情事 1




[ 注意 ] 「妄想道」から生まれた話です。




カカシは、大胆だった。
大胆?
そのように感じるから、そう表すれば、次に会うと、そうではなかったように感じる。
無垢。
今度は、その単語がぴったりに感じたりするのだ。





  「不思議な人ですよね」
午後の待機所で、もう何度目かのちょっかいをかけるのだが、
  「誰が?」
と、カカシはまったく頓着ない。
カカシさんですよ、と言うのが何故か悔しくて、
  「ヤマト隊長」
とか言ってみたりする。
なにやってんだ、自分、と思いながら、でも、
  「え?ヤマトが、か?」
意外に食いついてきて、ちょっと嬉しい。
隊長に食いついたってのが、複雑だけど。
  「あいつに不思議なんて要素を見いだす君が不思議だよ」
あ、僕に絡んできた。
  「そうでしょうか」
  「そうです」
エッチな本を読みながら、でも、キチンと返事をしてくれる。
  「不思議じゃないなら・・・なんですか?」
  「痩せてるよね」
・・・は?
  「俺さあ、もっと太ってるって思ってたんだよ、あいつ。それが、俺より軽いなんてな」
何故か、不満そうな口調だ。
  「僕は一緒に風呂にも入りましたから、おおよその見当はついてましたが」
  「あ、そうなの?」
  「不満なんですか?」
問うと、カカシは本から顔を上げて、
  「うん」
と言った。
  「どうしてです?」
  「さあ・・・・・何でだろうな?」
カカシ自身にも不満の正体は掴みかねているらしく、サイはやっぱり不思議な人だと思う。
と、カカシの目が、意識的にこちらを見ている事に気づいて、サイは狼狽した。
  「な・・・なんですか?」
  「いや・・・最近、妙に絡んでくるよね、俺に」
げ・・・・
気づかれている・・・・
  「あ、いや・・・」
  「君なりの情報収集かい?」
しかしカカシは、そう言ってニッコリ笑った。
なんか、キラキラしたものが散った。

うわ・・・

何が「うわ」なのかわからないまま、サイは、身体のどこかに思いっきり衝撃を受けた感じがしていた。
が、本当の衝撃は、次の瞬間に来た。

  「ははは。赤くなっちゃって。かわいい」


かわいい

なんだ、これ!!
サイは、ここが公共の場所でなければ、限界まで叫び倒したい気持ちだった。

なんだ、この、なんかよくわからない変な気持ちは!!!

  「あ、いたいた」
急に華やかな声がして、サクラが入ってきた。
  「わ、サイ、あんた、どうしたの?」
悶えんばかりに表情豊かなサイの有様に、サクラが引いた。
  「あ、ああ、サクラ。よくわからないんだ・・・」
サクラは、カカシをキッとにらむと、
  「先生、サイに何を言ったんですか?」
と言った。
  「え?何も言ってない・・・・」
カカシがきょとんとして返す。

サイは肩で息をして、待機所を後にした。
  「あ、サイ!!」
サクラが追ってきたが、サイは走って逃げる。

頭が混乱していた。
なにか、強力な、破壊力のあるものを、お見舞いされた気分だった。
  「不思議な・・・」
まだ心臓がドキドキしている。
  「不思議で無垢な人・・・」
そっと自分の頬に触れる。
多分、指摘されたとおり赤いだろうそれは、ジンジンと熱を持って、冷えた指先に熱かった。



2009.07.01