05 無理矢理「妄想させる」 カカシに

★「無理矢理」な「お題」の 05 無理矢理「妄想させる」 から、微妙に続いています。あまり関係ないけど★




ナルトに言わせれば、俺はスカシテルんだそうだ。

もちろん、そんなのは俺の認識にはない。
はっきり言って、そんな振る舞いなんかしてないし、意識したこともない。
だから、ナルトの妄想を知ったときは、本当に意外に感じた。
ナルトがえらく執心なのは、それがたぶん「ギャップ萌え」ってやつだってわかったからだ。
年齢的な差異っていうのも、まあ、複数の年齢で存在することができない以上究極のギャップなのかもしれないけど、俺はそれ以外のナルトの言葉に引っかかっていた。

普段は完璧な俺・・・・・だって?

なに、それ?
全然、完璧じゃないし。
猫背だし、片目怪我してるし、つまり顔面に凄い傷あるし、エロ本読んでるし、悲惨な過去だし、いまひとつパッとしないっていうかつまり微妙にダサいし(笑)・・・・・
性格は・・・真面目だな。エロ本読んで真面目、という部分に、周囲はどう整合性をつけているかという疑問が生じるが、なんとなく、エロ本は自己防衛のアイテムという見事な落ちをつけてくれてるみたい。

でも、俺、じつは、そんなにアッチ方面は堅くないんだよね。

真面目は、真面目だよ。
仕事なんか、堅いって言われるほど、まあ、スタンスは愚直だ。
でも、それと貞操観念フリーなんて、関係ないでしょ?
つまり、さっきも言ったけど、俺の武装した(と思われている)外見から、みんなは勝手に、本当は優しいとか、本当はオクテだとか、本当は純情だとか、まあ勝手に想像してくれてるみたいだけど、ぜんっぜん違う(笑)
残念ながら、俺は見たとおりの人間だ。
愛と性欲は、そりゃセットになってるのが一番いいが、俺は、誰にでも愛が生じる人間だから、いつもそれは結局セットになっている。
さらに木ノ葉の仲間と来れば、もう、かなり愛しちゃってる。
ほら、俺、セックスも真面目でしょ?

だから、ゲンマに「好きだ」って言われれば、そういや俺も好きだなって思うから、事はスムーズに運ぶ。
場所はふつーのホテル。
急にこういう事になったから仕方ないよね。
  「アンタ、ナルトとどうかなってんだと思ってたよ」
ゲンマが俺に口付けて、その合間に早口で言う。
  「ナルト?」
なんでそんなこと、言うんだろ?
今、ここには、俺とゲンマしかいないし、なんでいない人間の話なんてするのか・・・
  「付き合ってるよ。でも、それがどうかした?」
ゲンマは目を見開くと、動きを中断した。
布越しに触れていた性器同士にも間隙ができ、熱が逃げる。
  「そういう人だったんすか・・・・?」
またはじまった・・・・
だから、そういう人間だからっ!!!
  「どういう人を想像してたかは知らないけど、こういう人だよ」
俺は、ゲンマを押しのけて、立ち上がろうとした。唖然としていたゲンマだが、あわてて俺の肩に手をかける。
  「ちょっと待って」
  「俺のこと、好きなんでしょ?俺もアンタの事好きだよ」
  「あ、や・・・」
  「だからこうなってるのに、なんでそういう反応なんだよ?」
  「いや・・・でも、ナルトが・・・」
  「今は関係ないよね?」
  「・・・・・わるい・・・」
ゲンマの手から力が抜ける。
結局、それから盛り下がって、仕事の話を駄弁って帰った・・・・・だけ。





テンゾウが好きだって言うから、そういや俺も好きだなあと思って、あいつの部屋についていった。
見事に殺風景な部屋に通されて、俺はベッドにボスンと座った。
  「結構、いい感じでしょ?」
テンゾウはそう言ったが、それがこの殺風景な景色についてだとは思わず、
  「そうだね」
と、ここら辺の街について感想を返した。
  「インテリアの雑誌を参考にしました」
笑ってる。
そうか、部屋の事かと気づいて「ああ」と生返事。
  「いやあ、先輩が僕の部屋に来てくださるなんて、生きてればイイコトあるもんですね」
すっごい変な感想じゃない?
  「なに言ってんだよ。いつでも来るよ、俺」
テンゾウは唖然と俺を見て、
  「え?え?そうなんですか?」
とか言ってる。
  「はあ?そうだよ。今日だって来てるじゃない」
  「いや、そうですけど」
  「好きなんでしょ、俺のこと」
  「はいっ、それはもちろんっ!!」
  「俺も好きだって言ってる」
その会話だけで、テンゾウは失神しそうに震えて(武者震いだった(笑))、忍者とは思えない動きで、俺ににじり寄る。
  「もう、死んでもいい」
とか、アホ丸出しのセリフと共に。
  「共同作業の前に死なないでよ」
きょ、きょうどうさぎょおおおおお・・・・とか呻いて、テンゾウが俺にのし掛かってきた。
何かのスイッチが入ったらしく、テンゾウは自分のペースになっている。
俺の身体をやんわり、でもしっかり抑えてキスしてきた。
なんかおかしくなってクスクス笑うと、ちょっと憮然としたが、すぐに立ち直って俺の唇を舐めた。
でも、とテンゾウが言う。
  「ホントはダメもとでした」
  「ふうん、そうなの」
手が俺の背に回ってくる。
  「だって先輩、」
  「なに?」
  「ナルトと付き合っているとばかり」
・・・・・・・・
あ~あ・・・・また、これだ。
今まで、何人もの人と、同じ展開・・・・・
  「そうだね、そういや、俺、ナルトとできてるんだった」
俺は大仰な溜め息とともに、テンゾウを押しのけて立ち上がる。
  「やっぱり・・・・え?てか、先輩っ!!」
テンゾウが慌てて、でも、戸惑いながら立ち上がる。
が、俺は、大股に部屋を出ると、ヤツの鼻先でドアを閉めた。

