マーブル 1


ただ、だらだら続く、誕生会の実況中継になってしまいました。
そんな感じでお読みくださいませ。
また、最初にアップしたものを、ナルト視点に書き換えました。





「隊長の誕生日って8月10日なんだって?」
会議室の片隅で、もう四度も報告書を書き直していた隊長に声をかけた。
「ん?ああ、そうだよ。でも、正確かどうかはわからない」
隊長はそう言いながら、クソと四枚目の書き直しもクシャクシャにして、排紙用のラックに投げつけてる。
ま、この里にも省エネとリサイクルの波は押し寄せているってことだ。
「正確じゃないって・・・複雑な過去ってやつ?」
「そうそう」
なんだよ、そのいい加減な返事!!
って、今度は、五枚目かい。リサイクルの前に、そう簡単に間違えるなってばよ!!
「なんで何回も書き直してるってば?」
「・・・うん、綱手様がね、僕の書き方、くどいって・・・」
「ああ、」
わかるってばよ、と続けようとした俺は、隊長の顔の下に光源を見て、あわてて言葉を飲み込んだ。
たしかに、隊長はくどい。
カカシ先生とは違う、理屈っぽさっていうか、回りくどい感じというか、そういうのがある・・・な・・・
「で?なんの用だい?」
「え、ああ・・・誕生日だよ、そう、誕生日」
「うん?」
生返事だな。
「一週間後だよね」
「そうだな」
「んで、ささやかながら、7班でパーティーでも開催しようかなあと。いかがでしょうか?」
途端にヤマト隊長の表情が変わる。キッと俺を見上げ、
「今、7班って言った?」
と、もの凄く早口で淀みなく言い放ちやがった。
「え、・・・あ、ああ」
「カ、カ、カカシさんも?」
・・・・・これか。
こっちは噛みまくりだな。
「いや、カカシ先生は、仕事が入ってるから来れないってばよ」
途端にヤマトは隊長は興味をなくした顔をして、
「あ~、えっと、無理しなくていいよ、気持ちだけいただいておくからさ」
などどほざきやがる。
「・・・失礼だってばよ」
「合理的と言ってくれ」
「割り切りすぎだよ!」
隊長は、書類に顔を近づけて、一生懸命書き込みながら、
「だって、カカシさんがいないんじゃ、僕がつまらないんだよ、主役の僕が、さ」
と、隊長じゃなかったら俺の何かが発動しそうなことを付け加える。
「わがまますぎるってば。先生の仕事に穴をあけろって言うのか?」
「おっと、そんなことまで言ってないよ、ボク」
なにがボクだ、本当に世話が焼ける・・・・
「とにかく!!やるってばよ」
「ええ~~・・・・」
「ええ~じゃねえってば!!俺がどやされんだ!」
「え?」
「な、なんでもねえ。とにかく、やるからな、隊長!!」
「・・・・わかったよ」
ほんっとガキみたいなんだから。
俺はブツクサ言いながら、会議室を後にする。
任務時は、もの凄く頼れる隊長だが、こと、カカシ先生の事となると、途端に、精神年齢が下がる。相対的にエロ指数は上がるみたいだが。
「やっぱりそこは反比例するのね」
と、俺から報告を受けたサクラちゃんが、頷きながら言った。
「とにかく、誘い出すことには成功したから」
「わかった」
サクラちゃんはクククとほくそ笑み、
「私たちって、本当に上司孝行(じょうしこうこう)よね~」
と言った。
上司孝行?人の名前みたいだな。っていうか、そんな言葉、あるのか?
まあ、言いたいことはわかるけど・・・。
「さ、そうと決まれば、あとは各々(おのおの)、準備して待つだけね」
「オーケー」
俺はそう言って疲れたように笑った。
実際、うんざりしていた。





「ちょっと、もう時間じゃない!!」
げえ、もう帰って来た。ケーキを受け取りに行ったんだよね、サクラちゃん。
ここはカカシ先生んち。広いから、という単純な理由で、隊長の「お誕生会」は、カカシ先生の家でおこなわれることになっていた。もちろん、カカシ先生からは使用許可をとってある。
んで、あまりに殺風景なのもなんだから、と、100鈞で購入した簡素な飾り付けをなんとかそれらしく飾っているところへ、サクラちゃんが怒鳴った、という次第。
「あ、もう6時だね」
サイが、脚立から降りながら同意した。
「ナルト!!隊長、呼んで来なきゃ。あんなに6時って言ったのに!!先輩も先輩なら、後輩も後輩だよね!!」
「ちょっ・・・もう来てるよ」
と、俺は、飾り付けをしている隊長を顎で指し示す。
そこには、俺らの100鈞とは明らかに一線を画した、手作りの折り紙製の飾りを手にした隊長が、必死で、持たざるセンスを発揮していた。
「あ・・・もういらしてたんですか?」
サクラちゃんが、ばつが悪いのを押し隠して、ちょっとイラッとした声を出す。が、そんなことに頓着するような隊長じゃない。
「うん。ま、主賓自ら飾り付けっていうのもどうかと思ったけどね。ま、けっして暇というわけじゃないが、
せっかくだし、僕もはじまる前から参加できたらな、っていう気持ちもあるんだよね~。
一体感ていうかさ、僕の誕生日で、僕が言うのもなんだけどね」
「サイ、これ、冷蔵庫に入れといて」
サクラちゃん、ぜんぜん聞いてないし。やっぱ、隊長ってくどいんだよなあ。
「じゃあ、予定通り、始めましょうよ!みんなそろってることだし」
サクラちゃんがそういって、みんなを促すと、
「ちょっと待った」
と、隊長がそれを止める。
「どうかしたってば?」
俺が聞くと、
「や・・・すんなりはじまっちゃうの?これ」
「は?」
「こういうのってさ、ほら、アレじゃない?」
「アレってなんです?」>サイ
冷静なサイの一瞥と言葉に、ぐっと詰まる隊長だったが、置かれた食器の数が、人数(つまりサクラちゃん、俺、サイ、隊長の4人ね)より一揃い多いのに気づくと、大きく満足げに頷いて、
「いやいや・・・・いい、僕の間違いだった!!」
と笑顔で席に着いた。
完全になんか勘違いしたな・・・・
「じゃあ、始めましょう」
サクラちゃんがケーキを出してテーブルに置いた。
「仕方ない。歌でも歌いますか」
というサイに、また隊長がこだわる。
「仕方ないってなんだよ?」
「あ・・・すみません」
「素直に謝られても、ねえ」
ああ・・・本当にうざいってば・・・
こうして、世にも恐ろしいオンチなハッピーバースデイを皮切りに、俺らの心にトラウマと言う名の記念として残るようなおどろおどろしい誕生会が始まった・・・・



2009.08.09.