真夏の夜の話 (繋がる) 3




ふと一瞬、ナルトの目が暗い部屋を一瞥し、闇の中に足を広げているカカシの白い姿を俯瞰した。
暗い中にあっても星の明かりは確かにあり、カカシの透明な肌の質感や、体液に濡れて光る性器は、むしろはっきり目に映る。
なぜか必死に、さっきの衝撃のままに、ナルトは記憶の中をさらう。
初めて出合ったとき、色々教えてもらったとき、助けられたとき・・・・・
思い出せば出すほど、それは今の目の前の色っぽい人には繋がらない。
その手が無意識に、カカシの内股を撫でる・・・・
カカシが呼気を緩め息を吐いた音がした。
ナルトははっと、カカシの顔を見る。
  「ねえ・・・」
顔の前に置いた手も今は外れ、暗い寝具の上でカカシは笑っていた。
  「はい・・?」
  「恥ずかしいだろ?」
とカカシが言う。
一気に流れた時間の小休止に、カカシが羞恥した。
自分の唾液とカカシの体液とで、性器から続く秘所も濡れて光る。
そのままソコにゆっくりと舌を這わせた。
耳に溢れる虫の声が、蒸し暑い夜を意識に固定する。
湿った密やかな庭の土の匂いと、畳の懐かしい匂いが、鼻を掠める。
細かな皮膚の褶曲を、ただ丁寧に舐めて、時折、指で確認した。
抵抗は強く、自分が必死なのと同時に、カカシも自分の指に慣れようとしている事を感じ、胸の蓋が弾けそうになる。
カカシの左手がそろそろ降りてきて、ナルトの二の腕を捉えた。
  「もっと強くしても大丈夫だよ」
そう言って、腰を浮かせた。
その動きは大きく、意味も意図もわからないまま、カカシの動きを傍観したナルトのペニスが、いきなりカカシの中に入る。
  「!!」
驚いている隙はなかった。
  「あ・・・はっ・・んんっあ・・・」
カカシの絞り出すような呼気がナルトの耳に迫る。
カカシが右の腕を自身の後ろに回し、その上体を起こしながら、ナルトの太腿にその下半身を乗せてきたのだ。
グンっと性器が深く飲み込まれ、痺れるような快感が背骨を走ったのは、我知らず、腰を大きく突き上げたあとだった。
カカシの身体が大きく動き、また、深く下りる。
それにあわせて、また、勝手に腰が動いた。
  「ナ・・ナルトっ!!」
カカシとするのは初めてだから、そのカカシの押し殺した声が、カカシのスタンダードなのか、何かを訴えたいがためなのかわからない。
  「い、痛い?」
動きを抑えて、でも、完全には止められずに、ナルトが言う。
カカシの浮いた腰が、また強くナルトの太腿に密着して、カカシの乾いた喉が音を立てたのを聞く。
  「ね・・・せんせ・・・?」
  「んんっ・・・あ・・・」
今は、カカシの両手はナルトの肩に置かれていた。
強すぎるナルトの動きをセーブするかのように、バウンドするたび、置かれた手に力が入るのがわかる。
  「せんせ、ね、痛い?だいじょ・・・」
そこまで言って、ナルトは唾を飲む。
カカシが、何かを言おうとナルトを見ていた。
  「ナルト」
ああ、そんなに、先生の声がかわいいなんて。
突き上げれば、また言ってくれそうな気がして、心配しているくせに、やめられない。
  「ナルト」
俺の気持ちをわかっているかのように先生がもう一度言って、そして俺の耳に噛みついた。
噛まれて、自分の身体もすごく興奮している事に気づく。
全然痛くなかった。
耳に噛みついた先生は、一生懸命なにか喋っている。
  「ナルト、ナルト・・・」
うん、うん、と俺は頷きながら、動き続ける。先生の身体は大きくて、俺の身体もへばっていたはずなのに、どこまでもいけそうだった。
  「ナルト、ナルト」
そのときには気づいていた。耳を噛みたいんじゃなくて、先生は、ただ俺に話しかけたいだけだって。
先生が呼ぶ俺の名前は、だんだん涙混じりの声になっていって、気持ちいいのに、心は抉られるように切なかった。
俺の腕が、二人の動きを拘束して抱きしめる。
自分だけが満足していいなら、俺はこの抱擁だけでイケた。
先生の唇を探して口付ける。
  「ちょっと、待って」
俺は、繋がったまま、先生の身体をシーツに下ろした。
先生が無意識に髪を掻上げる。
目の縁が光るその大好きな顔は、俺にとって、もう、永遠に取れない楔だった。
寝具の上で抱き直して、また俺を裏切るねだるようなキスは強烈に愛おしくて、俺は動きを続行する。
  「あ、あ・・・ナルト・・・ああ・・・」
また俺の名を呼んで。
本当に俺は、何度も、新鮮に撃ち抜かれていた。
あのカカシ先生が、俺とのセックスの快感に泣くような大人だったという、進行形の事実に。
  「先生」
静かな俺の声に、先生がこちらを見る。
  「好きだよ」
思わず言ったその言葉に、先生のそこがぎゅうっと締まり、俺は、またビックリした。





シャワーを使いたいと思ったが、思っただけだった。
寝乱れた布団の上で、腰だけシーツで覆って、俺と先生は伸びていた。
虫の声は、今は一匹だけが庭の片隅で鳴くような静けさが、そっとその範囲を広げている。
  「明日・・・」
そう言った俺の声は掠れていた。
  「ん?」
先生は、俺の先生のまま、甘い声の返事をする。
  「なんか、みんなの顔みれないな」
  「うん」
先生の笑いを含んだ「うん」に、俺は身体を起こした。
  「なに、笑ってんだよ?」
笑ってない、というように先生は、綺麗に微笑んで俺の髪に指を差し入れた。
  「いつものナルトでいてよ」
と言って。
風がゆっくり室内を通り抜け、さっきまでの熱はもうない。
そして、ただ、ただ、ひたすら、切なかった。
もう、俺が何を言っても、どう言っても、
先生が自身を罰しはじめているのを止められないと、わかっていたから。
  「今度行こうよ」
俺の声が虫の伴奏に乗る。
  「ん・・・どこに?」
  「お祭りの夜店」
  「ははは・・・」
  「ガキっぽい?」
先生はゆっくり首を横にふると、

  「いいよ」

と言った。

その空間に消えていく声を耳に刻みつけたいと、
神様まで動員してお願いしそうな自分に、俺は、長い溜め息を吐いた。



2013/07/09