妄想自慢 5


  「あっさりしてるな、ナルト」
・・・・・・サスケ。
第一声がそれかい。
  「やってるシーンが抜けているのはあえて、かしら?」
サクラちゃんも・・・・・やってるとか、なんとか・・・・
  「いいだろ、妄想自慢なんだからさ!!」
俺が握り拳で反論すると、サクラちゃんが頷いた。
  「ええ、十分素敵だったわ、ナルト。先生視点っていうのはいいかもしれない。なんか、切なくっていいね」
サスケも頷く。
  「ダメだな、カカシは、やっぱり俺がいないと」
だからさ、これ、妄想だから。
実際の先生は、こんなこととは無縁ですよ、きっと。
暇があれば、エロ本と墓参りと任務の人生だろう。わかりやすい人だね。
  「なんかカカシがかわいそうだ。そんなに寂しかったなんて・・・・」
・・・・・・・・・おい。
妄想だって言ってるだろ。
サスケ、大丈夫か?
サスケに呼びかけようとした俺を、サクラちゃんが制する。
  「凄い、ナルト、やったわね」
小さい声で俺に言う。どういう意味だってば?
  「妄想語りだけで、暗示にかかってるわ・・・・」
・・・・・・それは、俺の話ってよりは、むしろサスケの方に原因があるのでは?
  「幻術も、研究の余地があるわね」 
その節は、くれぐれもこの会議を研究サンプルにしないでね。
でも、考えてみれば、こいつの一途さは、表彰もんだよ。それだけ、兄貴が強すぎるってことなんだろうけどね。今は、「蛇」って名乗ってるそうだけど、マジ、大蛇丸やカブトと同じくらい、偏執狂だよな。つるむのもわかる。俺みたいに、目の前のことに片っ端からとっくんで行けば、自然に導かれるってことが、理解できていないんだ。愛しいよ、サスケ。
でも、当のサスケはドリーム中。
  「ナルト、優しく抱いてやったんだろうな?」
サスケがキッとこっちを見る。
はっきり、なに言うんだ!!
は、恥ずかしい奴だよ、ホントに。
  「うっせーぞ。お前だって、ちょっと擦りすぎたんだろ?痛がってなかったのか、先生?」
  「黙れ!!てめえも、教えろよ、カカシとのセックスの内容!!」
だから、恥ずかしいって!!
  「いやだよ!!どスケベが!!」
サスケが俺の胸ぐらを掴む。
  「ずるいぞ!!俺にも情報を与えろよ!!」
  「なんの?!!」
  「だから、カカシとのセッ」
  「わわわ、わかった、わかった!!!」
すげーしつこい。
なんなの、こいつ。
  「優しく抱いてあげました。終わり!!」
瞬間、サスケの雷切が、教室を真昼のように照らして、次の瞬間、思いっきりサクラちゃんに、どつかれていた。
  「ご、ごめん、サクラ」
  「仲間に雷切だなんて、やめてよ」
そんなことを言って、サスケをどついた勢いは、サスケじゃなかったら死に直結していたよ。
サクラちゃんの暴力も止めてほしい。切実。
  「すまん、ナルト」
  「いいってば」
  「どうも、カカシの事になると、自分を見失う・・・・・」
それ、絶対口外するなよ。ビンゴブックに載るぞ、「弱点:カカシ」ってな。
意味不明だろうけどな。
っていうか、この会議の存在が、すでに木ノ葉の恥だな。
こんなことは、布団の中とか、ボーッとしてるときに、一人でするもんだからな。
ああ・・・・・まともな俺が、一番かわいそうだ。
だって、会議は、まだオオトリが残ってるんだぜ。
俺はサクラちゃんを見る。
サクラちゃんは、無邪気に笑顔を見せた。
・・・・・・・・怖い。



サクラが深呼吸する。
  「最後は私ね」
さすがにサスケも念を押す。
  「騙(だま)しはないよな?」
  「騙しってなによ?」
  「ほら・・・・妄想なのに、本人が出てきたりとかいう、ドッキリだよ」
ドッキリって・・・・・
  「大丈夫。カカシ先生は、今、五代目とお出かけよ」
  「任務か?」
ちょっとがっかりしたように、サスケが尋ねた。
ほんっと、わかりやすいよね、ってか、忍びとして、それどうよ?
  「そう。だから、前のようなことはないわ」
  「わかった・・・・・」
サスケは頷いたが、おれは『前の』ようなことがなければ、『別な』ことがあるのでは・・・・・と、イヤらしくもサクラちゃんを疑っていた・・・・・