オビト、会議に参加する 2

 べつに言霊っていうわけじゃないだろうが、思いは胸に止めているだけではだめだ。それを言葉にすると、運命は転がり始める。どうがんばってもオビトは無理だと、最初っから諦めていた当会議だが、ヤマト隊長の、
「どうせ妄想なのに、なにに縛られているんだい?」
という言葉に、そりゃそうだ、と一同納得した。
「たかが妄想だろ!」
うん・・・まあね・・・
「どう頑張っても妄想なんだし、かっこつけてもね」
・・・・・・
「所詮、
「うるさいっ!!!!」
おっと、サクラちゃんが怒った(笑)
っていうか、どうせとかたかがとか、隊長もしつこいんだってば。
「ま、ヤマトの言うとおりだな。さっそく、呼び出そうぜ」
「呼び出したってば」
ぶっ!!!   [←ナルト以外吹き出す音]
「は、はええな、ナルト!!」
まあね。そこに、話のポイントはないから、サクッといかせて戴く。
一応、ご説明申し上げるが、ここは、ご都合主義的に設けられた、あの世とこの世の境目ということになっている。成仏しきってないオビトを見つけ出すのは、話の都合上簡単だった、ということにしておいてね。
死んだときのまま、半裸のオビトが現れた。
「俺を呼び出したからには、それなりの理由があるんだろうな」
さすが、迫力ある登場だってば・・・・
「フン。この死に損ないが」
あ、あああ・・・さ、サスケ・・・・言い過ぎ・・・
成仏しかかっている人に失礼だってばよ・・・・
でもオビトはいささかも動じない。
「サスケ。ナルトと違って、俺とお前じゃ、やってることは大差ない」
うううん・・・確かに。
「なんだと、貴様・・・」
「ここで輪廻転生をやってもいいんだがな?」
おっと。ここは、現世とあの世の狭間だからな。逆の効果が起きる可能性も無きにしもあらず。
「サスケ、ここは話を先に進めた方がいいってばよ」 
「フン。まあ、いい。会議は初めてだろうから、俺がレクチャーしてやるぜ、オビト」
「聞こう」
はあ・・・なんか、この人、ぜんっぜん、おちゃらけてないってばよ。
そりゃそうだよね。自身の理想のままに、熱い想いだけで人生を走り抜いた人だからな。この馬鹿みたいな、というか変態な会議にふさわしくない・・・と思ってしまうのは俺だけか?
サスケが言う。
「アンタが誰だろうが、俺らの実力がどうあろうが、そんなことは、ここでは全く意味がねえ」
「・・・・・」
「あるのは、純粋に、『想い』だけだ」
「・・・続けろ」
「想いというのは、言わずと知れた、カカシへの想いだ」
オビトの目がちょっとだけ大きく見開かれた。
「カカシか。ちゃんと火影になったんだろうな?」
「当たり前だ。アンタに心配される筋合いのもんじゃねえよ」
おおう、サスケってば、もう端っから喧嘩腰だもんなあ。
「まあいい。カカシへの想いとは、俺のあいつへの信頼とか、そういうものか?」
信頼ね・・・・
残念ながらまともじゃないこの会議を通して、そんな単語が出てきたのは、初めてだってば。
「もちろん、そういうのも込みだ」
「ん?他にもあるのか?」
オビトがまともにサスケを見る。
「愛だ」
「え?」
「カカシに対する愛だ」
「・・・・友情とか?」
「それも込みだ」
「・・・同胞感とか?」
「それも込み」
「・・・・はっきり言え」
「つまり、なんでもあり。性欲も込み、だ」
「!!!!」
まあ、そりゃあ、驚くよなあ。
ていうか、性欲も込み、じゃねえだろ、サスケ。
ほぼ、それ、だよね(笑)
「なんだ、お前たちもか」
ぶっ!!!    [←ナルト吹き出す音]
おお・・・オビト・・・・
「お?オビト、お前も?」
「当たり前だ。俺は、お前たちより、カカシとのつきあいは深い」
「ふ・・・深い?」
「ガキの頃から一緒だったからな。あいつの今となっては想像もできない色々を知っている」
「ほ・・・ほんとうか?」
喰い気味のサスケに、オビトはゆっくり頷いた。大人だ・・・
「あいつに邪な想いを抱いたことも数知れず!」
「うひょ~~っ!!!いいぜ、オビト!!」
は、恥ずかしいぞ、サスケ。その叫び声・・・・
「まさに、これは俺の為の会議といっても過言ではないな」
「うるせえよ、俺たちだっているんだ」
「仲間、だな(笑)」
「そうだ(笑)」
・・・・すっげーむかつくんですけど。
一番、それを否定してきた人たちに、そんな会話、されたくねーわ。
「じゃあ、始めましょうか・・・」
おっと、サクラちゃん!
やっぱりサクラちゃんが仕切ってくれないと、締まらないよ、この馬鹿連中!
「僕ももちろん聞かせてもらうよ」
ヤマト隊長もこっちに来た。
うん、まあ、ちょっと変な感じだけど、ここから、会議、スタートです!!
会議タイトル?
もう、それはどうでもいいや(笑)「カカシ会議」でいいだろう。
「オビト、まずは今までの会議の議事録を通して読んでみて」
サクラちゃんが今までの議事録をオビトに手渡す。
オビトがちょっと動きを止めて、その冊子をつくづくと眺めた。
「・・・・・」
「どうしました?」
一応先輩にあたるので、隊長は敬語だ。
「なんか・・・・」
「なんか、どうしたってばよ?」
オビトがページをめくりながら、
「お前たち、凄いな。さすがにここまでとは思っていなかった」
「フン。俺らも舐められたもんだな」
「変態度で僕らが勝ったってことですね!!」
た・・・隊長・・・・なに言っちゃってんの・・・・
「変態度?」
オビトがこっちを見る。そして頷いた。
「そのようだな」
ぶっ!!!    [←ナルト吹き出す音]
わ、わっかんねえ・・・・オビトがわかんねえ・・・
「ねえ、オビト」
サクラちゃんが話しかける。
「オビトも先生を好きってこと?」
「先生?」
ああ、そうか・・・・オビトはちゃんと知らないんだもんな。
「カカシ先生は、俺たち七班の先生だってばよ」
あえて現在形で言う。
「・・・・そうだったのか」
戦っているときに、断片は知り得たろうが、その程度だったろう。
「先生なのに、お前は呼び捨てか?」
オビトがサスケに言う。
「フン。同じ忍だからな。それに・・・」
「それに?」
「俺がそう呼びたいんだ!」
ぶっ!!!    [←ナルト吹き出す音]
・・・・飛ばしすぎ、サスケ。もっと落ち着け。
「了解した。でも、わからない事がまだ一点」
「何だってば?」
「お前がなんでここにいる?七班の教え子じゃないだろう?」
オビトが隊長を見ている。
うわあ・・・・ちょっと複雑な状況・・・・・
「先輩を愛しているからですけど」
ぶっ!!!    [←ナルト吹き出す音]
そうだった、そうだった。
先生の事に関しては、隊長は、ブレが微塵もないんだった・・・
「お前もカカシが好きなのか?」
「は?好きって言ってないですよ。愛してるって
「あえてそう言った。俺の嫉妬だ」
げええええ・・・・隊長のセリフをぶった切って言い切った。
なんか、オビト、凄いぞ。つまり、普通のベクトルじゃねえ・・・
「サクラ。もちろん、俺もカカシが好きだ。でも、」
オビトが話し始める。
「でも、それに気がついたのは・・・」
サスケがギロッっとオビトを睨み付けた。
「まさか、最後の戦いで・・・ってことはねえよな?」
「よくわかったな」
ギンッっと空気が凍る。
サスケのみならず、隊長も、サクラちゃんも、なぜかオビトを睨み付けた。
「なによ!にわかカカシファンじゃない!!」
「貴様、死んでまだ数ヶ月!!それだけのキャリアで俺たちと仲間だと?」
おいおい。キャリアって・・・・
「でも、オビトさん、なんかさっきの話では、邪な想いとか、昔のカカシとかおっしゃっていましたけど?」
オビトは、俺たちの勢いにも全く動じない。
「良く読んでくれ。以前からそうだったとは言ってない」
オビトが話し出した・・・・・

