明日の夕日




アンタはもう忘れているだろう。

昨日の夕焼けと、今日の夕焼けと、もっと昔の夕焼け。

その色が全部違うこと、アンタは、たぶん忘れてる。

いや、認識すらしてないかもしれないな。




でも、俺は、全部覚えてる。

色のない、アンタの髪は、とっても夕日に映えるんだ。

風の柔らかい櫛に解かされて、細いその先にまで、きれいにオレンジが乗っている。

手を伸ばして、つかみたい衝動とともに、俺は、それを全部覚えている。




  「きれいな色だな」



だからそう言われたとき、俺は凄く驚いた。

黒くてきれいだ、と言った。

  「いろんな色を取り込むから、柔らかく見えるんだな」

俺の、すべての色を跳ね返す髪とは大違い、と笑った。

伸ばした俺の手は、ただオレンジ色の風をつかみ。

アンタの眼差しは、暖色に背を向け、もう暗い東の方を見る。




また、明日、俺は今日の夕日を思い出すだろう。

記憶に、強烈な色を重ねて、俺は永遠に忘れない・・・・



2008.03.15.

2008.03.02.に拍手アップしていたもの。