妄想会議 10




 「さあ!!」
突然、サクラが言った。
  「え?」
俺がサクラを振り返る。
  「さあ!!」
  「なんだってば?」
ナルトもサクラを見た。
  「なにやってるのよ、あなたたち!!」
幸せに浸ってるのに、なんなんだよ、サクラ!!
もう、俺はなにもいらない。ある意味、イタチに勝ったんだ!!
  「なに、蝉みたいにしがみついてるのよ!!」
  「うるせーな、これで十分だ!!」
すると、サクラは含みのある笑みを浮かべて、俺たちの周りを歩きはじめた。
  「アンタたち!!かわいそうじゃないの、先生が」
え??
なに言ってやがる。
  「せんせぇ、ちゃんと言ってたじゃない」
は?・・・・なに・・・・ええ?
  「自分も変態だって」
うっ・・・・・
カカシを見上げると・・・・相変わらずの微笑み。
  「据え膳食わぬは、男じゃないわ」
  「く・・喰っていいのか、サクラちゃん!!??」
ナルトが涎を垂らす勢いで喋ってる。
え?え?なに、この美味しいけど、微妙な展開!!
  「もちろんじゃない。先生だって期待してるのよ、ねぇ?」
サクラの呼びかけに、俺とナルトは一斉にカカシの顔を見上げた。

う・・・うおおおおお・・・!!!

頬が赤いっ!!!
恥ずかし気に微笑んでる!!!
ぜんぜん否定してねぇぞ、おいっ!!
ここで?
ここで、かぁ??
喰って?
いいの?カカシを?
  「なに、やっちゃっていいの?」
意外な展開なあまり、つぶやくような声になっちまう。
  「カカシ?」
  「ん?」
  「いいの?」
  「いいよ」
あああああ、あっさり・・・・
  「カ・・カカ・・」
もう、なにがなんだか・・・・




・・・・・・・
・・・・・・・
・・・・・・・



  「というわけよ」
サクラの声が響く。
俺とナルトは、すっかり暗くなった教室で、息を荒げて床に転がっていた。
全身汗にまみれて、恥ずかしながら・・・って今更だけど、股間までギンギンに張ってる・・・・
  「サクラちゃん・・・やっぱ凄いってば・・・」
ナルトがつぶやく。

そうだ。

悔しいけど、俺たちはあっさりやられてしまった。
カカシへの妄想なのに、カカシを登場させてしまうという、アクロバティックな荒業に、もう俺たちはヘロへロにされてしまった。
  「わかった?妄想にもランクがあるってことが」
ああ、よくわかったよ・・・・
とにかく、今は、ちょっと休ませてくれ・・・・・
んで、トイレにもいかせて。
妄想の中のカカシの感触がリアルで、これは十分使える。
使えるか、使えないかも、重要なポイントだそうだ・・・・奥深すぎ・・・
と、そのとき、廊下から人の気配がした。
  「見回りかしら?」
別に、やばいこともないだろうが、なにせ、今の状況じゃ、具合悪い。
  『おい、気配消せ』
俺が合図するまでもなく、二人とも気配を消した。

廊下に集中する・・・・

と、窓が開いてカカシが入ってきた。

  「「「!!!!!」」」

  「陽動に引っかかるなんて、お前らねぇ(笑)」
  「カ・・・カカシ先生っ!!」
ナルトが挙動って、おろおろする。
  「本物だってば?」
このウスラトンカチが・・・・・
  「え?何のこと?」
  「いえいえいえいえ、別に・・・ぃ」
サクラまで、不審げ満載だろう!!
  「なーんか、変だねぇ?」
サスケ?とばかりに俺を見る。
うへ~、本物を前にすると、とてもじゃないが、この人がアンアン言うようには見えない。
でかいし、まあ、スラッとはしているが、すげぇ筋肉質だし、視線も、ポケットに突っ込んだ手も、怖い。
  「任務のランクの話です」
俺が、カカシの眼光に怯んでいると、サクラが横から助けてくれた。
  「ふ~ん・・?」
サクラが立ち上がり、俺のそばに来た。
  「ほら、サスケくん、本物を前にすると、とてもじゃないけど出来ないって思うでしょ」
うげっ・・・
ササササ・・・サクラっ!!!
なに言って・・・どおーゆーつもりだっ!!!
  「やっぱり、俺ってそう見えるの??」
俺の慌てっぷりをよそに、カカシは喜んでいる。
ん?・・・・あ、サクラ、なんという、高度なテクニック!!
ア/ンジャッシュ効果か!!
  「そうよ。先生はやはり無敵の写輪眼のカカシよね」
  「あ、ああ、そうだな」
ここは調子をあわせていく。
  「とてもじゃないが・・・俺には無理だ」
カカシが意外そうに俺を見る。
  「ずいぶん弱気だね~サスケらしくも無い」
うっ・・・やめろ、カカシ、余計なこと、言うな!!
  「でも・・」
うわっ、サクラ、その雰囲気、やめろ。今までの会議っぽいぞ・・・
  「それが重要なのよ!!」
あああ、もう、妄想会議口調だ。カカシもちょっと驚いたように、眼を見開いている。
  「このギャップが最高なのよ!!」
ギャップとかって・・・あ~あ。
  「なに、それって、俺が見掛け倒しってこと?」
カカシも口を尖らせている。
ぶっ・・・・やっぱり可愛いとこあるね、アンタ。
妄想の対象にして、悪かったけど、でも、好きって気持ちがあるから。
  「違う、アンタ、やっぱりかっこいい俺たちの先生だ」
  「そうよ!!先生がそばにいる限り、私たちは、ずっと最強の7班だわ」
  「カカシ先生、大好きだってばよ!!」
俺たちの、聞き様によってはからかっているような本音の吐露に、カカシは大混乱していた。
  「え?え?え?な、なんなの、お前たち・・・」
  「本心だよ、なあ?」
  「き、気持ち悪いっ!!なんだよ、夕飯でもおごらせる気か?」
  「それでいいよ」
  「それでいいって、なんだよ。おい、サスケ!!」
俺は教室のドアを開ける。
ナルトとサクラが、カカシの両側にじゃれついて、続いた。
外はすっかり暗くなっている。
雑踏の空気に、俺たち四人の足音が混じる。
  「ラーメン以外だぞ」
  「ええ?じゃあ、ラーメンは仕上げにして、ほらサクラちゃんが言ってた、イタリア料理とか」
  「仕上げってなんだよ、お前」
馬鹿な会話が聞こえる。
なんだかんだ言っても、今のこの瞬間が、やっぱ最高だな。
  「サスケ!!」
カカシが呼ぶ。
  「ここだってさ」
振り返ると、最近出来た洒落た店の前に三人が立っていた。
  「喰うぞ~!!」
ナルトが叫んで店に特攻をかける。俺たちもその背を追って店に入った。
  「なあ、サスケ」
カカシが背後から俺の肩をつつく。
  「ん?」
  「あとでホントのこと、教えろよ」
カカシはそう言うと、店の奥に消えた。
本当のこと?
バカだな、アンタ。
ちゃんとさっき言ったじゃねぇか。

かっこいい、最強、大好きっ!!ってな!!





2008.02.10.

無理やり終わらせました。ここまで読んでくださった方、ありがとうございます。