熟れる 9


静かにドアが開いた。

「おはようございます」

病院の職員が入ってきて、カーテンを開ける。まぶしい朝日に目を細め、

「おはよう」

とナルトが返す。いつもの繰り返しが、また始まった。

微かに残る腰の重さに、ナルトはじっと天井を見る。

凄い夢だった。

 

熱を先生の奥に吐き出して、それでも、先生の長い手足が無防備に投げ出されているのを見ると、あっという間に血が集まる。横たわる先生に、すぐに自分の欲望が膨れあがり、そんな自分に更に興奮する。俺の強い抱擁に、気圧されながらも、また受け入れようと俺に縋る先生。その喉の奥に俺の名を飲み込んで、でも時々、零れ落ちて、俺は、やっと悟るんだ・・・・

 

まだ、半分夢の中にいるような感じがする。

腕は、先生の身体を覚えていて、皮膚はその体温を覚えている。

抱けば抱くほど、満足するどころか、自分が何かの途上にいると、強く感じる。

それが、生きているということなんだろう。

二人の関係に、落としどころなんかないと、思いっきり貪ったあとに、静かに気づくんだ。

疲れたら手を伸ばし、倒れそうになったら、もっと遠くに手を伸ばす。

そこに先生がいたら、ただ抱きしめるだけ。

もっと遠くにいたら、それでも求めて、俺は人生の渇望に耐えるだけ。

 

いつの間にか、まどろみ、窓を叩く音に目が覚める。

見ると、窓から、カカシが顔を覗かせていた。

夢の相手ではあるが、やっぱり夢のカカシとは空気が違う。どこまでも、はっきりと現実だ。

カカシが背嚢を背負っているのが見える。

ちょっと長い任務の様だ。出る前に、ナルトに会いに来てくれたようだ。

『しっかり治せよ』

と言いたげに、いや、多分そう言いながら、俺の方を指さした。

俺は親指を立てて、大きくうなずいた。

生きるって大変だってばよ、そう思いながら、でも、俺の笑顔に目を細める先生は、瞬身で消えた。

俺は、忍者の目を持っているのに、

「先生・・・」

輝く朝日が先生の銀髪をその光で縁取った残像が、いつまでも網膜から消えなかった。



終わり

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脱いでいるのに着てたシーンがあったようなwww 

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