予感




すっかり暗くなった景色の中で、俺は身構えた。
不意に現れた面をつけた暗部に、俺の脳みそはフル回転する。

まだ宵の口。
小さな川の土手で、千鳥の練習をしていた俺は、その小さな雷を手に納めたまま、そいつを見た。
まだカカシほどではないが、コイツの威力は感じるだろう。
  「千鳥か?」
暗部は、カカシの技の名を口にした。
チッと千鳥が鳴く。
  「誰だ、お前?」
  「カカシ班のメンバーなのか?」
  「てめぇに関係ねーだろ?」
  「そうかな」
わずかに首を傾けてそう言った。
そのセリフが、そいつが自分自身に向けて放った言葉に聞こえたので、俺は戸惑う。
訳わかんね。
  「暗部が俺になんの用だよ?」
  「君なんかに用はない」
はあ?バカか、こいつ・・・?
面の奥から、こちらを見ているんだろうが、見事に視線は感じない。
もしかしたら、殺気すら消しているのかもしれない。
悔しいが、俺はまだまだだ・・・・・
  「あんまり先輩に負担かけるなよ」
気配を動かさず、いきなりそう言った。
  「先輩?・・・」
なにかわかりかける。
  「・・・カカシのことか?」
  「ああ」
いとも簡単に頷く。
他のことなら聞き流すこともできるが、現在、猛烈アタック中のカカシに関係あるなら、譲れない。
  「お前・・・カカシとどんな関係だ?」
すると、その面は明らかに肩を揺らしてくっくっと笑い、
  「千鳥でやられたくないからね」
  「はぁ?」
  「だから言わない」
  「てめっ・・・」
関係あるって言ってるようなもんじゃねーか!!
思わず俺の手から火花が散る。
と、暗部は俺に手を伸ばした。
その、俺を拘束するに十分な威圧・・・・・
そして、あろうことか、暗部は、バチバチうるさい俺の手を握った。
驚きで、俺は口もきけない。
すべてを解きほぐすような、暖かい手のひらだった。
俺の千鳥は、そいつの手の中で収束する・・・・・
  「理解に犠牲が必要だなんて悔しいな~」
  「アンタ、いったい・・・・」
俺が見上げると、暗部は手を離し、
  「強さの本当の意味を忘れるなよ」
と言った。
そのまま、俺に堂々と背を向けて去りかける。
  「アンタ、名前は?!」
暗部が名前なんて教えてくれると思わなかったが、ついそう呼びかけた。
ところが、暗部は立ち止まると、「ええ~っと・・?」と首をかしげたではないか。
  「??ええと?」
  「なんか、昔の戦艦の名前だったよ」
  「はぁ?」
  「武蔵?霧島?・・・なんだっけ・・(汗)」
  「昔、火の国が日本だった時の?」
  「そうそう、すごいでかいやつ」
  「戦艦大和?」
  「あ、それそれ!!たしかヤマトだ。歴史、詳しいね」
  「・・・・・」
  「里にいるときはそれ」
なんだ、この天然??!!
唖然としている俺をそのままに、ヤマトは闇に消えた。
こいつの素性を知るのに、もう数年かかることを、もちろん俺はしらなかった。



2008.03.15.

2008.03.02.に拍手アップしていたもの