鳴門の案山子総受文章サイト
強烈な太陽の日差しが、大気圏を無視して皮膚に当たる。
風は強くて髪を掻き乱すが、それ以外の音はしない。
見渡す限りの銀面は、ただでさえきつい日差しを跳ね返して、所々に乱反射する雪の結晶がキラキラと眩しかった。
晴れているのに、チラチラと雪が舞い落ち、風の気まぐれな強弱に弄ばれている。
「どこから落ちてくるんだろう」
カカシが考えずに放った、ただの会話の端緒に、
「ダイヤモンドダストだよ。知らねえの?」
と真面目に答えるところが、サスケらしい。
そして、
「あ、そうか、綺麗だな」
と、わかっているのにそう答えるのも自分らしいと、カカシは納得する。
黙々と雪原を歩き、足下にある自分の影が、雪の上では青いことに気づく。
風に吹き飛ばされる雲が、太陽を隠す瞬間は、淡い紫にも見えた。
「影が青いな」
また、会話の端緒を求めて、半ば無意識にカカシが言う。
斜め後ろを歩くサスケは応えない。
ザッ、ザクッ、という足音だけが耳につく。
雪面は固く、足を踏み入れても沈まない。
表面に積もった皮相の雪に、くっきりと足形が残るだけだ。
返事がないので、振り返ろうとしたカカシの耳に、
「空の色かな」
というサスケの声が聞こえた。
図らずも、心臓がドキンとして、それがどういう理由によるものか、カカシにはわからない。
前に向き直り、拍動の意味を考えつつ、足下を見る。
「ああ・・・」
ほんとうだ、と思った。
雪原の向こうに広がる、単色の水色の空から視線を落とすと、影は本当に、そこから千切れ落ちた空の欠片のようだった。
寒さに冷えていた頬が、一気に上気するのを感じる。
こんなに純粋な
こんなにかわいい
俺の教え子・・・
「ここを越えると、谷があって、そっから地図には載ってないよ」
言いながら、カカシは自分の気持ちすら掴みかねていた。
あえて、この地点で言う任務の話も、サスケをつなぎ止めたい無力な枷のつもりだったのかもしれない。
振り返って見たサスケは、その目に雪原の白を映して、今は完璧に、自分の部下以外の何者でもなかった。
前を向く。
空はどこまでも透明で、明るく、
でもそれは、いろんな現実を見たくない、今だけは見たくない、自分の心のようだった。
サスケ里抜けの数ヶ月前。カカシはなんとなくそれを感じて、諦めながら、抗いながら、サスケと一緒に歩いている
ちぎれたのは二人の影、ちぎれそうなのは心