鳴門の案山子総受文章サイト
先生を待つ時間はいつも、胸の奥がジンとする。
生活習慣が、俺よりしっかりしている先生は、入ったついでに風呂掃除もしてしまう。
待たせて申し訳ない、と先生は急いで寝室に入ってくるけど、この時間が結構、気持ちいいって、わかってない。
先にベッドに入った俺は、カーテンが30センチくらい開いた窓の外を見ている。
いろんな事が不穏な空気を醸しているのは確かだけど、と、俺は星に言い訳をするんだ。
でも、生きてる人間であることも確かだから、ちょっとだけ、幸せ感じてもいいよね、と。
どんなに頑張ったって数十年のちっぽけな人間だけど、こんなギュッと何かがつまった時間もちゃんとあるんだ・・・・
ドアが開いて、まだ湿った暖かい空気を纏った先生が入ってくる。
「寝ちゃだめですよ」
ベッドのスプリングが軋む。
「起きてます(笑)」
はあ、やっと、と言いながら、その言葉を飲み込んで、先生が俺に覆い被さってくる。
それだけで、もう、気持ち良くて、互いに待たされた時間を溶かすように長いキスは、俺を、写輪眼のカカシから、ただのはたけカカシにゆっくり戻してくれた。
俺より若いけど、俺より戦闘スキルは低いけど、でも、俺よりこの人は大きい。
先生にすべて預けて甘え倒したい気持ちに、いつもなる。
そんな俺を、先生も、もう可愛くてしかたないといった風情で見る。
生徒を見るような目で見ないでよ、と俺は笑うけど、先生は笑わない。
「俺、変なこと言うかも知れないけど」
と、俺の髪を撫でながら言う。
「なに?」
「俺、今、カカシさんを抱くの、我慢できますよ」
「え?」
俺の反応がネガティブにならないか、注意深く俺を見ながら、そんなことを言った。
「もちろん、すごく抱きたいけど、だから凄い我慢なんですけど、」
「はい」
「それだけじゃないって・・・」
「・・・ああ」
「それをわかってもらいたくて」
先生のこんな話をバカだなあと思うくらい、そんなこと、俺は知ってるよ。
「俺だって、先生の全部、好きです」
「カカシさん・・・」
「でも、して欲しいな(笑)」
先生の喉から言葉にならない息が漏れて、今度はさっきより深く口付けられた。
もう、何度も抱き合っているから、互いのギアの上げ方はわかっている。
先生のキスが、首を下りていく。
目を閉じて視覚を遮断して、先生が触れるところに感覚を集中させて、本当に悶えそうに感じるから、素直に声を出した。
「は・・・あっ・・・」
以前は凄く恥ずかしかったハズだけど、今は、先生に聞かせたいと思う。
「かわいい」
先生が言う。
じんわり嬉しい。
見上げると、先生はカッコ良くて、俺も溶けそうだった。
「暗部出の俺でも可愛いです?」
「もちろん」
先生に躊躇はない。
こういう場面で、いつも当たり前に即答してくれる。
それは、子供を扱う仕事だから、という冷静な分析もあるが、俺は、俺に対する絶対的な思いのせいだと思いたかったし、多分、そうなんだ。
「今日の仕事で、先生が聞きたくないこともしたよ」
俺は甘える。
つまり、大人の常識とか、遠慮とか、配慮をすべてかなぐり捨てて、思ったことを口にする。先生を試しているのかも知れないし、俺の知らないところで、俺自身が苦しんでいるのかもしれなかった。
先生は、俺の左の瞼にキスをすると、
「カカシさんのことを俺がどう思っているか、いい加減わかって欲しいですね」
と言う。
「どう思っているの?」
俺はガキ状態継続中だ。
先生は、キスをした場所にそっと指で触れると、
「全部、引き受ける」
とだけ言った。