月影で 2




佐藤さんの謎を抱えたままではあったが、気を取り直して、僕は歩き出す。
そういや、縁側のあるいい空き家が見つかったって言ってたな。
もう、それじゃあ、暗部に戻る、戻らないのレヴェルじゃない。
結婚でもしそうな勢いだよ・・・・・・
・・・・・・・
・・・・・・・
まさかな。


僕は不吉な予想を振り払って駆け出す。
別に走りたくはなかったが、カカシさんの引越し先が真逆だったので・・・夜這いするには急ぐ必要があるのだ。

・・・・え?
僕、今、夜這いっていった?
なんだよ、それかよ、僕の目的!!
この、夜も眠れないモヤモヤ感は、それかっ!!
って言うか、こんな夜中に走ってる俺って・・・
しかも、理由が夜這いって・・・
・・・・・・・
・・・・・・・
お、くだらないことを嘆いてるうちに、先輩の家だ。
ふうん・・・
かわいい家だよな。
こじんまりして、意外と少女趣味なんだろうか。
板塀の隙間から中をのぞく。
お・・・・
明かりがついている・・・
戸が開け放たれており、縁側の奥の擦りガラスの向こうに、枕元を照らすような仄かに暖かな色が映っている。
寝ているかも知れないな。

僕はしばらくそれを見ていた。
カカシ先輩の私生活に喰いこんでいるという密かな喜びと、ここに立っている以上は、徹底的に部外者であるというマゾヒスティックな快感に、僕はもう半勃ちだった。
このままここに突っ立って、疎外感を味わいながら、手を使わずに果てるというAV男優なみの落ちもありかなともじもじしていたら、信じられない音声が耳に飛び込んできた。

  「また~?」

ななななな・・・なに?
先輩の声だ。
またってなんだ、またって!!!!!
ふつーなら、何度も抱き合った挙句、また元気なのを押し付けられたときに言う言葉だよな!!?
状況設定が、「ふつー」じゃないって??
ま、たしかに、ちょっと状況限定しすぎだけど。
でも、貧困な僕の脳みそでは、それしか思いつかない。
しかも「また?」じゃない、「また~?」なのだ。
脳みそが沸騰した僕は、問答無用で、縁側に飛び乗った。
初めて会う人間の気配がする。
そいつの影分身が、いつの間にか僕を取り囲んでいた。
  「君を見るのは初めてだが、多分、」
暗部の僕の後ろが取れるわけなかろう。
指弾で十分!!
たちまち、影分身が消えうせる。
僕はかまわず、縁側の擦りガラスを開け放った。
熱気がこもった畳敷きの寝室に、布団が延べてある。
その中に、銀髪と金髪が仲良くならんでいた。
  「君がナルトか?」
金髪は、むっくり起き上がると、僕を見て不機嫌そうに言い放つ。
  「失礼だってば」
とことん、読めない人だ、カカシ先輩。
そいつ、あなたの生徒でしょうが。
僕に色目振っといて、ガキと・・・こんなガキと・・・・・
  「テ・・・ヤマト、訓練にはまだ早いよ・・・えっと、まだ2時じゃない」
僕は布団の枕元に行く。
  「なんで一緒に寝てんです?!」
  「お前に関係ないだろう?」
あ・・・逆らった。
  「おっさんの方がおかしいってばよ。不法侵入だってば」
おっさん・・・・
  「俺、訓練が楽しみで眠れなくて」
ん?・・・・
  「カカシ先生に付き合ってもらってたってば」
セックスをか?
  「暗部時代の面白い話」
へ?
  「興奮して寝れないみたいだから、付き合って起きてただけだよ」
でも、さっきの「また~?」って・・・・
  「もう、何回も話してるのに、もっと聞かせろって。もう寝ろよ、ナルト」
  「この人誰?」
  「ほら、さっきの話。三代目のまえで全裸になった奴」
  「きゃははははは・・・」
  「そんなに笑うなよ、訓練に参加してくれるんだぞ」
  「だって・・・・はははははは・・・」
・・・・・・・・
・・・・・・・・
僕の中で、訓練方針が決定した瞬間だった。
  


2008.02.03.

間違って、テンゾウとナルトを初対面にしてしまいました。