だんだん、俺にもわかってきた。
他人が俺にどういう印象を持とうが、俺自身には関係ないって思っていたが、実は凄く影響があるって事。
他人が勝手に俺を決めてしまうから、俺はそれから全く自由になれないってこと。





俺はベッドの上で寝返りをうつ。
で、以上は妄想だ。
なぜ妄想?
・・・・そりゃ、俺にだって、オカズは必要だよね。
べつにナルトじゃオカズにならないって言うんじゃない。
・・・・・
後ろめたいんだ。
俺たちが、現在において、未来においてどうなろうと、「先生と生徒」だった事実は動かない。
誰が何と言おうと、俺はどうしてもそれからは自由になれない・・・・

でも、かといって妄想してもこの通り。
今度は、ナルトとの関係が俺を自由にしない。
妄想の中でさえ。
エロい展開にしようとしてどんなに頑張っても、いきなり行為に突入できず、へんな前振りに終始して、結果、「ナルトと付き合ってるんですよね」というセリフに興醒めして終わる。
好きなんだ、本当に、ナルトが。

  「先生」

奥でドアの開く音がする。
ああ、帰って来ちゃった。
また、セルフし損なった・・・・
俺だって、恥ずかしいんだよ、抱かれていきなり濃いヤツ出すの。
くだらない悩みだけど、どうしようもない。
寝室のドアが開いてナルトが顔を出す。

  「寝てたってば?」
  「ああ」
  「コーヒー飲む?」

そうだった。
最近ナルトはコーヒーを入れるのに凝っている。
大人っぽいイメージを与えるモノに興味があるらしい。
俺が悩むポイントで、ナルトもちょとはもがいているんだろうか・・・・

居間でナルトの入れてくれたコーヒーを飲む。
ナルトは日の光を浴びて、俺の真向かいでコーヒーを飲んでいる。
俺が不躾にナルトを見ていたらしく、

  「美味しくない?」

と聞いてきた。

  「いや、上手いよ」

俺は大人の余裕でニッコリ笑い、

  「ありがとう」

と言った。
ナルトの頬が染まる。
それを見て、俺は猛烈に後ろめたくなった。
そのときは必死だが、あとから思い返せば陳腐な妄想が。
目の前のナルトがピュアすぎて、俺は、恥ずかしくて死にそうな気分になる。
俺の動揺をよそに、ナルトは次の任務の話をしていた。
俺の生返事に、

  「どうしたってば、先生?」

と、ナルトが気遣うように笑う。俺が返事できないでいると、

  「ああ、心配スンナってば」

と言って、ああ、笑顔が眩しい・・・・

  「俺は死なねえし」

物凄い罪悪感・・・・・

  「でも、万が一があるカモ、だから、」

・・・・・え?

  「寝室に戻ろ?先生」
  「は?」
  「俺、死んじゃったら、もう先生に会えないでしょ?だから、今の内に先生をたっぷり味わいたいってばよ」

お約束で、俺がたしなめるとでも思ったのか、ナルトは自分の頭を手で覆いながら俺を見た。
でも、俺は可笑しくて笑う。
ナルトも必死。
俺のことが好きだから、ナルトもエッチだ。

  「そうだね」

俺はカップを置いて立ち上がる。

  「俺も、味わいたい」
  「せ、先生・・・」
  「今」

ナルトが押し黙って、立ち上がる。
あ、ちょっとキュッときた(笑)。
後ろめたいのも、恥ずかしいのも、全部、好きだからって結論でいいや。





  「先生・・・」

ベッドに両腕をついて、ナルトは俺を見下ろしている。

  「今の先生を独り占めにするって事はさ、」
  「ん?」
  「今までの先生を全部独り占めにしてるってことだよな」
  「またあれか、俺の若いときの話?」
  「今だって若いじゃん」
  「じゃあ、なに?」
  「それだけ、好きって事」

そう怒ったように言い切ると、ナルトはまた腰を動かしはじめた。

  「あっ・・・んんっ・・・」

揺り動かされて、甘い痺れが腰を上がってくる。

  「気持ちいい?」

ありふれたセリフも、俺を気遣う優しい言葉。
俺の為に動くナルトが愛おしい。

  「ナルト」
  「なに?」
  「俺の頭の中、もう、お前しかいないよ」

俺は、上手な嘘つきみたいに、いくつかのパーツを隠して、本当の事を言う。
先生と教え子だけど、ゲンマやテンゾウも出てきたけど、しかも、オカズの妄想の中だけど、でも、やっぱり答えは「お前が好き」で、正解だ。

ナルトのモノがビクンと大きくなって、俺はまた喘ぐ。
俺の肩口に顔を埋めて

  「この幸せ、すごく気持ちいい」

とつぶやいた率直なナルトを、俺は強く抱きしめた。


2011/12/21