鳴門の案山子総受文章サイト
やっぱりイルカ先生は、俺が任務に行く前より頬がこけていた。
2週間・・・あまり、食べなかったのかな・・・・
でも、それをストレートに聞くことができない。なにか重大な事だったら、俺自身、動揺してしまうのがわかるからだ。つまり、俺が気づかないことで、イルカ先生がストレスを感じていたらと思うと・・・
俺が居間のテーブルに着くと、
「カカシさん、お疲れさま」
と缶ビールを出してくれる。
「ありがとうございます」
俺は先生の様子を伺う。でも、頬が若干こけて精悍さに磨きがかかった以外は、いつもの先生だ。
「実は、俺も今帰ったばかりなんですよね」
「ああ、そうなんだ・・・」
「だから、飯の用意してないんだけど・・・どうします?」
俺は台所の方を見る。
多分、この2週間、食材の買い置きをしていない。それが本当の理由だろう。
「俺、あんまり腹減ってないな・・・」
任務の疲れもあり、食事なんてどうでも良かった。
「実は、俺もです。風呂、湧かしますよ」
頬がこけているのに、なんだか上機嫌だ。ま、久しぶりに会えたということもあるんだろうけど、それなら、俺とのことで悩んでるわけでもないかな・・・
先生はテーブルに戻ると、旨そうに自分もビールを飲み、2本目に口をつけて、あ、というように俺を見る。俺が「?」と首を傾げて見せると、いえいえと首を振って、どうやらやっぱり楽しそうだ。
「先生、俺が帰ってきて嬉しい?」
寝室以外で、あんまりこんな会話はしないけど、なんか今日は特別に機嫌がいいので、もう俺の声は・・・ちょっと甘かったかもしれない。
「え?!」
案の定、先生はちょっと驚いて、頬を染めたが、でも、ニコッと笑って
「当たり前じゃないですか!」
と言ってくれた。ビールの缶を置くと、俺の左手を触ってくる。
「嬉しいですよ、もう、ニヤけるくらい」
やっぱりいつもの先生だ。
「カカシさんも、嬉しいですか?」
いい年をした二人の男の会話じゃないが、俺もこの時間が凄く楽しい。
「嬉しいです。あ、そうだ、俺、明日、休みなんですよ」
「じゃあ、ゆっくり休んで」
「うん」
「俺は仕事だけど、まあ、定時なんで、特別なことはないです」
意味なく二人で笑いあって、指を絡めて・・・
あ、風呂が、と言いつつ、先生が立ち上がり、俺を先に入れてくれた。
◇
俺が全部脱ぎ捨てて、脱衣の籠に入れ、鏡で身体の傷を確認していると、いきなり先生が入ってきた。
「あ、せ、先生・・」
先生は、ちょっと真剣な顔で、俺を背後から抱きしめる。
「先生?」
「ご、ごめんなさい」
「ん?」
「疲れてるってわかってるけど・・・」
「・・・ああ」
先生の熱を腰に押しつけられて、俺は了解する。こんなこと、過去になかったわけじゃないけど、最近はずっと落ち着いた感じの関係だったから、ちょっと新鮮だった。
俺もあえて明日が休みだと言ったのはそういうことだし、先生の強引さは、嬉しい。
先生の手が、俺の胸を撫でて、乳首を摘んでくる。
もう、それだけで、腰が落ちそうになるくらい、俺も先生が欲しかった。
首筋を舐められて、俺の鼻腔から息が抜ける。
「あ・・・せん・・・」
イルカ先生は、もう乳首を抓るくらい刺激してきたが、すでに俺の身体は痛覚すら快感に感じ始めていた。俺は乳首をいじる先生の手に俺の手を重ねて、その動きをやんわり抑える。
「先生、風呂、入らせて」
「わかってます」
先生は、俺を解放したが、同時に自分も勢いよく脱ぎだした。
俺が、唖然と見ていると、
「一緒に入ります」
と言って、俺を浴室に押し込んだ。
風呂は、湯気がもうもうと上がって、空気も暖かい。
俺を洗い場に押し込んで、イルカ先生は後ろ手で浴室のドアを閉めた。バタンという音と共に空気が膨らんで、俺の髪が動く。
「会いたかった」
たった2週間なのに、先生はそう言ってまた俺を後ろから抱きしめる。
「俺も。でも、先生、ちょっと待って」
「はい?」
「俺、任務帰りなんです。汗、流したい・・・」
あ、と先生が言い、俺を解放した。
「すみません・・・背中流しますよ」
「ありがとう、先生」
俺が笑いを含んだ声でそう言うと、ちょっと先生が戸惑った風に俺を伺う。
「何か・・・可笑しかったです?」
「いえ・・・嬉しくて」
「え?」
「先生、本当に俺のこと好きなんだなあって思って」
俺のこういう物言いに、でも、今の先生はすっかり慣れてしまった。それに、こんな状況でも、先生はいつも率直だ。
「当たり前じゃないですか」
そう言って、今一度、俺をギュッと抱きしめた。
続きます