鳴門の案山子総受文章サイト
重粒子モードのあと、俺はこの術の「本当」を思い知る。
しばしば夜中に目を覚まし、俺は自分の両手を交互に見、握りしめる。
包帯だらけの生かされた右手と、親からもらった左手を。
近くなったら、離れればいい。離れすぎたら、また一歩、近づけばいい。
そんなもの、物質社会の当たり前で、俺は、そうやって多くの人間の間を一歩ずつ、歩いてきた。
でも、心が一度知ってしまえば、この世界は、もう俯瞰でしか感じられない。
本当に生きていると実感出来るのは、もう、あの瞬間以上はない。
あと数分で死ぬと知る、あの瞬間しか。