鳴門の案山子総受文章サイト
風は生暖かく、ザワザワと木の葉を揺らした。
そのまま西方に流れて、今度は大きく草原を渡っていく・・・・
流れる時間は連続しているのに、一瞬一瞬が独立してあるように、俺は感じている。
つまり、この世界に、今、俺とカカシしかいなかった。
「ふん」
俺はまた鼻であしらう。
その音に、最大限の軽蔑と、期待していない感じを込めて。
でも、それはどう聞いてもただのポーズにしか聞こえなかった。
「本当だよ」
というカカシの声もまた穏やかで、すごくくだらない事なのに、互いに一生懸命誠実に話していた。
「教えてくれよ」
馬鹿なセリフの続きを放つと、いつもは見ることがないカカシの唇がゆっくり動くのを目に焼きつけようと、俺は闇に目を凝らす。
口元にある黒子が、俺の脳髄をゆっくりと握りしめてくるのを感じていた。
「いいよ」
そう言った。
ドクンと心臓が大きく叫んで、展開していく時間に、俺はリアルに吐きそうなくらい、神経を緊張させて、カカシを見る。
カカシは、俺の内面を見ながら、つまり俺が理解できる程度のスピードで、動いた。
ゆっくり下半身の着衣に手をかけ、それをズルと下に完全に下ろす。
その動きは、スローで、完璧だった。
なにが、完璧なのかわからないが、とにかく、俺は圧倒されていたのだ。
その動きに、スピードに、その仕草が俺に及ぼす影響も、そして現われる景色の効果も、なにもかも、完璧で、計算され尽くしていた。
右足は完全に抜けて、左足首に衣服が絡まる。
それを取り去らず、カカシは俺を視線で誘導する。
闇の明かりの中で、ゾッとするほど綺麗な男の下半身がそこにあった。
子供が大人の肢体に憧れて、あんな風になりたいと思う、まさにそんな完璧な身体だった。
柔らかい性器も、俺が今までに見た、銭湯や親類や仲間のどんなモノより、正しい形をしていた。むしろ教科書的で、そういう意味では、猥雑さはまったくなく、俺は純粋に感動していた。
カカシは俺に足を向けると、右手で自身を掴み、僅かに足を開く。
息ができない。
今、展開している事が現実なのか、いや、現実なんだが、あまりの事に、その感覚が希薄だった。
「見てていいよ」
カカシが言う。俺はもう、返事もできない。喉から一切の潤いが失われ、物理的にも音は出せなかった。
カカシの右手がゆっくり上下して、やがてそれは形を変え、また俺は感嘆する。
だって、医学書、そのものだったから。
本の図録は、カカシのモノを描いたんじゃないかとすら思った。
「きれいだ」
俺のガサガサの喉は、痛みも忘れて思わず言葉を漏らす。
カカシにも聞こえていたハズだが、それには応えない。
俺なら、もうすぐに早く動かすところだが、カカシはそうしなかった。
ゆっくり、ゆっくり・・・・
暗部のやりかたなんてあるわけがない。
ただただ俺に見せるためにやっている・・・・・
なぜ・・・・
カカシの先端が濡れて、じっとしているのが難しいくらい色っぽい音がする。
俺は何度か、手を伸ばしたい衝動に駆られ、そんな自分にもの凄く驚きながら、もちろんその動きを止める。
カカシにも、俺の衝動は伝わっていたと思う。
すべては自由なのに、俺がカカシを見るのも、俺がここに居続けるのも、カカシを見てどう思おうが、すべて、俺の自由意志の選択なのに、俺はカカシの掌にいた・・・
カカシは、ちょっとだけ息を大きく吐き、吸い、自身の感度が上がってきていることを見せる。
「んっ・・・」
カカシが小さく呻く。
ああ、息が苦しい。
ただの男の自慰行為なのに。
カカシが声を殺すために結んでいた唇を開く。
その中から舌が出てきて、左手の指を舐めた。
視覚の衝撃が、そのまま俺の脳を叩きのめす・・・
「はあ・・・」
息を吐いたのは俺だった。
もう、いつものカカシに見えない。
自分を慰めるために、自分の世界にどっぷり浸かっている、きれいな大人だ。
カカシの膝が上がり、長い足を折ると、さらに膝を広げて、そこが左手の行き先だと知って、俺は本当に吐き気でえずいた。
激しい緊張が、こんなにストレスになるだなんて、知らなかった。
心臓が滅茶苦茶に拍動して、こんな事で、俺は本当に死ねそうだった。
性器の先端と似た音がして、カカシの指がそこを撫でている。
膝がビクッと動くのが生々しくて、俺は無意識に体を揺らす。
手でいじるために僅かに屈めた上体の、その体の形は、いよいよ、色味を帯びてきて、俺は無意識にさらにカカシに躙り寄って近づいた。
カカシが言う。
「サスケ」
俺は黙って頷く。
呼びかけの意味を理解する前に、俺の身体はわかっていた。
「サスケ」
「・・・ああ・・」
カカシの指は、そこを広げて、明らかに俺の行動を誘っていた・・・