12 無理矢理「脱がす」 [サクカカ]




私は 先生を脱がすのが好き。

野暮ったい風体の中に、驚くほど生き生きとした彼自身を閉じ込めていることを知っているから。
大げさでも何でもなく、脱いだ先生は、5歳以上は若返る。
いや、逆ね、あの外観が老けて見えるのよ。





ピンク色が付いているんじゃないって思うほど、春先の空気は浮かれてる。
風が強く吹けば、春物の服の裾を大きく揺らし、気分は上がる。
そっと吹けば、髪が心地よく梳かれる感じでうっとりする。
つまり、ずっと気分は舞い上がってる。

だから先生の安っぽいアパートの部屋の中も、思いっきり明るくて、光が乱反射して、発情するにはちょうどいい。
  「サクラ、すこ~し・・・・寒いな」
先生は、私が勝手に替えたピンクのベッドカバーの上で、立ち膝でこっちを見てる。
いい感じに色が抜けたデニムだけ履いて、上半身は裸。
ところどころにある太刀傷も、セクシーなペイントみたい。
浮かれてる窓を背に、日に温む髪の毛は色が飛んで、眩しいくらいに輝いている。
光線が作るコントラストが、先生の肌の滑らかさを示していた。
もちろん乳首も見ちゃう。
ちょっと立ってた(笑)
  「素敵なのに」
私の一言で、先生はまた頑張る。
10分前に始まったストリップは、着衣の少なさで、じらすようなお楽しみはない。
立ち膝のままボタンをはずす。
暖かい風は、風船で押すような圧力を伴って、部屋に流れ込んでくる・・・・
  「せんせい?」
  「ん?」
  「後ろを向いてほしいな」
  「は・・・あ・・・ははは・・・」
曖昧に笑って、でも、確実にスイッチはどんどん入っていく。
ベッドを軋ませて先生は膝をずらし、窓のほうを向く。
  「だめ」
私の強い声に、今度は本当に不意をつかれた表情で、首だけこちらにめぐらせる。
  「え?」
  「立って」
  「・・・・ああ・・」
先生はベッドから降りる。
私と同じ位置まで降りると、先生は本当に長身で、かっこよくて、私はうっとりする。
先生も、思わずソファに腰掛ける私に触れそうになって、私に押し戻される。
  「だ~め」
  「俺も見たい、サクラのこと」
  「その気にさせてよ、先生が」
ちょっと目を見開くけど、私の女王様な台詞に、先生が笑う。
たぶん、かわいいとか思ってる。
なんか悔しいけど、でも、今は、先生が私の言うがまま。
  「どうやって脱げばいいの?」
  「普通に、お風呂入る時みたいに」
  「ははは・・・・そんなの見て、楽しい?」
  「先生を見てるだけで十分楽しい」
  「(笑)」
先生は私から二歩くらい大股に離れるとクルリと後ろを向き、
  「ああ、春だよねえ~」
などといいながら、ジーンズを下した。

あ、と息をのむ。
先生はその下になにも履いていなかった。
つるりとしたお尻があらわれて、突然すぎる展開に、私の頬が一気に上気する。
足からジーンズをはずして、それを近くの椅子にかける。
  「サクラ」
  「な、なに?」
  「そっち向いていい?」
  「だめ!!」
  「ええ~?」
  「まだだめ」
  「どうして?」
  「もっと見るの、先生のおしり!」
  「!!」
先生が盛大に吹き出したのは言うまでもない。
大笑いしながら、私の命令に背いてこっちを向くと、私が抗う隙も与えず、私を抱きしめた。

先生の髪が風にあおられ、私はその眩しさに目を細める。
風が大げさに部屋を吹き廻り、春色の空気に満ちる。
  「ああ、もう、かわいい、サクラ」
全裸の大男に、ソファで抱きしめられている間抜けな私。
  「先生!!」
  「なに~~??」
言いながら、先生が頬を私の髪にこすりつける。
  「私、まだその気じゃないのに!!」
  「あ、そうなの?」
先生はちょっとだけ私から身体を離して、
  「ごめん、俺だけその気だね」
と言って目線で下を指す。
見事にそそり立つアレ・・・・・
ほんとにこの人、29歳なのかしら?!
  「脳味噌までピンクね」
吐息交じりの私の言葉を、微塵も否定しない。

  「あたりまえだ、いつもサクラのことしか考えてないよ」
  「・・・・・」
  「どうしたの?」
  「すごいオチ」

今度は私が大笑いして、先生を振りほどき、ベッドにとび乗る。
窓の外の春の景色は、まだ少し白っぽくて。
サクラ色の先生が私を追いかけてベッドに上がる。
笑う私の口に、また大きな風船のような風が吹き込んで、呼吸するのがちょっと苦しかった。




2011/02/19