そういうのもお好き



  「うへ~・・・凄い、凄い・・」
カカシが、あわてて木遁の家に駆け込んでくる。修行中に振りだした雨は、夜になっても止まず、勢いを増して屋根を叩いていた。カカシも全身びしょ濡れである。窓から外を見つつ、ヤマトに訴えた。
  「すごい雨だよ~」
  「先輩、これ」
ヤマトがタオルを差し出す。
  「おお、サンキュー」
  「先輩、ずっと遠くに行ったでしょうね?」
髪を拭くカカシにヤマトが詰問する。
え?と顔を上げたカカシは、ヤマトの顔を見て、ブルッと身震いした。下に光源がある・・・
  「こ・・怖いな、お前」
  「どうなんです?」
  「行ったよ、ずっと遠くに!!だからこんなに濡れてんだろ!!?」
  「家の横とかでしてたら、さすがに僕もキレますから」
  「だから、してないって」
  「もう三回目ですからね。油断できないんですよ、こっちも」
  「どんだけ信用ないの、俺」
雨の日の夜。
カカシの、近すぎるオシッコの話で、人生の数分を費やす二人。


ナルトの修行も転換期をむかえ、右と左を同時に見るところ(は?)まで来た。ナルトの疲労度は、もちろん、半端じゃない。今日も、上忍どもをよそに、爆睡である。
ヤマトが、隣の部屋の様子を見て、再びそ~っと、ふすまを閉める。
それを見て、カカシが突っ込んだ。
  「ドアじゃないんだな」
  「僕のせいじゃありません。管理人が、和洋折衷のイメージを持ってるみたいで・・・」
  「ま、関係ないけどね」
カカシは窓を離れ、ヤマトのそばに座る。
  「寝たの?ナルト?」
  「寝てますけど・・・そういう会話、あんまりしたくありません」
  「は?どうして?」
  「小さい子供のいる夫婦の会話みたいで、なんか、ね・・・」
  「・・・考えすぎだ」
カカシが唇の端で笑って言う。
  「じゃあ、先輩は考えてないんですか?」
ヤマトの反撃。
  「・・・いや、考えてる」
カカシがヤマトににじり寄った。
  「てか、それだけで、頭いっぱい・・・」
  「先輩・・・」
  「テンゾウ・・」
思わずテンゾウと言ってしまって、カカシはあわてて光源を確かめる。
・・・・大丈夫みたいだ。
ヤマトの顎に指をかけ、そのまま口付ける。
ヤマトもその気らしく、いつもの様に抵抗もはぐらかしもしない。
カカシが、舌を差し込んで、ヤマトの舌を絡め取る。ヤマトの上体から力が抜けた。
技師といわれるカカシの真実は、やっぱりこっちのテクである。
調子に乗ったカカシが、そのままヤマトを押し倒そうとしたら、そのとき初めてヤマトが、
  「ダメです」
と言った。
かまわずカカシが抱きすくめたら、
  「聞こえないんですか?」
と、声に影がついた。
  「あ、ごめん、聞こえてる、聞こえてるよ!!」
  「イヤです、こんな状態」
  「え?そういうこと?」
ヤマトが頷く。
  「んじゃさ、寝袋二つ重ねてさ、」
  「そういうことじゃないんですけど」
カカシが、じっとヤマトを見る。
数秒が流れ、カカシが降参した。
  「ごめん、わかんない。どうすればいいのよ?」
と、ヤマトが、いきなりカカシの股間に触れてきた。
  「え?え?え?」
カカシが赤面して、ヤマトを見る。そのカカシの顔は、盛大に喜んでいた。
が、ヤマトは一言。
  「汚い」
  「・・・・・」
カカシがフリーズする。
  「今の先輩のはどっちかって言うと、小便ホースですよね」
  「・・・お前・・・・」
  「そんなの、僕に突っ込むんですか?」
  「・・・・・・」
  「先に風呂に入ってください」
カカシが、今度は別の意味で赤面した。ちょっと沸騰してる。
  「お前さ、俺にだってプライド、あんだけど」
  「どんな?」
  「小便ホースなんかじゃない!!」
雨が強く屋根を叩き、カカシの声も大きくなる。
  「常に臨戦態勢のラブガンだ!!」
  「だから、そんなふっる~い、かびたようなセリフ、いらないですから!!」
  「なっ!!なに、その言い方!!ふっる~いって言うな!!カビも余計だ」
  「どうでもいいです。風呂にどうぞ」
カカシは、ヤマトを思いっきりにらんだが、それだけだった。
へんなうめき声を上げると、そのまま風呂に向かうカカシだった。


風呂から上がったカカシは、ホコホコした身体をヤマトに寄せた。
  「いいだろ、これで」
  「先輩・・・確かめていいですか?」
ヤマトが上目使いでカカシを見る。
  「もちろん・・・」
カカシは嬉々として、ヤマトの前に下半身を晒した。
ヤマトは、カカシのペニスを掴むと、口に含もうとした。
  「あ、ちょっと・・・ヤマト・・」
  「?」
  「ちょっと待って」
  「先輩?」
  「オシッコしたい」
  「!!」
・・・・・・・・・・
その後の騒ぎは推して知るべし。
木遁の家は半壊して、次の日、修行の場にカカシの姿はなかった。
その騒ぎでも起きなかったあっぱれナルトがヤマトに言う。
  「隊長、カカシ先生どうしたってば?」
  「病院だ」
  「え?怪我したの?」
  「違う」
ヤマトは、なぜか眉をしかめて、吐き捨てるように言った。
  「安心しなさい。泌尿器科だから」
と。


2008.03.10.