夜の猫 3




テレビが消してある。
みょーにしーんとした空気。
外は真っ暗・・・のはずだが、きちんとカーテンが引かれていた。
遅刻魔のくせに、変にまめな人だ。俺なんかしばらくカーテンの存在すら忘れていた。
居間の明かりが白々しいくらい明るい。
そして、俺の身体からにぎやかに上がる湯気も、みょ~に場違いな感じだった。


隣の部屋 (一応寝室に使っている) に、布団が敷かれ、白髪の上忍が寝ている。
俺の場違いさとは裏腹に、カカシさんは、静かな夜にフィットしていた。
俺は息をつくと、頭を掠めたビールを振り払い、明かりを消した。
コタツにもぐりこむと、またため息をつく。
  「あれ、先生」
カカシさんが起き上がる気配がした。
  「あ、起こしちまいました?」
やけくそで叫ぶように言うと、ゴソゴソとカカシさんが起きてくる。
  「まだ寝てませんよ(笑)」
頭のそばに立たれて、俺も起き上がった。
見ると、いろんな色のストライプのパジャマを着ている。
準備がいいっていうか、こんなのちゃんと着込んでて、意外だとか・・・・
いろんな感情が、今までのごたごたとともに吹き上がって、俺はちょっと笑った。
大きく呼吸すると、カカシさんのいい匂いがする。
一瞬、昔付き合っていた彼女を思い出した。
  「どうしてこんなとこに寝てるんですか?」
ああ、この人、本当にウケル、マジで。
アンタ、布団までは持ってきてないよね。
  「布団はそれしか無いんです。カカシさん、お使いください」
  「それじゃ、一緒に寝ましょうよ」
  「ぶっ!!」
ななな・・・なんだ、この人。誰が、むさくるしい男と・・・むさ・・・?
・・・いや、きれいだけど。
ち、違う!!
そういうことじゃない!!
上位クラスのしかも男と、誰が一緒に寝れるかって!!
ナルトやサスケなら・・・うんっと、サクラもセーフかな(嬉)、あいつらなら大歓迎だが、この人は上忍で・・・
  「先生、湯冷めしますよ」
でも、なんだか色っぽい。
うわっ!!やめてくれ、俺の中に湧き上がる「不思議な感覚」!!
なんで、こんなおっさん (俺もだけど) に、尾てい骨、むずむずさせられなきゃならないんだ!!
しかし、叫んでいるのは心だけ。
カカシさんが俺の腕を取り、布団のほうに促す。
美しい人間に逆らえないって本当だ。
あろうことか、俺はシズシズと、布団に収まってしまったのだ。
・・・ううむ、こうなってしまった以上、じたばたしてもはじまらん。
ねてしまへ。
・・・・・・・
・・・・うお、カカシさんも入ってきた。
うわ・・・足が触れるぅぅ~・・・・
ああ・・・・なんかいい匂い・・・・・
  「先生」
背後から小さな声がする。
うげ・・・至近距離で喋るなぁ~・・・・
  「一人でいつもどうしてるんですか?」
意味わからん。
  「え?こんな感じですよ。ビールは飲みますけどね」
俺の感情は思った以上にビールにこだわっていて、自分でびっくりした。
  「そんなこと聞いてません(笑)」
じゃあ、なに?!
  「えーー・・・」
なに照れてんだよ、この人。
  「アッチのほう・・・です」
あっち?
  「エッチとか、どうしてるの?」
・・・・・・・・
・・・・・・・・
やばい。



掘られる



おかしいと思ったんだ。
オレオレ詐欺並みに、よく聞く話だよ。
迂闊だった。
一人、布団の中で悶える俺に、カカシさんは話し続ける。
  「ごめんなさい、下世話で。だって先生、ぜんぜん気づいてくれないから」
よく聞くよな。出張先で、上司が襲ってきたりとかさ。拒むと、「君の昇進にかかわるよ」とかな。パワハラだよ。俺、カカシさんにパワハラされてるよ・・・
  「ずっと気になってたんです。先生が受付にいるとそれだけで嬉しくて」
やばいよ、こんな人。ナルトとか、サスケとか、大丈夫かな・・・ああ、心配だ・・・いや、今は俺の貞操(そんなのないけど)のほうが危ないか・・・
  「子供たちのほうが敏感で、みんな応援してくれてるんですよ」
・・・・え?なんの話?
  「みんな?」
  「はい。ナルトたち」
  「げ・・・」
なにがなに?
状況を飲み込めてない俺だが、カカシさんが意を決したように、俺に向き直ったのは確認。
あ・・・もうだめだ。
力では到底かなわない。
せめて、じたばたせず、男らしく受けて立とうじゃないか!!
ナルトも応援してるってことだし・・・へ?意味わかん・・・
  「抱いてください」
  「はい、どうぞ・・・って、ええっ!!!???
ケツを中途半端に突き出した俺は絶句した。
  「あ、あんた・・・」
カカシさんは、俺の反応に、もろにビビッて、白い顔がさらに青白くなっていた。
  「ネコなの?」
カカシさんは微かに微笑んで、静かに肯く。
  「ナルトも知ってるんですか?」
  「お・・俺が先生を好きなことは・・・知ってます・・ごめんなさい
  「いやいや・・・謝らないでください・・・っと・・」
どうする、俺。
部屋はすっかり寒くなっていたが、布団の中で二人は、熱くなって対峙してた。
あろうことか、立場が逆と判明すると、俺の中に余裕が生まれてきたではないか。
さっき、あれほどまでに否定した「不思議な感覚」が、嫌じゃなくなっていた。
自分の現金さに乾杯!!



それでも、だからといって、その後すぐに二人の関係が急接近したわけでもなく・・・・
カカシさんと、俺の微妙な関係は、ナルトたちに見守られながら(・・・・・)しばらく続くのだった。



2008.01.27. アップ
2013.02.16. サルベージ



おしまい。肝心のシーンはいずれ書きます。