月影で 3




ナルトの馬鹿笑いに怒り心頭の僕だったが、目だけはカカシ先輩の寝巻き姿にしっかり注がれていた。
掛け布団から上体を出して、俺を見上げる体勢だ。
少しゆるく開いた胸元が、上からストレートに見える。

  『あ・・なんか乳首みえそ・・』

と、僕が、ニジリッと身体を動かしたら、ナルトと目が合った。
ああ、このときの僕は、一瞬ですべてを悟ってしまった。

  『やべー・・・こいつ、超絶攻だ・・・』

無邪気に馬鹿笑いしながら、その手はさり気にカカシ先輩の腰に回されている。
そして、明らかに、敵を見るような殺気を込めて、僕を見ていた。
僕の裸踊りの話に笑っているように見せて、その実、僕の、今のカカシ先輩に対するポジションを笑っていたのだ。
ポジション・・・今のそれは、全く悔しいが、ナルトが自信を持っている通り、見たままがそうだ。
暖かい褥にこんな時間、先輩と二人で一緒に寝ているコイツと、部屋に突っ立つ、まるでデバガメのような僕・・・・
ナルトの手に、さりげなく力がこもったのを、その微妙な筋肉の動きに見る。
  「さ、もう寝るってばよ」
ただ、本当に寝る、つまり睡眠するだけのクセして、あてつけるように、僕を見る。
かすかに散った火花に、先輩も「?」と、僕とナルトを見る。
しかし、天然総受けがデフォルトの先輩には、とうていわからない、♂同士の戦いだ。
もちろん、受けて勃・・立つ。
僕もナルトだけにわかるように殺気を込めて言う。
  「全くだ、早く寝たほうがいいな」
思いがけない僕の同意に、ナルトの視線がきつくなる。
ナルトの不審げなそれを受け止めて、僕はゆっくり続けた。
  「・・・・成長期のガキは、な」
シュシュッ!!と、数枚の手裏剣が僕の背後を狙って大きく湾曲して飛ぶ。
もちろん、僕は避けもしない。
僕の背は、木遁の術で手裏剣を受け止めた。
ストトトン・・・といい音がして、なかなかやるな、こいつ。
  「な・・・なにしてんだよ、ナルト?!!」
先輩がびっくりして、ナルトを見る。
ついで、僕を見た先輩は、僕の表情に驚いて(殺気放出中です)、ナルトを部屋の奥に突き飛ばした。
そして、ナルトをかばって、僕の前に立ちはだかったのだ。
  「テンゾウ、なんだ、貴様」
気づくと、僕の喉は、あっさり、先輩のクナイに狙われていた。
  「ナルトになんの用だ?」
・・・・ああ、なに、この展開・・・
先輩に守られて、ナルトが爆笑する勢いでこっちを見ている。
ナルトに用なんかないですよ、僕はあなたに・・・・
・・・う、近い。
先輩の身体が僕にくっつきそうだ。
ああ~いい匂いがする。
くっそ~、まさか風呂まで一緒に入ったなんて言わないですよね!!?
ん?
おお、僕を睨んでる。
なんて、いい男なんだ。
もう、大好き!!
受けのクセして、どんだけかっこいいんですか、あなたは!!
  「まさかお前、俺を裏切るつもりじゃないだろうな」
ああ、声までいい!!その声で喘ぐんですか?!!
でも、先輩、深読みしすぎです。
  「違いますよ。明日の訓練(もう今日ですが)に備えて、ナルトくんが弛んでないか奇襲をかけただけです」
『くん』に反応して、ナルトの眉がピクっと動いた。
  「じゃ、なんで俺んちに来るんだ?」
  「え??」
  「たまたま、ナルトが家に来てたけど」
うっ・・・どうせナルトだって、たまたまじゃないだろう。
  「そのくらい察知できます」
どうでもいい部分は、無理やり屁理屈で終わらせるに限る。
  「もう遅いから、僕も泊まります」
そして、重要なこともさり気に言って、相手に思考させないに限る。
  「え?あ、ああ・・」
ほらみろ。
これでカカシ先輩はあっさりけりがついた。
  「はあ?なに言ってんだよ、カカシ先生!!俺、いやだよ!!」
  「ナルト、ヤマトは、お前の修行に付き合ってくれるんだよ?」
  「付き合うのは修行だけでいいってば」
  「そんな事言うなよ、ナルトく~ん」
僕はさっさと服を脱ぐと、布団にもぐりこんだ。
  「『くん』は止めろって・・・・てか、早っ!!」
  「テンゾウ、さすがに無理があるでしょうが」
布団に男三人は確かに辛い。しかも、先輩と僕は180センチ以上あるときた。
でも、それは普通に寝ようとするからだろ?
  「大丈夫です、先輩・・・ほら」
僕は、先輩の手を引いて、僕の上に先輩を乗せた。
か・・軽っ・・・・えっと、たしか67.5キロ・・・細いっ・・
  「は?このまま寝んの?」
  「もちろんです」
おお!!
今の色々で、先輩の胸元見えるよ~!!
