先生と過ごす 2



大股で歩く先生に、らしくないチョコマカ歩きでついていく俺は、ついに音を上げた。
  「待てってば」
聞こえないはずはないんだが、先生の歩く速度が変わらないんで、人間の性で、もう一度声を張り上げてしまう。
  「待てってばよ!!」
  「待たないよ。言いたいことあんなら、歩きながら言いなさいよ」
くっっそ~~、なんだこの先生は!!
俺は、あえて立ち止まり、脚を踏ん張って、先生に怒鳴る。
  「なんだよ、先生もシカマルも!」
先生は立ち止まらなかったが、「シカマル」に「?」と反応したのは、後ろ姿からもわかった。
俺はダッシュで先生の所の駆け寄り、大股歩きの先生の前に回り込んで、後ろ向きに歩きながら訴える。
  「わけがわかんねえよ!!なんでアンタ、不機嫌なの?」
先生も負けてねえ。
歩く速度はそのままに、でも、障害物が俺の邪魔にならないように避けて歩いてくれている。
  「お前、火影か、それでも」
  「はあ?関係あんのかよ?」
あったらどうしよう、と思いながら、もう勢いで反撃する。
でも、先生は、急に無言になり、いきなり進路を変えて、脇の小路に入り込んだ。
  「おいっ!!」
俺は慌てて踏みとどまり、先生を追って小路に走り込んだ。

げ。
もう、いねえ!!

俺は、小路の狭い空を仰ぐ。
ふん、俺の嗅覚、なめんなよ。

先生の匂いを追っかける俺は、微妙に「変な」気持ちになりながら、猛然と走っていた。



数回来たことがある程度の、里のハズレの公園で、先生を捕獲!
俺の怒りを表現するために、そのマスクを下ろしてやった。
でも、先生は、笑っている。
  「なんで、逃げるんだよ!!」
  「さすが、ナルト」
  「はあ?」
  「俺の匂い、わかった?」
ん?なんだろ。もやっとする。
  「あったりまえだろ!!そんなことより、なんで逃げんだってーの!!」
  「なんでって・・・・」
  「あのさあ、ちゃんと任務遂行しないと、でしょ?」
先生はマジマジと俺の顔を見ると、本当に意外そうな表情になった。
  「お前さあ・・・マジでわかってない?」
  「ん?何が」
  「依頼内容」
  「ん・・・ああ、ツンデレか?」
先生の顔が一瞬赤くなる。
それは、笑いを堪えたせいか、それとも、なんか・・・・なんだ?
  「な、なんだよ。っつーか、教えて」
  「え?」
  「なに、ツンデレって?」
先生はちょっと笑って、そして、俺の肩を軽く抑えた。
  「わかった。まあ、座ろうよ」



寂れた公園のベンチに、いい年した男二人が並んで座っている。
ううむ。
これがツンデレか?
女の子の気持ちは、皆目理解できない。
  「先生」
  「ん?」
  「今これ・・・任務遂行中なの?」
  「ぶっ・・・ははは、お前ってホント、おもしろいね」
  「笑うことないだろ?」
  「そうだなあ、火影にはきつい依頼だもんね」
  「ツンデレが?」
  「・・・まあ・・・うん」
はっきりしねえな。
  「婉曲に、っていうか、オタク用語の羅列だけど、」
なんのこと言ってんの?
  「火影様に、部下とのセックスを依頼してんだよ」
・・・・・・・は?
  「だ、だから、お前と俺で」
・・・・・・・

そのとき、湧き上がった俺の気持ちなんて、誰にも理解できないだろうな。
これからこなす依頼云々より、
今まで先生がこなしてきた依頼のあれこれが、俺の脳髄を直撃だ。
俺に声がかかるまで[シカマルが配慮していてくれたんだが]、先生は、他の連中と、この依頼をこなしてきているんだよな?!
セックス?
セックスって言ったよね?
はあ?
俺の、
あ、俺のって言っちゃった、いいや、もう、俺の先生が?!
っていうか、俺、先生の事、好きだったんだ!!

うわあああ、間抜け!!
俺、最高に、間抜け!!

くっそーーー
シカマル、余計な配慮なんかしやがって!! (<逆ギレ)
ああ、もう、もう、なんだよ、この状況!!
どうなってんだよ、この俺の気持ち!!!

  「ナルト?」

今頃、こんな気持ちに気づくなんて。
ああああ・・・
でも、もう、遅い。
先生は、もう、隊長や、サクラちゃんとか、三代目の霊とか、アスマの霊とか、俺の親父の霊とか・・・って、霊が多いぞっ!!!
とにかく、やっちまったんだ・・・・・・

あああ、気が狂いそうだ。
先生の、あんな姿やこんな姿を、みんな知ってるってのか!!!!
  「ナルトってば?」
  「酷いよ、あんたっ!!」
  「は?・・・へ?なに?」
  「俺と・・・(いうものがありながら)」
  「ああ・・・だから、仕方ないでしょ。怒んないでよ、ナルト」
  「アンタは・・・(いろんな男や女と・・)
  「俺とじゃイヤだよね。そうだよね、ごめん・・・」
  「イヤじゃない!!」
先生は大混乱。
その様子が、可愛くて、俺は怒りに震えながらも、笑ってしまうという自己崩壊を体験していた・・・・・


2012/12/15


続く