夜の猫 2



俺の汚いボロアパートは、一楽から歩いてすぐだった。
男同士、別に汚いって部分にこだわるつもりは無い。
来るなら来いっ!!はたけかかしっ!!
  「あ、ここです・・・
心とは裏腹に、声がおとなしい・・・・
  「すみません、急で」
  「いやいや、ナルトたちが人・・いやお世話になってますし、っつーことは俺にとっても大事な方なんで
くそっ、俺、物凄く低姿勢。仕方ない。ナルトぉ、感謝しろよ!!
カカシさんを部屋に招き入れる。
無人の部屋は、主人まで拒絶する勢いで寒い。
  「うわ・・寒いっすね。コタツ、入ってください」
  「はい ♪」
ん??
今の返事・・・・語尾になんか変なマークが着いてたような・・・
気のせいだろう。
それにしても、狭い部屋に大男がいるってのは、窮屈なものだ。そういう意味でも、早くコタツに入って欲しかった。
ほらほら、と、『かあさんみたい』と子供たちに揶揄される特性もろだしで、とにかくコタツに収める。
  「俺も失礼して・・・」
ゴソゴソ・・・
・・・・・・・
・・シーン・・
・・・・・・・
なんか気まずいんですけど。
だいたい、俺、簡単に考えてたけど、どうすんの?
この人、着替えも無いだろうし、風呂とかどうすんのか?
あ、もっとヤバイ事思い出した。
布団、一組しかねーーーっ!!!
絶対絶命だよーーっ!!!
ああぁ、俺、今、人生で一番困ってるぅ・・・・
  「ねえ、先生」
  「ぇ・・あ、はいっ?!!」
  「俺、お風呂はいりたいな~なんて」
  「!!」
よりによって、どうしてこんなときにビンゴなんだ!!
  「あ、やっぱり図々しいですよね」
今の俺の悩みポイントはそこには無い。アンタの性格なんてどうでもいい。
  「いや、いいですよ。それはいいんです!!」
  「あ、はい・・」
  「でもね、着替えとか・・・」
  「あ、持ってます」
  「な、なんだ、ははは・・・ってか、持ってるなら最初から言ってくださいよっっ!!!
  「だって、聞かれなかったし・・・・・なんか怒ってます?」
  「いや、怒ってないけどホッとしたっていうか・・」
いやいやいや、布団がまだあった・・・。
どうする?どうする?・・・・
  「俺が沸かしましょうか?」
  「あ、いや、俺しか扱えないボイラーなんで」
  「え?」
  「軽く小突かないとだめなんです。俺しかできないんで」
  「あ、そうなんですか(笑)」
のん気に笑ってやがる。俺がこんな窮地に立っているのに。
もう、どうにでもなれ。
もしかしたら、布団も持ってきてるかもしれないしな、はははは・・・・はは・・。
  「じゃ、風呂、用意しますね」
  「はい ♪ 」
え?
え?
なに?
なに、今の感じ・・・
・・・・いいや、さっさと用意しよう。


・・・・・


で・・・
カカシさんは、今、ご入浴中だ。
コタツの横にバックパックが投げ出してある。なんか、さり気に持ってたから気づかなかった。
いや、俺、いろいろテンパってたからな・・・。
バックパックから、デニムが見える。
  「へ~・・・ジーンズとか穿くんだな」
や、待て。ここにあるってことは・・・
  「上がりました」
え??
ギャーーっ、裸だ!!いや、パンツは穿いてる・・・
振り返った俺は、カカシさんの下着姿をモロに見てしまったわけで・・・・
っつーか、なんか眩しすぎて、よく見てない。色、白すぎだ、この人。
  「気持ちよかった。ありがとうございます」
  「ああ・・す、すみませんんん・・・」
  「え?ああ、やだなぁ、そんな目を閉じなくっても(笑)」
  「俺、入ってきます!!!」
  「あ、お先でした・・・」
カカシさんの声が遠くに聞こえるほど俺は素早く移動した。


・・・・・


ふうーーー
俺は風呂に浸かって、やっと深呼吸した。
やれやれ、とんだ目にあった。仕事も全部片付けて、ようやく明日は休みなのに・・・・・
げえっ・・・
休み?
仕事に出かけてフェイドアウトっていう選択はもはやないのかっ!!
けだるい朝を、俺よりでかい男と迎えろと?!
しかも、布団は一組!!
俺の部屋に、ソファなんてしゃれたもんはない。
わかったよ、俺が居間で綿も出た座布団敷いて、コタツで寝るよ・・・・
ああ、楽しいはずの週末が・・・・・・
盛大にため息をついて、部屋に戻った俺は、改めて、この上忍の心臓の強さを思い知る。
一組しかない布団は、もう寝室に敷かれ、すでにそこにお休みだったのだ・・・・




2008.01.27. アップ
2013.02.16. サルベージ