妄想年始 4



[ナルトサイド]

俺が名乗りをあげたのは、実は仕方なくだった。
下心なんて・・・それはあるけど、先生とどうかなるなんて、想像もできない。
俺が一方的に好きなだけだ。
ただ、カカシ先生がその任務につくってことは、隊長もこっそり同行する可能性は否定できないからという・・・つまり、隊長は分身ででも、カカシ先生と一緒に行くかもしれないという、俺自身のゲスな想像が俺を動かす。
そう。
俺は知ってるんだ。

・・・・先生と隊長の関係を。


ああいうのって、気づかないと気づかないけど、気づけば、すぐわかる。
俺は先生の事を好きだから、先生の色々に隊長の色々が連動していることに、間もなく気づいた。
ただ、それは、どうしたって「想像」の範囲を超えないから、気がついても、ずっと迷いの中にいた。そうかもしれないし、違うかもしれない、と。
黙って時間が過ぎるのを待てば、なんということはない事かもしれない。
でもだからこそ、こういう場面では、その可能性をつぶしたくて、そういうことをないことにしたくて、俺は先生に同行することにした。

自然な流れで、結果、隊長も同行することになって。
俺の不安は、ちょっと膨らむ。
三人が一緒に行って、まさか、変な展開にはならないだろうけど。
でも、俺の不安はどんどん大きくなって、任務の道中、些細な目配せすら許せない、見過ごせない気分になっていた。



1日目はすでに遅く、親書は明日でいい・・・・というか、届きさえすれば、期日はどうでもいいものだった。
火影の労りが9割と知って、豪奢な旅館の中、俺はちょっとすまない気持ちになる。
不純な動機の自分が情けない。
  「雪だよ」
先生が外を見て言う。
三人、小綺麗な畳敷きの部屋でくつろいでいる体だったが、俺はなんだか落ち着かない。
場違いな感じもさることながら、先生と一緒にいられるという気持ちが、こんなに余所行きっぽい感じになるなんて思いもしなかった。
こんな空気になるなら、いっそ来なければよかったよ。
  「意外と寒くないですね」
隊長が先生と並んで窓の外を見た。俺はただその背を見つめる。
折れそうな俺の心に、その景色は遠く見える。
付け入る隙など全くない、もう完成している眺め・・・・
  「ナルト、温泉行く?」
振り返って隊長が言う。
  「う・・・ああ、行く」
本当はどうでもよかったが、いつも通りの俺じゃないとダメな気がして、いつもの俺ならこう言うだろうという、おおよそ俺らしくない思考で行動する。
  「先輩は?」
  「俺はあとでいい」
  「じゃあ、行くよ、ナルト」
  「ああ」
長い通路を行くと、外に出ているような所もあって、そういうところじゃ本当に雪に降られる。




2012.12.31.