妄想会議 1




サクラちゃんに猥談が通じることが分かった瞬間、俺たちは、さらにワンステップ、アップした仲間になった。
俺たちの話についてこれるかな、と、聞き手に回って頬を染めるかわいいサクラちゃんを予想していた俺たちには、複雑な誤算だった。・・・・っつーか、ぶっちゃけ彼女の方が凄かった。
AVをそのまま信じる馬鹿な男と、造りを造り(フェイク)として楽しめる女とは、端から勝負はついている。
さすがのサスケも形無しだ・・・・



その日も俺たちは、なんとなくサクラちゃんに一目置いて、いつものようにだべっていた。
放課後のアカデミーの教室に忍び込んで、俺たちは語り合う。
ついこの間まで、ここに座って勉強していたなんて・・・もう遠い昔のように感じる。
  「そりゃそうよね、こんなに大きくなってるんだから」
サクラちゃんが俺の頭に手をやりながら、見上げてくる。
  「サクラちゃんだって大きいってばよ」
俺のスケベな目線に、ああぁ~・・もう大人なサクラちゃんは、全く動じない。
  「うふふ・・・いのより大きいかしら?ねぇ?」
ねえ・・って言われても・・・・ねぇ?
サスケがニヤニヤして、俺の窮地を眺めている。
  「サスケ、なに笑ってんだよ!!」
  「(笑)」
  「お前のセーヘキについて語るぞ、この」
とたんにサスケは盛大に赤面して咳き込んだ。
  「あら、どーしたのかしら?なによ、セーヘキって?」
サクラちゃんに突っ込まれて、サスケの動揺ったらなかった。ざまあみろ。でも、あとで、速攻で逃げなきゃな。
  「あんま、突っ込むな」
顔を背けながらぼそっと言うが、馬鹿だな、サスケ、もうサクラちゃんは少女じゃねぇ。
サスケの発言など全く無視して、勝手に続けている。
  「あ、もしかして、性癖のこと!?ええーーっ、なになに!!なによっ???」
お気の毒、サスケ。
もう言うしかないぜ。
ということで、もうさばけた仲の俺たちだ。
俺は、赤面しちまってうまく説明できないサスケのかわりに、事の次第を説明した。
途中でかなりサスケの突っ込みがあったけどね。




・・・・・・・




  「・・・って言うわけでさ」
  「へぇ~・・・カカシ先生をねぇ・・・」
たいして驚きもせず、ただ再確認するように語尾をフェイドアウトするサクラちゃん。
  「しみじみ言うなよ」
赤を通り越して、青くさえなっているサスケが呻くように言う。
俺もサクラちゃんに言う。
  「な?ウケんだろ」
しかし、意外にもサクラちゃんは真面目な顔で言う。
  「いいえ、わかるわ。」
  「「ええっ!?」」
俺はともかく、サスケまでビックリしてサクラちゃんを見つめた。
  「わかるわ、カカシ先生って、なんか感じるわよね!」
あぁ、もうなんでもありだな、サクラちゃん・・・・・
  「か・・感じる?ど、どういう意味?」
  「サスケ君はどうなのよ?馴れ初めはさっき聞いたからいいとして、今度は具体的にいきましょうよ」
  「「ぐ・・具体的っ・・・!!!」」
サクラちゃん、凄すぎるってばよ・・・・
さようなら、俺の初恋・・・・・・・



確かに、先生が先生にしか見えなかった昔とは違う。
俺は、まあ、ニブチンとサクラちゃんに言われるくらいだから、その、カカシ先生の・・・せ・・性的魅力っての?それに気づかなかったけどさ。でも、サスケがカカシ先生について云々言い始めた時から、なんとなく、俺も変な気持ちにはなっていた。
それが、はっきり「性的興味」なんだってことに気づいたのは、このときの「エロ会議」のときだった。
ほんと、俺って成長期だってばよ・・・・。
  「で、どうしたいのよ、カカシ先生を?」
  「ど・・・どうしたいって・・・」
  「セックスしたいのかよ?」
俺のあからさまな突っ込みに、怒ると思いきや、サスケはグッと唇をかみ締めると言ったのだ。
  「ああ・・・・したい。」
おい!!「ああ」と「したい」の間のタメの「・・・・」はなんだよっ!!
俺はサスケに確認する。
  「セックスだぞ?先生は男だから、ケツの穴だぞ?!」
  「ああ。かまわない。」
ここら辺からサスケが壊れだした。
積もりに積もった先生への熱い想いに、脳が沸いちまったんだろ。
  「わざと覆面なんかしやがって、剥いてもらいたいって願望だよ」
  「剥く?先生を?」
  「ああ。闘いでアイツが強さを発揮すればするほど、俺は思うんだ。泣かせたいってね」
なんか、もう止まらない。こんなに熱いサスケ、爆笑もんだってば!!
  「嫌がったって、許さない・・」
あ、目、閉じた・・・・も・・妄想してんのか?
  「サスケくん、Sなのね?」
  「いや、サクラ、俺、Mだよ。」
おいおい、すげえな、俺ら。なんの話だよ。まじ、すげえな7班。10班もそうかな・・・?
  「カカシにだけは、なんか、こう、いたぶりたい・・・というか」
  「そうそうそう!!わかる!!いじめたくなるわよね!!」
  「なんかさ、裸にして、みんなの前に立たせちゃたりな」
  「羞恥プレイ」
  「そうそう、それ。で、俺に言うわけよ、サスケ、もう許してよ・・・とかって」
サスケがまた目を閉じる。
ああ、もうヤバイって、その恍惚とした顔・・・・



