鳴門の案山子総受文章サイト
体温と、カカシの懐かしい匂いまで、味わうように男性に顔を寄せる。
サクラに触れられることを、期待しながらじっと待つカカシは愛おしく、サクラは頬が上気するのを感じた。
「・・・あ・・・んっ・・あ・」
形良い男性を両手で支えて、深くストロークする。喉の奥で低く呻くだけの男しか知らなかったサクラの耳に、素直に感じて喘ぐカカシは刺激的だった。そして、決してサクラの頭を掴むような興ざめなこともしなかった。完全にサクラにリードさせて、目を閉じている。左手は枕を握り、右手はその甲が口元に寄せられて、時折、指を甘噛みしていた。
「んっ・・・・ふっ・・・」
サクラは右手を少しずつ下ろし、その引き締まった尻に這わせる。カカシの期待感は、意味を成さない単語になって、その唇から吐き出される。
「サク・・・・んっ・・・・あ・・ん」
いつもの柔らかなテノールからは、想像もできない甘い声だった。口中から溢れる唾液を指につけ、そのままカカシの尻の間に滑り込ませる。奥にある、その柔らかい表面を撫でつけると、さすがにカカシが身じろぎした。
「サクラ・・・・・」
何を言おうとしているのかは、わかった。サクラの方に伸ばされてきた右手を、サクラが捕らえる。ペニスを口中から、ちょっと寒い室内に解放して、
「大丈夫よ、先生」
と、微笑んだ。
「ち・・・違う」
「?」
「俺・・・・」
そう言って、言い淀む。
「どうしたの?」
「・・・サクラに嫌われたくない」
「え?」
言っていることの意味がわからない。
「嫌うわけないわ」
こんな事までしてるのに?
「いや・・・さすがに・・・」
「ん?」
「はずかし・・い・・・し・・」
サクラが目を瞬(しばたた)く。
今やっていることが、恥ずかしい事なんじゃないの?
そう思ったが、黙って、カカシのセリフを促した。
捕らえた手が自然に落ちて、サクラの手がカカシの腰に触れる。明るいところで見れば、たぶん傷もあるのだろうが、ほの明るい中では、ぼんやりと滑らかだ。それに触れるままに、そっと撫でた。
シン・・・と静かになった部屋に、外の風の音が聞こえる。
この閉鎖系が今は凄く暖かく、カカシが言い淀むなら、そのままじっとしていてもいいくらい、サクラの心は穏やかになっていた。
ルックス満点の里の実力者。
九尾と面倒なことになって、私を息継ぎに求めてる。
そんなカカシと、密やかな時間を共有している・・・・
サクラはベッドの上に移動して、カカシと並んだ。
怯えたように中断を求めたカカシは、無垢な感じがして、サクラは思わずその裸の肩を抱きしめていた。
いろんなセクシャルなことを経験してるのに、その本質を知らないような、そんな感じだった。 30歳を越えているけど、いくつになっても愛を知らない寂しい人もいるから、こういうことに年齢なんて関係ないんだと思う。
整いすぎた顔は、薄暗い中で細かい造形がグレーに塗りつぶされ、自分より幼いくらいに見える。
「あの・・・声・・・・」
「・・・・え?」
問い返すサクラに、僅かに頷いたようだ。
「俺、声出しちゃうから、恥ずかし・・・い・・」
今までだって素直に感じてくれてる、と思ってたけど。
もっと乱れるんだ、この人・・・・
「出してもいいに決まってるじゃない(笑)」
「・・・・・・」
カカシはもう、何も言わなかったが、夜目にも耳まで赤くなっているのがわかった。心臓がぎゅっと掴まれるくらい愛おしい。
サクラはカカシの頬を抑えると、その薄く開いた唇に口付けた。
ちょっとだけ迷ったあとで、カカシも舌を入れてくる。
カカシの手がサクラの身体を抱きしめた。
初めてしたキスだった。
細く開いた視界に、目を閉じたカカシの睫毛がチラと見えて、一瞬で理解するように、サクラは今の状況に疼くような快感を感じた。
粘膜の触れ合う濡れた音がする。
「カカシ・・・・」
思わずそう言った。
カカシもサクラの唇を舐めて、
「・・・・サクラ」
と言った。
事態が展開するなら、確実に今がその起点だったに違いない。
「声・・・・」
サクラがキスの合間に言う。
「聞かせて、カカシ」
「妄想限界」掲載分。アップは2009.01.02