鳴門の案山子総受文章サイト
「アンタ、やっぱり消えるのか?」
サスケがちょっと心配そうにオビトに言う。
「当たり前だろう。死者が跋扈する現世など、正常ではない」
俺はグッとつまる。
こんな人が、いや、こんな人でも、憎しみに囚われ、これでもかと運命に叩かれれば、愛する世界を壊しかねない道に走る。
「俺のこんな話、余興にもならなかったな」
「そんなことないわ」
サクラちゃんが言う。
「そんなに互いに大事なのに、辛かったでしょうね」
おやおや・・・いつもの辛口じゃないんだね・・・
「いや、俺は今、心底、ホッとしている」
「どうしてです?」
オビトは立ち上がると、俺たちを見回した。
「俺のような過去の人間が安らかに死ねる状況にあるんだと思ってさ」
オビト・・・・
「成長したカカシを見て、俺が動揺しなかったといえば嘘になる。同じ目を持っているから、カカシは俺を理解したろうし、俺はカカシの生きてきた時間を理解した」
「オビト・・・」
オビトは手にした議事録を俺たちに指し示す。
「嬉しかったよ。カカシは一人じゃないんだな」
「オビト・・・」
サクラちゃんが泣き出しちゃった・・・・
「こんなにも愛されて・・・」
「オビト・・・」
「安心していけるよ」
俺の脳裏に、火影になれと言ったオビトの背中がよみがえる。
「オビト!!」
思わず叫んだ名前は、何にも遮られず空中を飛んで、サスケが、
「おい、待て!!」
と手を差し伸べたが、もうそこにオビトはいなかった。
バラバラと議事録が落ち、忍術で守られた閉鎖空間が、耳障りな軋む音を立てはじめた・・・
「もう、これ以上はヤバイようだね」
隊長が、サクラちゃんをかばうように抱いて、俺たちを見る。
「戻ろう」
サスケが言って、俺たちはサスケの前に立つ。
「お前たちも一緒に飛ばすから、動くなよ」
「ああ、わかった」
「了解」
が、ちょっとサスケがなにか言いたげにしたので、俺が
「どうした?」
と聞くと、
「カカシの所に飛ばして・・・っつーか、カカシんトコに行っていいか?」
と言う。俺が、それに言葉を発しかけると、隊長が、
「いいよ、サスケ」
と俺を制してそう言った。
「妄想ばかりで、寂しくなっちゃったよね」
隊長はそう言って、笑った。サスケがホッとしたように笑む。
・・・・隊長、かっこいいってばよ。
ずっと、変態木遁って言ってごめん。
「何か言ったかい?ナルト?」
「心の声だってばよ、隊長カッコイイって言っただけ」
「ふうん・・・」
ギュンという音がして空間が歪む。
小さくなっていく狭間の世界・・・確かに寂しい。
でも、俺たちの世界に、カカシ先生はいるんだ!
オビト、いつか俺も、先生も死んだら、また一緒に話そうな・・・
いつか必ずある、それは俺の楽しみだ・・・・
◇
「本当は、大事な事が解決していないんだってばよ」
俺は、出来上がった議事録を持ってサクラちゃんと反省会を開いていた。
もう、いい加減疲れて、反省会、に突っ込む気もない(笑)
今日は、また以前の懐かしいアカデミーの教室だ。それも深夜。こっちの建物で会議があったからなんだけど、俺とサクラちゃんはそのあともずっと話し込んで、こんな時間になった。
「うん。わかってる」
サクラちゃんは頷くと、オビトのページを開いた。
「ここでしょ」
「そう」
カカシ先生には、恋人がいた。カカシ先生が認めている。
「私はアンタだと思ってたわ」
俺は首を横に振る。
「でも、そうよね。そこを未解決って言うアンタは、当事者じゃない」
「同じ理由でサクラちゃんでもないんだね」
「リアルでは、私はサスケ君一筋よ。また追いかけるけどね」
逞しいってば。
「じゃあ、誰だよ。隊長か?」
「ははは・・・ないない!!暗部時代に何回かは寝てるかもしれないけど、本命じゃないわよ」
・・・・生々しいってばよ。
「サスケでもないよな」
「ちがう、ちがう。あの変態ぶり、一度も成就してないと見た」
・・・君の恋人だよね・・・
「じゃあ、誰なんだろ?」
「アスマ先生?・・・いや、紅先生がいた」
「上忍リストつくろうかしら?」
「下忍や中忍かも・・・イルカ先生?えええ?!」
「一般人だったら、お手上げね」
俺たちは、結局、この会話自体を楽しんでいた。
誰でもいいし、それは、俺たちの会議のポイントじゃない。
でも、
「あれ・・・お前たち、珍しいね」
とカカシ先生が入ってきたから、流れはちょっと変わってきた。
「六代目!!こんなトコにいていいってば?」
「ふふふ・・・お前、わざと言ってるだろ」
カカシ先生は笑って、俺たちの側に来て座る。
「先生、今、先生のこと話してたんですよ」
「え?俺の事?」
「そうだってば」
「もう、写輪眼もないしね。そう簡単にぶっ倒れないよ」
そういうことじゃないよ・・・愛しいな・・・
「でも激務がつづいているんじゃ・・・?」
心配そうに言うサクラちゃんに、先生は笑っている。
「俺の代わりにテンゾウ・・・じゃなかった、ヤマトがぶっ倒れるかもね(笑)」
「ホント、先生ったら!!」
先生・・・
ああ、カカシ先生・・・・・
「あら、でも先生、冗談じゃなくて、忙しいとお付き合いしてる人とか、寂しいんじゃないかしら?」
ぶっ!!! [← 先生吹き出す音]
あ、先生が吹いた。サクラちゃん、ナイス誘導。
「わかっててからかってるな、お前ら!!」
「わかんないから聞いてるってば!!」
「もう、今だから言うけど、俺はオタクなんだよっ!」
「あら!新鮮!!・・・でもないわね。会議のメンバーだしね」
「じゃあ、先生の恋人は紙の向こう側ってことだな?」
カカシ先生は頷くと、
「その通り。だからしばらくリアルは要らないね!」
と言い切った。ま、イチャパラが手にくっついてるような人だからな。
ということで、この本の向こう側にいらっしゃる読者諸嬢!!
もしいらっしゃったら読者諸兄!!
先生にとっての紙の向こうのあなたがカカシ先生の恋人ってオチで、
幸せに、おやすみなさい!!!
(カカシ先生にローション使ってるけどね!はははは!)
【ホントウにおわり】