情事 2 [別版]
[ 注意 ] 「妄想道」から生まれた話です。
カカシは、大胆だった。
大胆?
そのように感じるから、そう表すれば、次に会うと、そうではなかったように感じる。
無垢。
今度は、その単語がぴったりに感じたりするのだ。
◇
「不思議な人ですよね」
と、サイはシーツにくるまったまま、もう何度目かのちょっかいをかける。
今日は久しぶりの休暇だったから、昨夜から、もう散々、ダラダラと過ごしていた。
ベッドに入る時間も遅くなり、そのあとカカシを抱いたから、寝入ったのはついさっきのような気すらする。
もう、日は高く、シーツに反射してまぶしいくらいになっていた。
「不思議?誰が?」
と、しかし、カカシはまったく頓着ない。
カカシさんですよ、と言うのが何故か悔しくて、
「ヤマト隊長」
とか言ってみたりする。
なにやってんだ、自分、と思いながら、でも、
「え?ヤマトが、か?」
意外に食いついてきて、ちょっと嬉しい。
隊長に食いついたってのが、複雑だけど。
複雑な心境のまま、カカシの身体からシーツを剥ぐ。
されるがまま、裸の肩や腕を露にして、
「あいつに不思議なんて要素を見いだす君が不思議だよ」
とサイに絡んできた。
「そうでしょうか」
「そうです」
むき出しの肩に舌を這わせて、また、昨日みたいにその気になればいいのに、と思う。
嫌がらない様子に、ちょっとだけ、期待する。
「不思議じゃないなら・・・なんですか?」
「痩せてるよね」
・・・は?
「俺さあ、もっと太ってるって思ってたんだよ、あいつ。それが、俺より軽いなんてな」
何故か、不満そうな口調だ。
「僕は一緒に風呂にも入りましたから、おおよその見当はついてましたが」
「あ、そうなの?」
「不満なんですか?」
と問うと、カカシはサイを見上げて、
「うん」
と言った。
「どうしてです?」
「さあ・・・・・何でだろうな?」
「もしかして・・・」
「ん?」
「ヤマト隊長にも興味あるんじゃないですか?」
カカシは声を出さず『え?』という表情をした。
それは、意図しない、でも、一方どこか計算されたような隙を感じさせて、サイは、カカシの下半身に手を伸ばす。
こちらを伺い見る、こんな時のカカシは、本当に大胆な感じがした。
だからサイも負けじと言う。
「僕に責められたいの?」
「なんで?」
「否定しないから」
触れたとき、もう、それは勃ち上がりはじめていて、サイは自分の言葉が間違っていないことを知る。
「テンゾウに同じ事聞かれても否定しないよ、俺」
最悪、この男。
しかも、テンゾウとか言いやがった。
よっぽど責められたいらしい。
「そんなに、僕のチンポが気に入りました? カカシさん」
カカシの身体に、半ばのし掛かりながら、昨夜のカカシを思い出す。
入れられることに慣れていると思っていたが、それこそ、サイの勝手な決めつけだったらしく、手間取るサイに、
『もっとゆっくりやってよ』
と、本当に辛そうに言った。
『は・・・初めて?まさか?』
サイが驚く。
『いや、さすがに初めてじゃないけどね。でも』
『?』
『慣れてるわけでもない』
「あの」写輪眼のカカシなら、そのセリフだけでも、ズキュンとくるくらい、初心に聞こえた。
パッと頬を染めたサイに、カカシは溜め息を吐く。
『どんだけ俺、君の中で節操ない人間なの?』
と、でも最後は諦めたように笑っていた。
・・・・・・
そっとカカシのものを握る。
カカシの鼻から息が微かに漏れて、この動きは続けてもいいらしい。
カカシのそれは、綺麗な形をしていて、クセのある歪みもない。
カカシのためというより、自分が手で鑑賞している状態になった。
「ねえ」
カカシが言う。
「あ、はい?」
「一応言っとくけど、ただの後輩だから」
え?
サイは驚いてカカシの目を見る。
一連の会話をただの戯れだと思っていたサイには、こうやって、間抜けな但し書きをつけてしまうカカシが驚きだった。
自分のカカシに対する印象が、本当に変わっていく。
目を見開いたまま、沈黙したサイに、今度は自分の発言を脳裏で確かめているような顔を見せる。
「テンゾウとはなんにもないよ?」
ああ、今度はいじらしいまでに初心だ。
その、あまりのギャップは、サイのカカシに対する感情を煽る。
カカシの上になり、多分、下手くそなキスをした。
自分のぎこちなさを、昨夜は頬が燃えるように恥ずかしく感じていたが、案外、カカシも一杯だったのではないか?
