妄想年始 3
もちろん動揺して、一緒に行きたいと心から願ったが、上忍でも頭数個分飛びぬけたクラス違いの人間が二人がかりの任務では決して無い。
動揺は激しさを増し、そんなタイミングで「俺も行く!!」と言ったオレンジは、もう、本当にどうしてくれようかというほど小憎らしく、先輩の周りをユラユラと動いているのも恨めしい。
「カカシ先生が心配だからな、俺がついて行ってやるよ(笑)」
とかなんとか言っちゃって、周りには冗談に聞こえるように、でも実は本心っていう稚拙な手は僕はお見通しだけどね。狙いが見え見えであざとい。それなのに、初心な、何も感じてない先輩が、
「大掃除が嫌なだけだろ?」
とか言ってのんびり応じている。
違いますよ!!狙いはあなたです。
すかさず僕が、
「ナルトが行くなら、僕もって事ですかね」
と割り込んだが、若干・・・・いやかなり不自然な感じであったのは否めない。でも仕方ない。先輩を毒牙から守るには、僕のプライドはどうでもいい。
決心のわりには、冷や汗が出そうな物凄く長く感じる妙な間が開いたが、そこはおおらかなO型気質の先輩が、
「ああ、ありがとう、それは頼もしいね(笑)」
と冗談に紛らしてくれたので、その場は上手く収まった。
先輩に感謝して欲しいね、ナルト!
・・・・・・・・・・・・・・・・・
「なんだよ、感謝すんのはアンタだろ?っいうか、妄想の主体は先生なんだから、隊長の偏りまくった感想なんかいらねえよ」
「うるせえぞ、ナルト。カカシがいい味出して、かわいいじゃん」
「だろう?ツンケン僕をいじめる印象が強いから、たまに素になってるときってクルよね」
だまれ!同類!!
・・・・・・・・・・・・・・・・・
と言うわけで、結局、ナルト付きで、先輩との任務に赴くことになった。
「隊長はべつについてこなくってもいいのに」
「それはこっちのセリフだ。君が行くなんて言い出すから、僕まで行くはめになったんだよ。この程度の任務にゾロゾロとさ」
「じゃあ、逆に隊長が一人で行けば?」
「逆にってなんの逆なんだ?」
ナルトとのくだらない会話で、道中の時間がつぶれ、先輩とのんびり楽しむ時間も無かった[任務だけど]。もう、色々と腹が立つ。
「ついたね」
「ああ、ここですか。じゃあ、さっそく僕が・・・」
四柱家の術を組もうとしたら、目の前にすでに大きな建物がある。
「あ・・・なんです?ここ」
「ふふふ・・・年末に気分だけもってことらしいよ」
「は?」
「火影のお駄賃だ」
「な・・・なるほど」
そこは、その土地では結構有名な温泉旅館らしい。
この誰もが行きたくない任務に名乗りを上げた時点で、このご褒美がもれなくついていたと。
さすがは火影。
でもこのとき、一人でもOKの任務に3人行くことになろうとは、火影もわからなかったのでは?という「もしかしたら」に、僕は気づいていなくて、今では反省している。
ああ、それにしても、3人!!
先輩と二人だったら、どんなに最高な年末だったろう!!
そりゃあ、なんにもないよ!
なにも出来ないよ!!
別に付き合ってるわけでもないし、互いの愛を確かめ合ったわけでもないけどさ!!
シチュで動く何かだってあるんじゃないか?
状況が整えば、スムーズに行くってことも、この広い世の中には、ぜ
「隊長、早く入るってばよ!」
あ、ああ、そうだった。
残念な要素も満載だが、でもそれ以上に、単純に嬉しい!!!
僕は、二人の後からそそくさと「愛の劇場」に入場した。
・・・・・・・・・
「ちょっと・・・いやかなりひねくれてないか?」
同類のサスケですら隊長の「姿勢」に疑問を呈する。
「うっ・・・そうだね。でも、」
「しかもなげえし。妄想に関係あんの?」
「あるよっ!!ああ、ここにサクラがいてくれたらなあ~」
いてくれたら何だってば?
「妄想のなんたるかを改めてレクチャーして、僕を援護してくれるよ」
そうかなあ・・・・思いっきりダメだしされるよ、きっと(笑)
「ナルトとコラボなんだから、ナルト視点からもやれば?」とサスケ。
「いや、ナルトにはナルトの出番が・・・」
「いいよ。俺も、その設定でやるよ」
「や、ナルト、君はさ」
「大丈夫だよ、隊長。かなりいいポジションにするから」
「お?そう?」
俺なりの自虐を披露してやるよ。
2011/12/31