鳴門の案山子総受文章サイト
「サスケの妄想でいくって言ってるけどさ」
俺は、さっそく会議に入る。こういう事は体裁が大事だ。一応、「会議」だから、会議の体裁がないといけない。
「俺には俺の妄想があるんだよね」
言い切った、俺。
そうだよ。
どうして妄想まで、他人にあわせなくちゃならない?妄想は、本人の頭の中で花開くから「妄想」だろ?
「でも、ナルト、サクラも言ってたよね。妄想っていっても共同作業的なものもあるし、それを広げるってこともあるだろう?」
まあ、そうだ。実際、俺と隊長で、コラボしたしね(笑)>「妄想限界」参照
「そりゃわかるけど、年始年末だなんて、その設定は俺は嫌だ」
「てめえ、ナルト!!俺の妄想にケチつける気か?」
サスケが俺の胸ぐらを掴む。でも、俺だって負けられない。
「妄想の共有っていうのは、コンセプトとしてはわかるよ。でも・・・・」
「何だよ!」
「コタツで紅白で初詣って・・・・・」
「だからなに!」
「なんかやだ」
俺が防戦一方の抵抗を続けていると、やっと隊長が割ってはいる。
「わかるよ、ナルト、くすぐったいよな」
・・・・・・そういう解られ方、なんか嫌だ。
「はあ?くすぐったいってなんだよ?」とサスケ。
「地味だろ、なんとなく」
「地味だと?」
サスケがいきり立つが、まあ、そういう感じも否めない。
そりゃ「日常のふとした瞬間」っていうのも堂々ランクインだろうけどさ、ここまできちゃった会議のネタとしては、弱いと思うんだよね。コタツとか、初詣って、妄想っていうより、普通に有りそうだし、実現可能なレベルだろ?まあ、その妄想のレベルでアクロバットというのもありだろうけど。
「まあ、そうだね、僕たちほどの使い手にはインパクトが弱い」
「・・・・・使い手って・・・・・なんの?」
「妄想でしょ?」
「そうか・・・・妄想の使い手か」
納得すんなよサスケ・・・・
「というわけで、僕にいい考えがあるんだ」
いい考え?
「なんだよ、ヤマト」
「ナルトもその設定に取り込んでしまえばいいんだ」
どういうこと?
「つまりね、僕の妄想の世界にナルトをご招待、っていうわけ」
どう言われたって、イヤなモノはイヤだよ、俺。
隊長だって、サスケと似たり寄ったりに違いないもん。
もう、ぶっちゃけるけどさ、クリスマスに先生との激しい妄想を繰り広げた俺としては、すぐ「使える」妄想に固執しているんだ、本当のところはね。サスケみたいに、グルグル悶々と、「愛憎に苦しむ」ような禅問答の延長で、そのシーンはサクッとなんて、全然使えないし、俺はイケないんだよ・・・・・
「まあ、そう拒否らずに、まず聞けよ」
なに、その自信たっぷりな顔!!
「大丈夫なのか?ヤマト」
「ああ。前のサイトでさ、3章くらいまで書きかけて未完のやつがあってね」
なんだよ、要するに、リサイクルか。呆れたな。
「なんとでも言ってくれ。それが心残りで、ね」
「モノは残ってんのか?」と、サスケ。
「HDが壊れて消えたよ、綺麗さっぱり(笑)。でも、設定は覚えてるからな」
つか、HDとか、消えたとか何の話?
「まずは、ナルト。先輩をサスケが初詣に連れて行く前に、僕達で、またコラボしないか?」
「んなこと言ったって、俺は、隊長の妄想なんて知らないし・・・」
「大丈夫。妄想の中でも、僕の言うとおりにしていれば、問題ないよ」
「す、すげえな、ヤマト!!」
サスケの興奮した声が耳元で響いて、俺は顔をしかめる。
いやだよ、もう!!
初詣の前、だなんて、地味に拍車が掛かってるじゃないか!!
延々、マニアックな「ポイント」を責められても嫌だし、絶対激しく苦痛に決まってる。
「さ、いくよ」
あああ・・・・・ということで、隊長が、一番手、です・・・・・
・・・・・・・・・・・・・・・・・・・
全くこんな年末に、とテンゾウは何度も頭の中でそのフレーズを繰り返したが、そんなこと、誰においても等しい感想だと思う程度の我慢はできたので、結局、黙っていた。
先頭を行くのはナルト、それに続くのがカカシ、そしてラストは自分。
雪の積もった林道を、元気に駆け上がるオレンジ色の髪に、本当は、自分の我慢に何の根拠も無いことをジワジワと思い知る。
「年末に時間だけかかる任務にうんざり」というのは、誰の感想でもあろうが、正直、自分の脱力はそこから来ているのではないと認識していたからだ。
「ナルト、か」
そう、ナルトさえいなければ、うんざりの体を装って、我慢も易々だったはずなのだ。
年末の大掃除に入ろうかというタイミングで割り込んできた、「親書」の配達のお使い。
実は、キレイ好きの性格もあって、みんながブーたれるほど年末の大掃除は嫌いじゃないテンゾウにとって、そんな任務など眼中にはなかったが、皆、雑用でなんとなく気ぜわしく、手が離せない状況で「俺が行きます」とあっさり言い放ったのがカカシだった。
『え?』
もちろん動揺して、一緒に行きたいと心から願ったが、上忍でも頭数個分飛びぬけたクラス違いの人間が二人がかりの任務では決して無い。
動揺は激しさを増し、そんなタイミングで「俺も行く!!」と言ったオレンジは、もう、本当にどうしてくれようかというほど小憎らしく、
・・・・・・・・・・・・・・・・・・・
「ちょっと待て!!」
「なんだい、ナルト」
「あのねえ、妄想の自由は保障するよ、それは大原則だけど、これはないんじゃね?」
「どうして?」
ああああああ、もうっ!!!
「あのさ、俺と隊長のコラボでしょ?俺も入ってるんだよね?」
「もちろん」
はあああ・・・・
「思いっきり、露骨に邪魔にされてるんですけど」
「そこは僕の妄想だから」