ああ、でもやっぱ乳首は見えない。
雑誌の新聞広告みたいでイライラする・・・
  「お前、もしかして・・・」
先輩が、やっと僕の邪さに気づいてきた・・かな。
  「目的、俺?!
  「正解です」
  「す・・っごい余裕だな、お前」
僕の上で先輩が目を丸くしている。
ああ、先輩の股間の色々が僕の上に乗っている・・・・
  「余裕とかの問題じゃないってば!!カカシ先生!!」
  「え・・あ、ああ、そうだな・・」
くそぉ、やばい流れだ。
先輩、ホントにこの子に弱いんだな・・・
でも、「触れなば落ちん」っていうのは先輩のためにある言葉だ。
生まれながらの受体質、本人はどう思っているのかはわからないが、存在そのものが『誘って』いる。
以前、一緒に諜報任務についた金髪の特別上忍が言ってた。
  特上 『なんか、あの人、そういう事と縁遠いトコにいる感じなんだけど、』
  僕  『はい?』
  特上 『頼めば、うんって言いそうだよな(笑)』
  僕  『!!おお~、そうですよ!!うんうん、そういう感じだな!!』
  特上 『エッチにこだわりないっていうか』
  僕  『そう、逆にそれがストイックな感じをかもし出しているんですよね』
  特上 『でも本当は、こだわりないから、気前よく見えちゃうんだよな』
  僕  『それそれ。それですよ~、気が合いますね!!お名前、お伺いしてもいいですか?』
  特上 『それ、もう5回も言ってるぜ。不知火だって』
  僕  『す、すみません』
っていう会話。
最後の余計な会話も再現しちゃったが、ほんと、彼とはもう一度、はたけカカシを語りたいよね。
おっと、回想に浸っている場合じゃない。
僕は先輩を下ろすと立ちあがった。
  「ナルトくん、さっき言ったろう、子供はもうとっくに寝る時間だよって」
  「だから、くんはやめろってば」
ナルトもこっちに来る。
  「僕はこれからの修行についてカカシさんと話があるんだ」
  「なんだよ、その嘘」
ナルト、いい根性してるよね。
  「嘘じゃない。忍者に時間は関係ありません」
もう、こうなったらヤケクソだよ。適当チョップだ。
  「俺が、そんなことにそうだなって納得するかってばよ」
  「メチャクチャだな、テンゾウ(笑)」
よし、今だ!!!
  「メチャクチャになるくらい先輩が好きなんです」
  「あ・・・」
よっしゃーー!!
  「あなたの事が頭にいっぱいで、時間も忘れる、ナルト君まで、あなたを争う敵に見える・・・」
  「それは・・・困る・・」
  「でしょ?」
  「うん・・・」
  「だから、僕のものになってください」
  「え?・・・・あ、うん・・・」
簡単すぎる!!
逆に不安になってくるくらいだ。
と、ナルトがずいっとカカシ先輩の前に出てきた。
お。
やる気だな。
  「ヤマト隊長、ちょっと俺と二人だけで、話、するってばよ?」
  「話?僕にはないね」
うんと言わせた分、今は僕のほうが有利だ。
僕とナルトがメンチ切合っていると、先輩が間延びした声を出した。
  「もう、いいって。寝ようよ・・・・」
先輩は押入れを指差す。
  「二組あるからさ、それぞれ敷いて、ね?」
  「「・・・・・・」」
  「おやすみ・・なさ・・い」
・・・・・・・・・。
・・・・もう寝てる。
  「オーケーまで取り付けたのに・・・・」
  「俺だって、アンタが来るまでは、いい感じだったんだ」
  「ただ寝ているだけだろ?」
  「それからの計画があったんだ。繊細な計画だったのに」
  「なにが、計画だ。この恨みは、明日からの(もう今日だが)修行で晴らしてやる」
  「さっきからいちいちカッコがうぜえよ」
  「ふん。いいから、早く寝ろよ」
まあいい。
宣戦布告はすんだ。
よし、明日から(もう今日だが)がんばるぞ!!
なんてったって、ずっと先輩と一緒だもんな!!
  「なに笑ってるってば、きもちわり~」
  「前向きと言ってくれ。ポジティブは君の専売特許じゃないってこと」
  「ポジティブって言わないってばよ。なんの根拠もない自信はただの妄想だってば」
  「きついな、ナルト君」
  「だから、それはやめろって!!」
なんだかな~・・和んできてしまう。
これも、先輩の人徳なんだろうな・・・・・・
お休みなさい、僕のカカシさん。
と、
  「ナルトクン」
  「しつこいってば」





2008.02.11.

テンゾウのデータが出る前ですのでご了承ください。
さすがにゲンマとの会話は書き換えました。[2008/12/07 追記]