鳴門の案山子総受文章サイト
寝ているときに
たまに、手が当ることがある
なぜか俺は寝相がいいらしいから
本当に、たまにだけど
寝具の柔らかさとは違う、確かな質量がある触感
押せばどこまでも行きそうで
でも、調子に乗るとしっかりと押し返してくる
何度もその緩やかな反発を感じながら
俺は今朝も目を開ける
寝相がいいはずの俺は
最近はいつも右手を彼女の胸に置いて
そして目覚める
喪失の恐怖が物理的だった今までの眠りとは遠い所で
カーテンの隙間から射す何億年もの繰り返しに
素直に感動する
輝線がゆっくり動いて
その滑らかな肌と、産毛が発光するのを
俺の網膜に焼きつけるのを
俺はじっと
本当にそうだったらいいと
瞬きすらしない
意識の連続が途絶えるから怖いはずだった
この俺の中の時間は
今は
この景色そのものを
地面の土塊と同じ気持ちで見ているから
もう
怖くない
・・・・・
抱きしめられて
髪にキスされて
俺は今まで寝ていたことに気づく
でも見上げた世界は
君に満ちていて
さっきまで焼いていた網膜の映像のままだった
わざわざ
意識を分割して生まれてきて
また
地球に戻る徒労を繰り返す
人間なんてと俺がそう言うと
徒労だなんて
と空気のように笑ってなんの抵抗も生じさせない
わざわざ
意識を二つに分けて
また
出会ったのに
と
そう言った
彼女と出会って
何度も時間が早くなったり
ゆっくりになったりしたけれど
流れる朝日に
淡い髪を輝かせて
今朝はとうとう
時間が止まった