お前たち。
わかるか?
俺とカカシは20年も経って、また出会ったんだ。
その間、見ようと思えばあいつを見ることもできたが、俺はすべてを捨てたから、そういう発想もなかった。
そして、いきなりあの戦いでご対面だ。
以降、二次の世界では、もう手垢がつきまくってることを承知で、話す。
戦っている最中なんて、あいつも多少目立っている程度でモブに紛れていた。接近して、初めてカカシだってわかったんだ。
それも、覆面をしていて、銀髪だったからにすぎない。
写輪眼?
ああ、でも、写輪眼の共鳴も、お前たちが思うほど象徴的ではないんだ。
意識があって初めてわかる。気づく、が正しいか・・・
カカシだと知って初めて、俺の写輪眼が、本当は戦いの初めからあいつを認識していたということに気づいた。俺の思惑を越えて、俺の身体は理解していた・・・・・
それが、まず衝撃を受けた最初だ。
久しぶりに会って、あいつと刀を交えたが、物理攻撃ではやっぱりあいつは強かった。何度か俺を殺せるタイミングがあったのは本当だ。俺も、目的に力を使わなければ、あいつを殺せたろうがな。
それほど強い、スペック的にバランスのとれた忍者のクセに、あいつは驚くほどメンタルが弱かった。俺の意志の強さに押されてブレるあいつは、俺にとって新鮮な驚きだった。あいつの若いときとは、違った印象を受ける。ミナト班の時、ブレまくっているのは俺の方だったからな。あいつはいつも俺を下に見て、とんがっていた。
それで、俺は、「ああ、あの頃、あいつはあいつなりに頑張っていたんだな」と瞬時にカカシを理解したよ。それを証拠に、ミナト班を失ったカカシは、それまでの自信を失って、泥沼に足を突っ込んだんだ。
お前たち部下を持って、あいつは自分を鼓舞して頑張ってきたんだろうな。それが、今、俺の前で、また折れそうになっている・・・・・
その時の俺の気持ちがわかるか?