あのとぼけた性格のくせに、茶化しもせず、からかいもせず、一生懸命(に見えてきた)キスに応えているカカシは、とんでもなく愛おしかった。
サイの腰にカカシの性器が当たる。
「舐めていいですか?」
カカシが言葉に詰まる。
もしかしたら、サイがカカシに新しい面を見つけるように、カカシもサイの言動に振り回されているのかもしれない。
いいよというかわりに、カカシは右手で目のあたりを覆った。
そのまま、横を向いて、髪がシーツに擦れる音がする。
それが肯定の合図らしかった。
サイは身体をずらすと、そのままカカシのペニスを吸う。
「は・・・あっ・・ん・・・」
頭上から、素直に感じるカカシの声が漏れ聞こえ、それは、サイに素直なのではなく、自分の快感に素直なのではないだろうかと思わせる。
サイが手を伸ばし、カカシの視界を覆う手を除けようとする。
自分のモノが、どんなふうに愛撫されているか、カカシに見せたかった。
が、カカシは身体を捻ってそれを避け、なおも肘を掴んでくるサイの頭に、剥いだシーツをガバッとかぶせた。
視界が急に、乳白色の発光に包まれ、サイはペニスを咥えたまま笑う。
さすがにカカシがビクンと身体を震わせ、
「あっ・・・ばか・・・」
と呻いた。
サイは、思いつく言葉を喉の奥で叫びながら、カカシを嬲る。
「あ、や!!・・・んんっ~・・・あっん・・・」
たぶん抑えようもなく、カカシが喘いだ。
口中に独特なにおいと味を感じて、サイがそれを吸い上げる。
サイは、それを飲み込んで、シーツを剥いで、カカシを見た。
サイが見上げるより前に、カカシの目が、意識的にこちらを見ている事に気づいて、サイは狼狽した。
イッた後のカカシは、最前の声が嘘だったように、静かな目をしている。
「な・・・なんですか?」
カカシの指がサイの唇に触れる。爪が唇を軽く引っ掻いた。
「飲んだの?」
気圧されたまま、頷いた。
「俺のこと虐めておもしろい?」
「え?いじめてなんか・・・いませんよ」
「さあね。でも、こんなセックス、初めてだよ」
サイに突っかかるように言いながら、でも、カカシは足を開いた。
明るいところで見るカカシの姿は、あまりに非現実的で、綺麗な置物を見ているようだった。
足の奥は、明るい日差しの影で、でもそこが凄く気持ち良くさせてくれることをサイは知っている。
渇いた喉を唾液が落ちる無様な音がした。
カカシは、無垢そのままの顔で、自分のペニスを弄(いじ)ると、
「まさか、これって君なりの情報収集かい?」
突っかかる口調はそのままで、でも、そのあとニッコリ笑った。
なんか、キラキラしたものが散った。
うわ・・・
何が「うわ」なのかわからないまま、サイは、身体のどこかに思いっきり衝撃を受けた感じがしていた。
絶句して、カカシの顔とその下半身を一緒の視界に入れて唖然としていると、カカシが
「ははは。赤くなっちゃって。かわいい」
と言った。
・・・・
か
かわいい
かわいい??
な、なんだ、これ!!
「そういえばさっきなんて言ってたの?」
なんだ、この、なんかよくわからない変な気持ちは!!!
「俺のを咥えて、なんか言ったでしょ」
頬が熱を持つのが、自分でもわかる。
「・・・サイ?」
ジンジンして・・・・
「もう、ごちそうさま(笑)?」
カカシの声が遠くから聞こえる。
セックスが最後にあると思うなんて、本当に僕はガキだったな。
手に入れたんじゃなく、これからまだまだ進まなきゃいけないんだ。
いろんな思いで一杯の頭で、サイはカカシにシーツをかぶせ返した。
とりあえず、目の前から原因を排除してゆっくり考えようと、シーツごとカカシを抱きしめて、強く拘束した。
が、カカシが、半ば本気で、抵抗してくる。
シーツからはみ出した下半身がそうさせているのだと、サイはやっと気づいた。
「いただきます!!」
大きな声で、そう、カカシに言い聞かせる。
「変な子」
小さくつぶやく声が聞こえて、サイはその指で、カカシの奥をまさぐった。
昨夜(たぶんもう今日になっていたと思う)繋がったそこは、まだ柔らかく、カカシのちょっとした身じろぎで、指の先がのまれる。
複雑な褶曲を感じながら、そっと差し込むと、最前交合したときの空気をカカシが呼び戻す。
シーツの塊の中で、カカシがゆっくりと呼吸しているのがわかった。
太腿を持ち上げる。
もうカカシは抵抗しない。
中に入り込んでいたローションが、入り口の粘膜にまとわりついて、陽光をまともに浴びて光っていた。
「好きです、カカシさん」
『え?』
「好きです、カカシさん」
カカシがシーツから顔を出す。
「好きです、カカシさん」
な、なに言ってんの、今更、とカカシが頬を染める。
「さっきの答えですよ」
唖然として、意味不明に陥っているカカシを見て、今度はサイが笑った。
2009.07.10