指を押し返した。
  「はっ・・・や・・ぁ・・」
  「ほら、感じてる。先輩・・かっ、かわいいっ!!」
  「は・・あ・・な、なんだべ、先輩って?!」
テンゾウは嫌がって身体をよじる権蔵を押さえつけて、上からその顔を見つめた。
  「もう、権蔵さんでいいです」
  「な~に言ってっぺ。そうだって言ってんだよ、さっきから!!」
言ってっぺ・・・・だとおおおおぉぉぉぉっ!!!
テンゾウは、頭を抱えて萌えに悶えた。
その下では、権蔵が、肌を晒したエロチックな状態のままで、怯えたようにテンゾウを見上げる。
カカシがなんで権蔵などと名乗って、まあ仮に任務だとしても、こんな風にテンゾウにされるままでいるのか、理解できない。
  『でも、状況は、とてつもなくおいしい』
常に、エロ思考優先。
  「アンタ、忍者なんだべ?木の葉だろ?」
  「は?・・・ええ」
ああ、思わず拘束系の術かけちゃったな。そう思い、その術を解いた。
  「んじゃ、おらのこと、殺さねぇべ?」
  「え?そんなこと、」
あたりまえじゃないですか、と言いかけて、権蔵の怯えに気づく。
テンゾウは手を放した。
一瞬、権蔵はテンゾウを見たが、次の瞬間、バタバタと音をさせて、テンゾウの下から逃れた。
部屋の壁にドンと背をつけて、着物の襟を掻合せると、こっちを警戒するように見る。
一般人なら当たり前の行動だ。
でも、どう見てもカカシなのだ。こんなに似ている人間なんて、まずいない。
  「もしかして影分身?」
しかし、オリジナルのソフトを一切持っていない影分身などあり得ないし。
  「帰ってくれ・・・握り飯は持って行っていい」
テンゾウは権蔵を見る。
立てた膝の奥には、フンドシとおぼしき白いモノがチラ見えしていた。
いや~~・・・どうして、こんなにボクのツボを押すかな。
テンゾウは、畳の奥に膝でにじり寄る。
  「イヤなら、抵抗してください」
カカシなら可能なはずだ。
そう自分に言い聞かせて、テンゾウは手を伸ばす。
でも、今までの様子から、そうじゃない可能性もあり得ることは、考えられた。
カカシ先輩が、ボクに乳首いじられて、反撃もしないなんて。
っていうか、触られる事じたい、あり得ないだろう。
テンゾウの手が、権蔵の手首を握る。
もう、今は、権蔵も、テンゾウの目的を察していた。
  「いやんだ」
小さく言う。
ぐっ・・・・かわいい・・・
  「イヤなら抵抗して?」
繰り返し言う。
でも、権蔵は、手首を掴まれたまま、ゆっくりと首を左右に振るばかり。
その怯えて動けない小動物のような風情に、テンゾウは、もう、視神経がショートするのを感じた。
腕を引っ張り、引き寄せて、その唇にキスをし、舌で唇をこじ開ける。
権蔵の歯列がカチカチと音を立てていた。
  『ボクを悶えさせて殺す気ですね』
怯えた権蔵・・・カカシがこんなに愛おしいなんて、テンゾウは知らなかった。
思い返せば、今まで寝た相手は、全部、里の関係者だった。
つまり、忍者のみ。
テンゾウは、権蔵の両手を、万歳させて畳に押しつける。
  『ふつーの人って、こんなに弱いのか?』
化け物のような体力や、訓練された動作、一般人を遥かにしのぐチャクラなどを持つ相手とは、セックスが、ものすごくアクロバティックになったりする。
地味な交わりを好む普通の人が、忍者のセックスを見たら、新体操「床(とこ)」の演技でもしていると、勘違いするだろう。複雑な印を組むがごとく、腰のストロークを「浅深深深浅浅深激深」などと小細工したり(しかも音速で)、多重影分身をあちこちにとばして、それぞれにセックスをさせ、後に一気にオリジナルに統合する「ハイパーバインド」とか、もう、生と死の狭間の行為にまで堕ちている。
だから、そっと優しく扱わねばならないらしい権蔵は、ものすごく新鮮だった。
ちょっと抑えただけで、手首が赤くなっている。彼にとっては、もの凄い力に感じられるのだろうか?
  「カカシさん」
  「!!!・・・馬鹿にしやがって」
キッとテンゾウをにらむが、しかし、テンゾウが身じろぐと、すぐに怯えた表情を目に浮かべる。
  「馬鹿にしてませんよ」
  「案山子って・・・・おらを、案山子って言う・・」
あ・・・そうか・・
  「あんな立ってるだけの木偶の坊じゃねぇ」
  「かわいい・・・・」
  「やめろっ・・・かわいいだなんて・・・あほ」
権蔵も、微妙な気持ちらしく、「あほ」と小さく言って頬を染めた。
ああああ・・・あほ・・・・
もう、とまらない。
ごめんなさい、権蔵さん・・・・



2008.05.05.