妄想会議 2




  『気前がいい』


このフレーズで、勇気100倍のサスケは、もちろんカカシに強引に迫った。
下忍は特別保管庫には入れないが、カカシに続いて強引に入り込む。
窓の外には木が茂っている。
日差しが傾きかけて、葉の間から強烈な色を射していた。
カカシはまっすぐ左奥の壁に向かう。
サスケは黙って後に続く。
  「何よ~サスケ・・?」
  「みんなに見せてんだろ?」
  「何を?」
カカシは振り返りもせず、棚をゴソゴソやっている。
  「アンタの裸」
それでもカカシは振り返らない。
  「俺の裸?」
  「ああ。脱がされたんだろ?」
特殊な手裏剣を幾つか手にして、カカシが振り返る。
  「ああ、罰ゲームのこと?」
やっぱホントじゃん・・・
  「事実なのか?」
  「うん」
この男、あっさり言いやがって・・・・
サスケは拳を握り締める。
なるほど、これでゲンマの台詞が信憑性を帯びてくる。
でも、拳は震えるほど硬く握り締められ、なぜか強い語気でこう言っているサスケがいた。
  「アンタほどの男が、なにあっさり脱がされてんだよ」
  「あれ、呼び捨てにするくせに、俺を認めてくれてるんだ、サスケ?」
  「・・・ったりめーだろ!!なに負けてんだよ!!」
あ・・・あれ・・?
おかしいぞ・・・自分・・・。
こんな美味しい条件なのに、なんで、脱がされたことをなじる様なこと言ってんだろう、俺。
うう・・・な、なんだろう・・・・





・・・・・・・
・・・・・・・
・・・・・・・



  「サスケくんっ!!!」

  「・・・え・・あ・・」

  「サスケくんっ!!!、しっかりして!!」

  「あ、ああ、サクラ・・・」

途中で急にうなされたサスケに、サクラが大声で呼びかける。
ななななな・・・なにっ!!サクラちゃん!!??
何が起きたんだ?
  「あ、サクラ、俺・・・」
  「戻ってきたみたいね。危なかったわ」
  「サクラちゃん、サスケ、どうしたってばよ?説明してくれよ」
わけがわからない。でも、サクラちゃんは、顔をこわばらせて、俺たちを見た。
  「マトモぶる良識ってやつよ!!妄想の強敵、いや、天敵ね」
  「え?なにそれ?」
サクラはとうとうと語りだす・・・・・目が据わってるってば・・

(以下まくし立てる)
黙って妄想に浸かってればいいのに、頭の隅で『俺ってこんなエッチな人間じゃない!!』とか、『こんな恥ずかしい妄想、パクノダがいたら死ぬ!!』とか、とにかく、馬鹿な考えが頭の中で、盛り返しちゃう現象よ。くだらない!!なにが、恥ずかしいよ!!なにがこんなの俺じゃない、よ!!結局、恥ずかしいし、そんな俺なのよっ!!

  「・・パクノダって誰?」
  「話のポイントはソコじゃないっ!!」
ひえ~・・・・なんで俺まで怒られんの??
  「ご、ごめん、ごめんよ、サクラ」
サスケは、本当に反省しているらしく、頭を振って自身を嘆いている。
  「だめよ、我に返っちゃ!!妄想中に一番のタブーだわ!!」
  「ほんっとごめん。ああ、俺なにやってんだろ・・・ごめん、みんな」
  「え・・いや、俺は別にいいけど・・・」
なんなの?この流れ。
  「わかった?サスケくん!!あなたはエッチで恥ずかしい人間なのよ!!」
  「ああ・・・そうだ・・・俺はスケベで恥ずかしい人間だ・・・」
おいおい・・・サスケ、何だよその遠い目は!!
俺だけ置いてどっか行くなよ!!
でも、お前の申告、合ってたな、Mってやつ(笑)
  「さ、常識なんて振り払って・・・いい?」
  「ああ。もう大丈夫だ。いつもの俺だ。」
い、いつもの俺って・・・お前・・・
  「よかった・・」
  「ありがとう、サクラ」
・・・・・なに、この強烈なタッグ。
・・・・・俺がサクラちゃんと付き合う余地なんてはじめからなかったんだな・・・




・・・・・・・
・・・・・・・
・・・・・・・



  「本気で戦うわけじゃないでしょ」
手裏剣の刃先を指で触っている。
  「時の運だってあるし」
  「何のはなしだよ」
  「え?大富豪のことだろ?」
  「はあ?」
  「は?違うの?」
結局、待機所でトランプゲームをしてて負けた・・・・と、そういうことらしい。
  「そんなことかよっ!!」
  「いいじゃない、たまには息抜きも必要だよ」
  「カカシ、俺が聞きたいのはソコじゃねぇ」
  「ねえ、サスケ。その話、長いの?」
くっそぉ~!!!
  「カカシ、てめえ・・」
  「聞きたいのは俺のほうだ。何を怒ってんの?」
もう、うだうだ時間を無駄にはできない。
直球を望んだのはアンタだからな!!
  「俺にも見せろ」
・・・・とうとう言っちまった・・・
  「なにを?」
  「アンタの裸」
一気にシリアスモードになると思いきや、カカシの雰囲気は変わらない。
  「へ~・・・それって、そういう意味ってこと?」
カカシが、ゆっくりと口覆いをおろした。
  『くっそぉ~・・・・やっぱりいい男だぜ』
素顔を見るのは初めてじゃない。待機所ではしょっちゅうおろして、能天気に笑っている。
  「そういう意味だ」
  「俺、女じゃないよ?」
  「馬鹿。わかってる」
  「じゃあ、男の俺に性的興味を抱いている?」
うるせえ奴だ。
  「そうだって言ってるだろう!!」
  



・・・・・・・
・・・・・・・
・・・・・・・



  「はぁ・・・・」
またサクラが怒っている。
  「いい加減にしなさいよ、あんた!!」
ひえ~~っ、サスケをアンタ呼ばわり。
  「ごめん、サクラ!!」
サスケも必死だ。
  「いくら妄想といえども、手ごわいんだよ、カカシって!!」
  「さっさと脱がしなさいよ!!」
  「ああ・・すまん」
  「いつまでも始まんないでしょ!!」
・・・・・・・・
  「まさか私たちをジラして楽しんでいるわけじゃ・・」
  「ととととと・・・とんでもない!!!!」
『と』が5つ・・・か。
サスケ、がんばれよ。
(もはや他人事のナルト)




2008.01.28./02.02.