SETUNA・I




任務の打ち合わせの為に、街の灯りが見える門扉に集まった。
夏至を過ぎた短い夏の夜の始まりは、いつまでも静まらず、そこここに、昼間の騒ぎを残しているようだった。
集まった僕ら4人は、でも、誰も任務の話はせず、あちこちに点きはじめた、足下に広がる里の灯りを眺めている。
暑いと、誰もが思っていただろうが、結局、だれも暑いとは言わなかった。





ナルトが、サクラに何かを話しかけ、
  「そうねえ、昨日は2人、一昨日は4人もいたかしら」
サクラが、指を頬にあてて、思いだし、思いだし、
  「最近はなんでか凄く人気なのよねぇ~」
と、先輩が言い寄られた人数を、僕に教えてくれる。
  「病室に、花がたくさん・・・」
  「・・・凄いな」
僕は、そう言うことを期待されているらしいから、一応、そう返す。
  「ホント。まあ、いい男であることは認めるけど・・・・」
サクラは、腑に落ちない、とでもいうかのように頭を振る。
  「けど・・・なんだい?」
  「でも、か弱い感じですよね?」
ブッと僕は吹き出した。
確かに、最近は、写輪眼を使う頻度も増え、倒れることが多いにせよ、
  「でも、サクラ、それは、事情を知らない人の感想だ(笑)」
  「そうなんだけど・・・若い子にも人気あるんですよ?」
ナルトやシカマルを抑えてるっていうのが不思議・・・・
と、多分そう思って、でも、近くにいるナルトに気を使って、サクラはそこは声には出さなかった。
  「いいのか?隊長?」
  「え?何がだい?」
  「カカシ先生がモテて、妬けるだろ?」
今度はナルトが、僕の顔を覗き込む。
僕が、先輩のことを好きと公言して憚らないので、それを知る7班の連中はそう言う。
もちろん、それが、尊敬や憧憬の「好き」ではないことも知っている。
あのとき、ナルトは驚いて、でも、頷いて、『好きなのは・・・いいことだってば』と言った・・・
  「いや、別に(笑)」
  「やせ我慢するなってばよ」
  「そうですよ、隊長、告白しちゃえばいいのに」
僕は笑って聞き流す。
友情で、戦いをくぐり抜けてきた君たちには、一生、わからない。



戦場での一瞬、一瞬で、僕達は誰よりも濃く交わっていることに。

その呼吸で、互いの生に互いを刻んで、

視線を理解して、いや、理解するより先に、殺気の中に飛び込んで、

アドレナリンの出過ぎで、震えてくるのを、オルガスムみたいに味わって、

終わるたびに、何度も、何度も死んだようになって・・・・

生きているって実感するのは、次の任務で互いの顔を見る時なんだ。



  「気持ち悪い」
何も言わず、笑う僕に、サイがそう言い放った。
  「サイったら!!全然、気持ち悪くなんかないですよ、隊長!!」
  「そうだってばよ、気にするな」
なに、その応援・・・・
  「あのねえ、そういうのって、『だめ押し』っていうんだよ」
だんだん会話が滑らかになってきている7班に、僕は、涙が滲むような気持ちがして、
  「さ、次の任務の話だ」
と、手にしていた図面を拡げる。
カサリと音をさせて、闇に白く広がった紙は、円陣を組んだ4人の真ん中に置かれ、僕はもう、すべて忘れている。





僕の背後で、ドーンと、小さく音がして、サクラが、
  「あ、花火」
と言った。
振り返った僕の目に、山向こうの祭りの花火らしい、小さな花が見えて、
全部忘れているはずの僕は、
そのときだけ、ちょっと、寂しい感じがした。



2009.06.26.