聖夜 2 [ナルト]




去年の今頃。
俺は、今とは違う激情の中にいた。
畳み掛けてくるような新しい修行の毎日。
もちろん、激しいのは修行だけじゃなくて、俺と先生が陥った不思議な陥穽。
ちょっかいを出したのは先生って言ったけど、それも本当のところどうなのか?
でも、俺の感覚じゃ、先生も確信犯だ。

当時の俺に、実は、修行は面白かったし、楽しかった。
それは成長する自分などという気障な話じゃない。
たぶん俺は持て余していたんだ。
自分の過去を、自分の来歴を、自分をとりまく複雑な事情を、そして、それを甘んじて受け入れるしかない状況を、そしてそれらがもたらす周囲の空気を・・・・
俺は、持て余していた。
内面は鬱々と、しかし表面は笑って(だって内面のそれに気づかなかったんだから)、それでも、感情は溜まりすぎると、物理的な法則に支配されるらしい。
重くなりすぎた「情念」の質量は、運動エネルギーに形態を変え、つまり、修行は難しくはあっても、「楽だった」。

収まる状態を目指して、あらゆるものを放出していた俺は、たぶん、カカシ先生をもどうにかしちまった。
修行の合間に、任務で外地に出ていた先生と偶然鉢合わせたあの日。
結果的に、先生は、俺によってその中身をぶちまけたみたいになっていた。
・・・・うん、俺は本当に、いろんなことを理解していったよ。
それまで、敬愛する、優れた人格と忍者としての資質を備えた「ただの」上司だった先生が、俺が今まで感じたことのない強烈な何かを引き出す、知らない人に見えた。

きっかけは覚えてない。

夜はもうとっくにてっぺんを過ぎて、丑三つ時すら過ぎていた。
先生は何か、俺をねぎらう言葉をかけてくれたと思う。
闇に先生の目と髪が僅かに輝く。
雪は降ってなかったけど、脳裏のスクリーンには降っていたかもしれない。
任務があれば、寝泊まりに使っていた小屋の冷たく硬い床板の上に、気づいたら、先生を組み敷いていた。
先生の目は、多分大きく開くと思ってたのに、俺の激情とは全く違う次元にいる人みたいに、無表情だったのが不思議だった。
あとからそれは、無表情だったんじゃないってわかったけど。
怒られて吹っ飛ばされでもしていたら、簡単に解ける何かの発動だったのかもしれない、と今では思うが、その時は、落ちどころが決まっている脚本のストーリーみたいに、あっという間に展開してしまった。
先生は、やっぱり驚きもせず、俺の手が着衣の間に伸びても、顔の造詣をピクリともさせなかった。
拒否はしなかったが、俺の動きを手伝うこともない。
  「なんだ、これ」
俺自身の何かに向けた、つなぎのようなセリフにも先生は何も返してくれない。
  「なんか、ごめん、先生」
返してくれないのは、いつもの先生じゃないからって、少しずつ気づいてくる。
驚いてないんじゃなくて、先生も「同意」なんだ・・・・
だから、先生は、無言で俺にされるがままなのに、俺が手間取ると言葉を挟む。
  「違うよ」
とか、
  「引っ張って」
とか・・・・
俺の神経はビリビリと興奮して、先生にすべて向けている注意力なはずなのに、半径数百メートルに誰もいないのもわかっていた。
こんな寂しい荒れた夜に、広い森の中、先生と二人きり・・・・
グッと先生の下の着衣を引っ張って、夜目にも白い先生の下半身があらわれて、あっさりと見える景色に、起きながら見ている夢のように感じていた。
今、今、今、今!!!
俺の脳が叫んでいて、目眩が俺のまだ残っていた理性を滅茶苦茶にする。
  「せ・・・先生・・・」
俺の声は掠れていた。
  「どこに入れるかわかってるよな?」
先生が言う。
頭が、その言葉の意味を認識する前に、俺は頷いていた。
先生は、俺が頷くのを確認したかのかしないのか、気づくと俺の股間に顔を寄せている。
  「へ・・・」
俺の情けない声に構わず、先生はあっという間に俺を咥える。
  「はっ・・・ああ・・・」
肌寒い空気の中で、先生の熱い口中が、俺の感覚閾値を押し下げる。
もう、息をするだけで、瞬きするだけで、夜風のざわめきを聞くだけで、俺は簡単にイケそうだった。
強すぎる刺激に、我知らず延ばした腕が先生の頭を掴もうとして、寸前で止まる。
そこからゆっくり、ゆっくり、動かして先生の肩を掴んだ。
先生の口の動きと、それに続いて動く身体と、肩と、それを掴む俺の手と、すべてが繋がっている感じが強烈にして。
  「センセっ!!」
俺の悲鳴の意味は充分わかっていたろうに、先生は強く吸う。
一気に溢れる色々に打ちのめされて、先生の口に吐き出す。
強く刺激された時点で、先生の意思であることははっきりしていたが、俺は、男性器を吸うことに何の躊躇もない先生のほうが強烈で、頭は朦朧としていた。
そして、このときの快感は、じつはそう良いわけでもなかった。
もちろん先生の「どこに入れるかわかってるよな?」というセリフのせいだ。
つまり、次がある。
激しく俺の中のすべてが滅茶苦茶に渦巻いていて、それでも、頭の一部は冷静に「次だ」と考えていた。
先生の姿勢がちょっと窮屈そうで、その理由が、先生の右手の行方だと知って、また目眩だ。
右手は股間の奥に伸ばされていて、その手際の良さに、その明確な目的を伴った動きに、口中が乾く。
  「ナルト」
先生が、俺を声で誘導する。
  「ゆっくり」
いいながら、先生が俺に背を向けた。
下半身だけ脱いだ姿で、腰を落として膝をついたまま、
  「ゆっくり、入れて」
と、他愛ない世間話をするみたいに、そう言って。
俺は、バカみたいに何度も首を縦に動かして頷いて、もう硬く復活した自身を握る・・・・

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2011/12/25