聖夜 3 [ナルト]




そういうセックスは初めてなのに、気づいたら、先生の背にしがみついていた。
俺の一部は、もう先生の中に入っていて(気づいたら入っていたから、入れるのに手こずったかもしれないが覚えていない)、俺の両手は先生の身体を抱きしめていた。
自分の姿勢は獣のようで、俺はそのことにも興奮していた。
  「すげ、熱い・・・」
俺のソコは天国みたいな温度に包まれて、それは外が寒いせいだろうけど、互いの思いの数値だと、抵抗なく思う。

  「ああ・・・ナルト」

絶対、言った。
絶対、何度か、先生はそう言った。
抑えきれない身体の突き上げる衝動のままに、絶対、俺の名を呼んだ。
俺が、もう俺のコントロールにない身体を、先生に押しつけて、そっと抜きかけて、また押しつけて、先生が呻いて、俺も呻いて、どうしてこんなことで、こんなに満たされるのか手の届かない理由をグルグルかんがえながら、でもセックスという一言で説明できる不可解な行為を、俺は「愛」だと思った。
先生も同じ気持ちで、きっと俺と同じ気持ちで、それはかけがえのないモノで、痙攣する部分は死にたいほど愛おしかった。
両手を肩から腰に滑り落として、先生の前を触る。
ビクビクと拍動するソレに、俺の何かが引き絞られる。
  「先生・・・・」
先生がちょっとでも俺をどうかしちまうようなセリフを言っただけでお手上げになるクセに、気持ちよければ、気持ちいいほど、俺の心は、もっともっとと、「愛」を欲しがった。
  「う・・・んっ、ああ・・・いい・・・」
俺の動きを滑らかに継続させるかのように、先生の言葉は俺を「終わり」の方に誘導する。
セックスで相手を征服したがるバカな連中の気持ちが手に取るようにわかる。

今。
今だけは。
俺の先生だ。

俺もそう思っていたから。

俺は先生の誘導に逆らって、いきなり俺を引き抜いた。
色っぽい音と共に、
  「あ・・・」
という、先生の息を詰めたような声が虚空に響き、すぐ消える。
  「・・・・どうしたの?」
  「顔が」
  「ん?」
  「先生の顔が見たい」
先生はイヤだったろうと思う。
微妙な間があって、でも、また日常の延長みたいな空気で、身体をこちらに向けた。
上体を向こうに倒して、閉じかける目で俺を見ながら、
  「いいよ」
と言った。
俺の心は、先生の真意の探求に時間をかけたがったが、手は迷わず先生の脚を抱え、さっきまで納まっていた所に自分を挿入する。
さっきまで入っていたから、ピチ・・・という微かな音がしただけで、すんなり入る。
  「あっ・・・」
先生がそう言って、その声に俺はビクンと反応する。

すげえ・・・・

先生の頬と鼻先は寒いせいか薄赤く染まっていて、いつもよりさらに年若く見えた。
いつも見ていた脛が、こうして膝に繋がっていて、こういうふうに太腿に連なって、今、俺はそれを掴んで。
いつも見ていた銀髪の下で、こういうふうに快感に歪める眉と唇。
いつも見ていた形いい鼻梁から、鼻を鳴らすような、甘えるような息の抜ける音がして。
いつも見ていた印を組むカッコイイ右手の指先を、自身の歯で噛んでいる。
いつも見ていたあのボサッと立っていた着衣の下には、こんな綺麗に引き締まった腰があって。
俺の手のひらに吸い付く尻の間には、初めて見る先生の部分が俺を咥えている。
俺の動きと共に揺れる先生の腹の上で、初めて見る先生の性器は、俺と同じ形じゃなくて。

  「あっ・・・あ・・・」

俺の動きに連動して呻く先生の声、その唇、その眉間の皺・・・・
先生の手が自身の性器を掴むと、俺を呼ぶ。

  「ナルトっ・・・ナルトっ・・・」

いきそうになっている先生は、俺を恐ろしい力で締め付けて、強制的な「終わり」に抵抗しようとした俺は、あっさり失敗した。
俺は、手負いのケモノみたいに大きく呻いて、今までにないくらいかなり長く絶頂を味わった。
運動している最中より、腰を中心にした痙攣はキツく、俺が先生を喰い尽そうとしているのか、先生が俺を搾り尽くそうとしているのか、はっきりしない。
でもなにか、無心に念じるような(何を、かはわからない)状態に達しそうな時、先生の両手が俺に伸びて俺の上腕を掴んだ。俺もつられて先生の身体に手を伸ばす。
ぐいっと身体を引き寄せられて、不安定な体勢では抗えず、先生のほうに倒れこむ。
  「せんっ・・・」
キスされていた。
ああ、まだセックスは続いているんだ。
俺の理解は早く、先生の荒い呼気を吸い尽くすかのように、何度も唇を重ねなおし、口中も犯す勢いで舐めまわした。
先生の鼻から感じている息が漏れ、俺は、先生の吐精が、その時まで続いていたことを知る。
ビクビク脈打つそれが猛烈に愛おしく、俺の一部は、3回目でも十分いけた。
硬くなり始めて、先生の身体を抱きなおそうとしたとき。

先生が俺の身体を押しのける。

それは、自然な流れで、俺の上体はあっさり起き上がった。
芯を持ち始めた俺の身体に気づいているはずなのに、先生はグッと腰を引いて、俺が抜けるままにいきなり立ち上がる。
粘度を持った液体が、音を立ててソコから溢れ出て、一筋が内側から脚の外側にまとわりついたのを見る。時間の、一瞬とも立ち止まらない、人間からはほど遠い非情な正確さは、ぐんぐん、俺と先生を引き離す。
俺が唖然として、先生を見上げると、
  「報告しなくちゃな」
と先生が言って、俺は口をパクパクさせる。
  「ほ、ほ・・・報告?な、なんの?」
  「ば~か、任務の報告だよ」
と言って、ちょっとだけ唇の端を上げて笑んだ。
先生が、顔を近づけてそう言ったので、俺は、またキスされるのかと、自分でも呆れる楽観で見上げたが、外の雪明かりでゾッとするような妖艶な表情を間近で見ただけで、それ以上はない。
気づくと、先生は身支度もすんでいて、俺に
  「じゃ、先に戻ってるね」
と言って、あっという間に目の前から消えた。
俺の溢れた精液や、先生自身の腹にぶちまけたヤツも、いつ始末してしまったのか。
悔しくも手際がよかった先生だから、あっという間に片付けたのかもしないけど、もしかしたら、何もできないまま、服を着て俺の前から立ち去ったんだとしたら。
そう考えて俺は身震いした。

闇の中、雪の上を走り抜ける先生の身体の奥を、
そこから溢れて、脚に濡れ落ちるまま、
先生がそれを感じながら、そう、忌々しげに舌打ちしてたっていい。

正確に進む時間の向こうで、
俺と先生を繋ぐものがまだあるかもしれないという妄想は、
先生の感触をまだ残す俺の身体に、気持ち良かった・・・・・・



・・・・・・・・・・・
2011/12/27