どういうのがお好き?



抜けるように晴れた空の下、今日もナルトの修行は続く。
張り切るナルトとは対照的に、ヤマトの表情は暗い。
もとから、ヤマト一人の背にかかっている任務(修行)とはいえ、今日はあからさまに一人だ。
しかも、自分の不摂生か、年齢からか知らないが、限りなく個人的な都合で、不在である。
ヤマトが不機嫌になるのも無理はない。
この修行の話が来たとき、実は、ヤマトは嬉しかったのだ。
憧れの、カカシ先輩と一緒である、嬉しくないはずがない。
それが・・・・・
しばらく会わないうちに、カカシのおっさん化に、見事拍車がかかっていたとは・・・
黙っていれば、あの見目麗しいカカシそのものだったが、動いてしゃべると、ロマンチックなヤマトを落胆させるに十分な破壊力だった。
むっとしたまま、ナルトの修行に付き合っている。
と・・・・
  「やぁ~・・・ははは・・」
カカシが照れたように笑って、修行の場にやってきた。
これだけで、この登場の仕方だけで、ヤマトのチャクラは動揺する。
  『マジで嫌いになりそうだ・・・』
多重影分身中のナルトが一斉に、振り向く。
これだけ多くの人間が一斉に動くと、筋肉なのか空気なのか、ガサゴソ音がするから壮観だ。

  「「「「「どうしたってば、カカシ先生!!」」」」」

ずっと同じ修行をしているせいか、一人に戻る気配がない。
その全員が一斉にしゃべる・・・てか、怒鳴る。
その大音響に耐え切れず、ヤマトが呻いて耳をふさいだ。

  「「「「「泌尿器科ってなんだよ?」」」」」

うおおおお~~・・・・耳が死ぬ・・・・
まだ、かなり遠くにいるカカシも悶絶しているのが見える。

  「「「「「カカシ先生、チンポいじりすぎたか?シシシシ・・・(笑)」」」」」

ああ・・・・
大音響で、固有名詞と男性器の俗称がセットで空に轟く。
耳を両手で塞いで、冷や汗を撒き散らしながら、ヤマトは大爆笑した。
遠くでは、カカシが、やはり耳の痛みと、たった今プラスされた心の痛みで、のた打ち回っているのが見える。
ヤマトはまた吹き出した。
  『なんだかすっきりした』
穏やかな修行場の午後。
ナルトはまだしゃべっている。
ヤマトは泣きながら笑っている。
カカシはひたすら泣いている。
どこか緊迫感のない木の葉の三忍だった。




  「いや~・・・酷い目にあいましたね(笑)」
いつもの木遁の家。ナルトも、いつものごとく、隣室で爆睡中。
しっかり風呂にも入って、寝袋も完璧にセットして、ヤマトがのんびり言う。
  「はぁ?」
その隣で、不機嫌にカカシが唸った。
  「ナルトのやつ、ただでさえあんな大声だから(笑)」
  「・・・・・」
  「耳、やられちゃいましたよ(笑)」
  「おまえさ」
カカシが周りの空気に影をつけて言う。
  「なんで、いちいち(笑)なの?」
  「え?(笑)」
  「ほらっ!!!!今も!!」
  「気にしすぎですよ・・・(笑)」
  「貴様。面白がってるだけだろ」
  「どうして、そう、ひがんだものの見方するんですかね?」
カカシが、寝袋に潜り込む。
  「お前さ、あんな大音量のスピーカーで、俺の秘密言われてさ」
秘密?
  「明日から生きていけないよ・・・ホント」
  「秘密ってなんです?」
  「え?言ってたろ、ナルトがさ・・・」
  「はい・・?」
  「短小皮付き早漏ってさ」
言ってません。
どんだけ、自信ないんですか(笑)
  「俺、もう通名、コピー忍者じゃないよ、明日から」
ヤマトが笑いをこらえて聞き返す。
  「え?じゃ、明日からなんて言われるんです?」
  「泌尿器科の『キャッチコピーの忍者』だよ」
  「なるほど、短小皮付き早漏で悩む君たちへ・・・ってやつですね(笑)」
  「そう、それ・・」
とか言いながら、元気のないカカシの姿に、同情心・・・が沸くわけがなく、ただひたすらにサディスティックになるヤマトだった。



2008.03.11.