鳴門の案山子総受文章サイト
大股で歩く先生に、らしくないチョコマカ歩きでついていく俺は、ついに音を上げた。
「待てってば」
聞こえないはずはないんだが、先生の歩く速度が変わらないんで、人間の性で、もう一度声を張り上げてしまう。
「待てってばよ!!」
「待たないよ。言いたいことあんなら、歩きながら言いなさいよ」
くっっそ~~、なんだこの先生は!!
俺は、あえて立ち止まり、脚を踏ん張って、先生に怒鳴る。
「なんだよ、先生もシカマルも!」
先生は立ち止まらなかったが、「シカマル」に「?」と反応したのは、後ろ姿からもわかった。
俺はダッシュで先生の所の駆け寄り、大股歩きの先生の前に回り込んで、後ろ向きに歩きながら訴える。
「わけがわかんねえよ!!なんでアンタ、不機嫌なの?」
先生も負けてねえ。
歩く速度はそのままに、でも、障害物が俺の邪魔にならないように避けて歩いてくれている。
「お前、火影か、それでも」
「はあ?関係あんのかよ?」
あったらどうしよう、と思いながら、もう勢いで反撃する。
でも、先生は、急に無言になり、いきなり進路を変えて、脇の小路に入り込んだ。
「おいっ!!」
俺は慌てて踏みとどまり、先生を追って小路に走り込んだ。
げ。
もう、いねえ!!
俺は、小路の狭い空を仰ぐ。
ふん、俺の嗅覚、なめんなよ。
先生の匂いを追っかける俺は、微妙に「変な」気持ちになりながら、猛然と走っていた。
☆
数回来たことがある程度の、里のハズレの公園で、先生を捕獲!
俺の怒りを表現するために、そのマスクを下ろしてやった。
でも、先生は、笑っている。
「なんで、逃げるんだよ!!」
「さすが、ナルト」
「はあ?」
「俺の匂い、わかった?」
ん?なんだろ。もやっとする。
「あったりまえだろ!!そんなことより、なんで逃げんだってーの!!」
「なんでって・・・・」
「あのさあ、ちゃんと任務遂行しないと、でしょ?」
先生はマジマジと俺の顔を見ると、本当に意外そうな表情になった。
「お前さあ・・・マジでわかってない?」
「ん?何が」
「依頼内容」
「ん・・・ああ、ツンデレか?」
先生の顔が一瞬赤くなる。
それは、笑いを堪えたせいか、それとも、なんか・・・・なんだ?
「な、なんだよ。っつーか、教えて」
「え?」
「なに、ツンデレって?」
先生はちょっと笑って、そして、俺の肩を軽く抑えた。
「わかった。まあ、座ろうよ」
☆
寂れた公園のベンチに、いい年した男二人が並んで座っている。
ううむ。
これがツンデレか?
女の子の気持ちは、皆目理解できない。
「先生」
「ん?」
「今これ・・・任務遂行中なの?」
「ぶっ・・・ははは、お前ってホント、おもしろいね」
「笑うことないだろ?」
「そうだなあ、火影にはきつい依頼だもんね」
「ツンデレが?」
「・・・まあ・・・うん」
はっきりしねえな。
「婉曲に、っていうか、オタク用語の羅列だけど、」
なんのこと言ってんの?
「火影様に、部下とのセックスを依頼してんだよ」
・・・・・・・は?
「だ、だから、お前と俺で」
・・・・・・・
そのとき、湧き上がった俺の気持ちなんて、誰にも理解できないだろうな。
これからこなす依頼云々より、
今まで先生がこなしてきた依頼のあれこれが、俺の脳髄を直撃だ。
俺に声がかかるまで[シカマルが配慮していてくれたんだが]、先生は、他の連中と、この依頼をこなしてきているんだよな?!
セックス?
セックスって言ったよね?
はあ?
俺の、
あ、俺のって言っちゃった、いいや、もう、俺の先生が?!
っていうか、俺、先生の事、好きだったんだ!!
うわあああ、間抜け!!
俺、最高に、間抜け!!
くっそーーー
シカマル、余計な配慮なんかしやがって!! (<逆ギレ)
ああ、もう、もう、なんだよ、この状況!!
どうなってんだよ、この俺の気持ち!!!
「ナルト?」
今頃、こんな気持ちに気づくなんて。
ああああ・・・
でも、もう、遅い。
先生は、もう、隊長や、サクラちゃんとか、三代目の霊とか、アスマの霊とか、俺の親父の霊とか・・・って、霊が多いぞっ!!!
とにかく、やっちまったんだ・・・・・・
あああ、気が狂いそうだ。
先生の、あんな姿やこんな姿を、みんな知ってるってのか!!!!
「ナルトってば?」
「酷いよ、あんたっ!!」
「は?・・・へ?なに?」
「俺と・・・(いうものがありながら)」
「ああ・・・だから、仕方ないでしょ。怒んないでよ、ナルト」
「アンタは・・・(いろんな男や女と・・)
「俺とじゃイヤだよね。そうだよね、ごめん・・・」
「イヤじゃない!!」
先生は大混乱。
その様子が、可愛くて、俺は怒りに震えながらも、笑ってしまうという自己崩壊を体験していた・・・・・