鳴門の案山子総受文章サイト
そう。
これが去年の、そのときは意識してなかったけど、クリスマス前日の出来事だった。
よほど時間がたって、やっと正常に思考がまわり始めると、全てがいっぺんに灰色に帰した。
暗く、冷たい板張りの床には、たぶん俺の精液の雫が2滴、凍って落ちているだけで、それ以外のなんの痕跡も残っていない。つまり、俺が出したという事実だけで、対象の先生がいたかどうかなんて、もう時間の向こうに紛れてしまったかのようだった。
動こうとしたら関節がきしんで、情けない「感じ」に、かなりへこんだ・・・・
あのあと、里に戻ると、時間は何事も無く流れていて。
「明日はクリスマスだね」
そう言って微笑むのは、サクラちゃんで。
そっと手渡された小さな箱には、可愛い絵柄の絆創膏と、俺の似顔絵が描いてある小さな軟膏壺が入っていた。
「義理プレゼントだからね。先に渡しとくわ」
そりゃあ、義理チョコの親戚か。
辺りを見回すが、先生はいない。
「カカシ先生、見なかった?」
不自然じゃないように装って聞いたが、ちょっと声がうわずっていたかもしれない。
「カカシ先生?いないわよ」
「え?」
「なんか用事でもあった?」
「あ、いや、違うけど・・・」
「戻ってきたけど、さっきすぐに、任務に出たよ。帰って来るのは年明けですって」
・・・・・・なんだよ、それ。
こんなオチってあるか?
それ以上そこに止まる理由も、新しい任務もない俺は、消去法として、家に帰るしかなかった。
もちろん、道々、悪態のつきまくりで。
早朝の空は灰色の雲が薄く覆い、何も無ければそれでもさわやかな冷たさはあったろうに、俺はその心情のまま、グレーな気分で道を行く。
「きたねえよ・・・・」
先生にとっては、もしかしたら日常の延長だったのかもしれない。
あの手馴れた感じが、胸を焼くようにジリジリと思い出される。
気づけば、先生は、自分の指で部分を慣らしていて、気づけば、身支度を終え、いなくなっている。
ただ・・・・先生は、俺という人間の理解を、ちょっと誤っていた、と思う。
間もなく任務から帰った先生は、それは見事に「何も無かった感」満載で俺の前に登場してくれたが、俺はもう「押すしかない」状態だと思い込んでいたから(そうしなくても、自分の気持ちが盛り上がっている以外、なんの変化も問題もなかったかもと、あとで気づいたが)、以降、先生に積極的に迫ったのだ。
ところが、「しかたないねえ」とか「まあ、いいよ」という、俺的にはそれしかない先生の返事は、まったく予想を超えていて、そう、冒頭の会話の、延々とした繰り返しになったというわけだ。
しかも、一年も。
そして、玉砕したまま、年の暮れだ。
ひどい話だよ。
そして、感情とは無縁の時間は、ゆっくりクリスマスの当日となる・・・・
・・・・・・・・・・
2011/12/27、12/29
2012/01/03
続きます