・・・・・・・
・・・・・・・
・・・・・・・



場所は忍具の保管庫。上位忍者が使うような特別誂えのものばかりおいてある奥まった一室だ。
もちろんサスケは入れないが、カカシを追って無理やり入室したのだった。
  「・・もう、いいだろ?」
保管庫に差し込む夕日が、立っているカカシの裸身をどぎつく照らしている。
カカシの足元には、脱ぎ捨てた忍服が散らばっている。
カカシはちょっとだけ寒そうに腕を組んだ・・・


事の始まりは、ガイ先生の一言だった。
  「下忍の罰ゲームはかわいらしいな」
そのころはまだみんな下忍だった。ゲームで負けた子に、アイスをおごらせるという罰ゲームを、ガイは目を細めて眺める。
  「じゃあ、上忍の罰ゲームはさぞ凄いんだろうな」
シカマルがつぶやくように言う。
  「ああ。泣くね。比喩じゃないぞ。ホントに泣くんだ」
ブッと数人がふき出した。
  「テキトーなこと言わんでくださいよ」
シカマルも苦笑する。
  「馬鹿にしてるな、お前たち。俺は嘘は言わん。」
  「んじゃ、どんな罰なんだよ?!」
そこにいた下忍が一斉に喰いついた。
ガイはなんてこと無いって顔で、「うん。みんなで引ん剥いた」と言った。
  「「「「え?」」」」
アイスの罰より低レベルな罰に、特に女の子たちは一斉に引いていなくなった。女の子は興味が無いわけではなく、あくまで、レヴェルの問題だ。
他の生徒もつまらなさそうに散っていったが、サスケだけは違った。
『上忍だぞ』・『剥かれたのは・・・誰だ?』・『も・・もしかしてカカシだったら・・・』
サスケが立ち上がる。
  「ん?なんだ少年?」と、ガイ。
  「誰だ?」
  「何が?」
  「剥かれた馬鹿」
  「我が永遠のライバル、」
最後まで聞かず、サスケは卒倒しそうになる身体をくるっとひっくり返した。早歩きでみんなのもとを離れる。
サスケの脳内をガイの言葉が駆け巡る。
  『剥かれて泣く・・・・ヤバイ・・・』
サスケの脳に、妄想が満ちる。
なぜカカシがあっさり脱がされるのか、その部分の疑問は残るが、シチュエイションがおいしいことには変わりない。
しばらくは、任務どころの騒ぎじゃなかった。
カカシが気になって仕方ない。
でも一方のカカシは、当たり前だが、全くいつも通り。




・・・・・・・
・・・・・・・
・・・・・・・



  「ち・・ちょっとサスケくん!!」
サクラちゃんが恍惚としているサスケに声をかける。俺はサスケの呆けぶりが怖くて、サクラちゃんの後ろにかくれていたってば。
  「え・・・あ、ああ・・・」
  「妄想長すぎるわよっ!!」
へっ、今までの、全部・・・妄想?
  「設定が細かいな、サスケ。ガイ先生とか罰ゲームとか・・」
サスケがふんっと俺を見ると、哀れむように言った。
  「ウスラトンカチが。妄想は、設定こそが命だろ!!」
  「それは基本だけど・・・肝心な部分はまだなの?」
ああ、サクラちゃん・・・・肝心な部分・・・って・・・
  「もう少しだ、焦るなよ」
くーーーっ、ハンサムだけにいやらしい顔だ、サスケ。



・・・・・・・
・・・・・・・
・・・・・・・



サスケは、暗部も真っ青の情報収集マシーンと化した。
アスマ、紅、特別上忍、そして彼らが集まる待機所・・・・・
さりげなく、何気なく、あるときは、大胆に、サスケは「罰ゲーム」の真相を探った。
その結果、以下のことが分かった。ちなみに、ちゃんとノートに書き込んでいる。
■ 罰ゲームはホントにあった。
■ 裸にされたのは、カカシで間違いない。
■ その場にいたのは、カカシの他は、ガイ、アスマ、紅、ゲンマ、ハヤテの5人だった。
・・・・・・・
で不思議なのが、連中の反応だ。
いつものことだ・・・というような・・・いや、たいしたことないっていうような感じなのだ。
  『カカシが脱がされてんのに・・・??』
サスケは、事の次第がはっきりしてくるにつれ、違和感を感じるようになった。
その違和感を解消してくれたのが、ゲンマだった。つっけんどんに見えて、その実面倒見のいいゲンマは、下忍にとっても、何かと頼りになる存在だ。
  「ああ?カカシさんか?」
  「うん・・・」
  「なんて言ったらいいかな~」
千本がグルグル動く。
  「そうだな、たとえばだ、俺、男だけどさ」
ゲンマが面白そうにサスケを見た。
  「お願いしたら、あっさりやらせてくれそうなんだよね(笑)」
  「(絶句)」
つまりさ・・・・ゲンマが続ける。
  「気前がいいんだよね、カカシさんって」
目から鱗だった。サスケの違和感が消し飛ぶ。
  『気前がいい』
このフレーズはサスケの重要キーワードになった。




・・・・・・・
・・・・・・・
・・・・・・・



  「凄いわ、サスケくん!!妄想とは思えない説得力があるわよ!!」
俺も驚いていた。サスケの妄想を聞いていると、本当にカカシ先生って、気前よく脱がされたり、ゲンマに身体を抱かせたりしそうだから・・・凄い。
そこが、つまり、そういう風に周りに思わせるとこが、カカシ先生の『性的魅力』なのかもしれない。
  「で・・・試したってわけね」
生き生きとした美しい顔で、サクラちゃんがサスケを見る。
  「そ。保管庫で、」
ゴクリと俺の喉が鳴る。
  「脱がしたぜ」
ああぁぁ・・・・なんかすげぇ興奮する・・・・・・



2008.01.26. / 01.27.