原色 5
「なんでこんなに可愛いのかしら?」
サクラがつぶやく。
それは、たぶんカカシにも聞こえて、通常なら、そう言われて馬鹿な反撃に出る男どもに比べれば、唯々諾々として、それを受け入れているカカシは、心臓をドキリとさせるくらい新鮮だった。
生殖器は、もちろん十分に成熟した男のモノで、でも、それをまともに使っていないだろうカカシのギャップは、激しくサクラをそそる。
「ねえ、先生?」
この人が先生だったことは、もう、呼称以上の意味を持たなかった。
「女に抱かれたことって、あるの?」
カカシの目が大きく見開かれ、それは、問われる前に、すでにそのことを思いめぐらしていた顔だった。
「・・・・五代目に」
え?!とサクラがきつく問い返す。
「回復のための禁術だよ・・・・砂から帰った時・・」
なんだ・・・。
ただのつまみ食いじゃない、師匠の。
サクラは息を吐く。
だんだん、カカシという人間が見えてくる。
想像もできなかった私生活が、だんだん見えてきて。
なんとなく、感じていたことが、この男では、すべて本当で。
エリートの名を欲しいままにしているのに、セックスに振り回される、だらしない男・・・
いや、
サクラはカカシのペニスをそっと握った。
これが、先生なんだ。
男も女も、上司も部下もない。
近づいてくる人間を、無警戒に受け入れる・・・・・・寂しい人。
「サクラ・・・」
ペニスを握られて、少し腰を浮かせたカカシが呼びかける。
「なに?」
「いいんだよ、無理しないで」
そう言って、左手をこちらに伸ばしてきた。
「え?」
「五代目には迫力で負けたけど」
思わずこちらも伸ばしたサクラの右手を、カカシの力強い左手がつかむ。
「サクラは華奢でかわいいから・・・・」
ドクンと、サクラの心臓が短い悲鳴を上げた。
カカシの言っていることを理解する。
普段はネコだけど、私のことは抱けるって言ってるんだ、この人。
サクラの頬が、赤く染まる。
ただ、それは羞恥のためではなかった。
感じたのだった。
カカシの、その、存在に。
おちた・・・・
先生を落としたつもりが。
ああ、ダメだ。
このまま行ったら、この人のこと、忘れられなくなる。
カカシの手に引かれるまま、サクラは身体をベッドの上に移動する。
下半身だけ脱いだ間抜けな姿のまま、でも、それがカカシであるというだけで、その様は真摯な求愛に化けた。
カカシがサクラを抱きしめてくる。
そのちょっと加減した力具合も、優しさというよりは不慣れな感じで、サクラを刺激する。
この男をめちゃくちゃにしてやりたい。
カカシがふっと腕の力を緩めて、サクラの髪にキスをした。
それは愛撫ではなく慈しみで、この人にとって、まだ私はどこかで部下なんだ、というカカシの曖昧さが伝わってくる。
サクラの手がカカシの腰に触れ、そのままそれを上に滑らせた。衣服の下に入り、乳首に触れる。
ちょっとだけ、カカシの身体がピクとなり、そのまま空気で、サクラの愛撫を受け入れた。
服をズリ上げて、胸を晒させる。
ろうそくの炎だけの薄暗いなかでも、屹立する乳首が見えた。
指先で触れ、そっと撫で回し、軽く摘む。
「・・・・んっ・・・」
初めて聞くカカシの吐息。
サクラも息を詰める・・・・
それは確かに、カカシの声だったが、サクラの記憶にある、どのトーンとも違った。
確かめるように、もう一度、指先に力を入れる。
滑らかな乳首の質感を味わうように、ゆっくり撫でた。
「・・んっ・・・」
また、カカシが、鼻から抜けるような吐息をつく。
触れるだけで、そんな呼吸をする。
自分より遥か年下の、しかも女に、こんなに無防備でいられるカカシ。
カカシの顔を見上げる。
素顔は、もう、ずっと前に知っていた。
暗みに慣れた目は、ハッとするほど整ったその顔を、ロウソクの影の中に見る。
普段は見えない銀色の睫毛にも、綺麗に炎の明かりが乗っていた。
明度が低すぎて色が不明瞭だけど、でも、多分その目の縁は赤い・・・
でも、こんな・・・
こんな顔だったかしら?
あの任務時の飄々とした覆面の男。
この人、なんだよね・・・・?
「サクラ?」
「あ、・・・・」
愛撫の手が止まり、サクラは、カカシの顔を陶然と見つめていた。
と、カカシの手が伸びてきて、サクラはその動きを見守る。
サクラの動きを制限しようとして動くのかと思ったそれは、自身の衣服をたくし上げた。
「先生・・・」
それには応えず、胸を晒すと、そのまま静かになる。
サクラが、ちょっとの間動けないでいると、カカシが、
「脱いじゃったほうがいいよね」
と、事もなげに言うと、ベッドを揺らして、すべて脱ぎ捨てた。
「変だ」
「え?」
「変な人!!」
「サクラの方が変だ(笑)」
そう言って、自身の肌の上をさまようサクラの手を、自らの手で包み込んだ。
「先生の大事なトコ、握っちゃって」
先生。
せんせい。
背徳の響きに感じてるのは、私の方なのかも。
「・・・握るだけじゃないわ」
吐く息に挑む気持ちを紛れこませると、
「・・・うん・・・」
と、カカシも素直に頷く。
カカシの手を優しくほどくと、拍動のままに震えるペニスを握った。
2008.09.18./10.01.
続きはオフ本「妄想限界」に掲載しておりましたが、2009.01.02.にサイトにアップいたしました。