「愛しい・・・だろ?」
サスケの一言に、オビトは深く頷いた。
「たまらなかった。早くに死んでしまったリンは、ミナト班の時の印象のまま永遠だが、カカシは違った」
サクラちゃんも頷く。
「激しく後悔したのは・・・いや後悔できたのは、ナルトの説得のおかげだ」
オビト・・・・
「お前たちにとっての大事なもの。それが俺にとってはカカシに象徴されていたんだ」
オビトの声が震える。
ああ・・・・あんたって・・・・
「俺が木ノ葉に戻っていたら。俺が火影になっていたら。俺が・・・」
「オビト・・・・」
サスケも涙ぐんでいる・・・・もう、感動屋なんだから、こいつ!
「俺が、カカシの側にずっといてやれたら・・・」
「・・・・・・」
「もっとこの会議も盛り上がっていたろうにな」
ぶっ!!!    [←四人吹き出す音]
そ、そこで落とす?!
が、もっとびっくりしたのは、オビトは凄く真面目な顔だったってことだ。
ひえええ・・・・天然?
「邪な想いってトコも説明してくださいよ」
おっと隊長・・・やっぱりブレないね(笑)
「お前たちがさっき言ったろう。俺が死んで数ヶ月。その間、厭と言うほど時間があったんだ」
「それで?」>サスケ
「カカシの事を考える時間がたくさんあったってことだ」
「たくさん・・・考えたの?」>サクラ
「ああ、考えたな」
「邪な?」>隊長
「そうだよ」
「「「「・・・・・」」」」
なんつーか、オビトは本っ当に男らしいわ・・・
自分の感情をごまかさない。でも不思議だ。
サスケや隊長がストレートだと、変態チックになるのに、どうしてオビトだと格好良く見えてしまうんだろう・・・・
「その、考えたことを教えて、オビト」
うん、と言いながらオビトが議事録をパラパラ見る。
「それがこの会議の趣旨のようだな」
「理解が早くて助かるってばよ」
「ま、同じ想いを抱いていれば当たり前だけどな」
とサスケ。
「しかし・・・かなり、内容がきわどいな」
そう、はっきり言われると、返す言葉がない。
「きわどいだなんて心外ですね」
お、隊長がオビトに噛みついた。
「そうか?」
「はあ?そうか、じゃないですよ!!」
あ、隊長に火がついた・・・・珍しい・・・

[以下ヤマトノンストップ]
なにをおっしゃっているんですか?
好き、なんでしょう?
愛してるんですよね?
自来也様だっておっしゃっている。愛のないセックスはあるが、セックスのない愛はないと。ええ、先輩に倣って僕も愛読者ですよ。
先輩の事を真剣に愛したら、すべて奪いたくなる。
それがなかったら、その程度です。
きわどいのは仕方ない。だって、それが愛のギリギリなんですから。そこはちゃんとおわかりでしょう?
新刊をちゃんと最後までお読みになりましたか?
好きで好きでたまらない!!でも、僕達は、一般社会を生きる、まともな常識人でもあるんです。
だから、妄想なんですよ!!!
妄想の中だけなら、安心して、先輩を抱ける!
可愛がることができるんです!!!
きわどく、ひたすらエッチでなにが悪い!!!!
先輩のアレをああして、コレをこうして・・・・ああ・・・・・
あ、先輩!!そんな・・・・ああああ、それはああ・・・
おおおお・・・・

・・・・・・
ダメだ。
隊長は、すぐ自分の妄想に感化されて飲み込まれっちまうからな。
どこがまともな常識人だよ。充分、あぶねーよ・・・
「ヤマトっ!!!一人で楽しむな!!教えろっ!!!」
ぶっ!!!   [←ナルト吹き出す音]
サスケ・・・・お前も同類だったな・・・
オビトは、悶える二人の変態を見て、ちょっとびっくりしていたが、
やがて微笑んで、
「カカシはすごく愛されているんだな」
と言った。
そのあまりにピュアな言葉と笑顔に、俺は逆に衝撃を受ける。
ナルオビ・・・いや、そういうことじゃなくて、どこかで、ああ、かなわないな、と深く感じたんだ。それはサクラちゃんも同じだったらしい。
「本当に・・・先生の事、好きなのね」
と溜め息と共に言ったから。
「うん、そのようだ」
と言って、初めてオビトがちょっとだけ照れた。
お・・・やっぱ、ちょっとかわいいな・・・
「じゃあ、聞いてくれるか?」
「「もちろん!」」
俺とサクラちゃんが頷く。
変態二人は、どうしたもんだか、抱き合って痙攣している。
妄想が激しすぎて、あっちの世界にいっちまったようだ・・・