情事 1
[ 注意 ] 「妄想道」から生まれた話です。
カカシは、大胆だった。
大胆?
そのように感じるから、そう表すれば、次に会うと、そうではなかったように感じる。
無垢。
今度は、その単語がぴったりに感じたりするのだ。
◇
「不思議な人ですよね」
午後の待機所で、もう何度目かのちょっかいをかけるのだが、
「誰が?」
と、カカシはまったく頓着ない。
カカシさんですよ、と言うのが何故か悔しくて、
「ヤマト隊長」
とか言ってみたりする。
なにやってんだ、自分、と思いながら、でも、
「え?ヤマトが、か?」
意外に食いついてきて、ちょっと嬉しい。
隊長に食いついたってのが、複雑だけど。
「あいつに不思議なんて要素を見いだす君が不思議だよ」
あ、僕に絡んできた。
「そうでしょうか」
「そうです」
エッチな本を読みながら、でも、キチンと返事をしてくれる。
「不思議じゃないなら・・・なんですか?」
「痩せてるよね」
・・・は?
「俺さあ、もっと太ってるって思ってたんだよ、あいつ。それが、俺より軽いなんてな」
何故か、不満そうな口調だ。
「僕は一緒に風呂にも入りましたから、おおよその見当はついてましたが」
「あ、そうなの?」
「不満なんですか?」
問うと、カカシは本から顔を上げて、
「うん」
と言った。
「どうしてです?」
「さあ・・・・・何でだろうな?」
カカシ自身にも不満の正体は掴みかねているらしく、サイはやっぱり不思議な人だと思う。
と、カカシの目が、意識的にこちらを見ている事に気づいて、サイは狼狽した。
「な・・・なんですか?」
「いや・・・最近、妙に絡んでくるよね、俺に」
げ・・・・
気づかれている・・・・
「あ、いや・・・」
「君なりの情報収集かい?」
しかしカカシは、そう言ってニッコリ笑った。
なんか、キラキラしたものが散った。
うわ・・・
何が「うわ」なのかわからないまま、サイは、身体のどこかに思いっきり衝撃を受けた感じがしていた。
が、本当の衝撃は、次の瞬間に来た。
「ははは。赤くなっちゃって。かわいい」
か
かわいい
なんだ、これ!!
サイは、ここが公共の場所でなければ、限界まで叫び倒したい気持ちだった。
なんだ、この、なんかよくわからない変な気持ちは!!!
「あ、いたいた」
急に華やかな声がして、サクラが入ってきた。
「わ、サイ、あんた、どうしたの?」
悶えんばかりに表情豊かなサイの有様に、サクラが引いた。
「あ、ああ、サクラ。よくわからないんだ・・・」
サクラは、カカシをキッとにらむと、
「先生、サイに何を言ったんですか?」
と言った。
「え?何も言ってない・・・・」
カカシがきょとんとして返す。
サイは肩で息をして、待機所を後にした。
「あ、サイ!!」
サクラが追ってきたが、サイは走って逃げる。
頭が混乱していた。
なにか、強力な、破壊力のあるものを、お見舞いされた気分だった。
「不思議な・・・」
まだ心臓がドキドキしている。
「不思議で無垢な人・・・」
そっと自分の頬に触れる。
多分、指摘されたとおり赤いだろうそれは、ジンジンと熱を持って、冷えた指先に熱かった。
2009.07.01